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亡霊(ゼーレ)と白い花  作者: ネジか。
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【亡霊に関する記述】

【亡霊に関する記述】


××××年×月×日


 今日から私は、この日記をつけていこうと思う。

 何故そのような行為に及ぶのかといえば、私の先生である母が薦めてきたからという理由が初めに来るだろう。あまりにも亡霊の存在に熱中していた私を見かねたというべきかもしれない。母も研究熱心な人なので、私が今まで亡霊について考えてきた物事を整理するべきだと話していた。

 勿論亡霊に関する考察であるため不定期に記していくが、できるだけ続けていきたいと思っている。

 ではそうだな・・・・・・何から書こうか。亡霊に関しては様々なことを考えてきたから少々選択が難しい。そうだ。私と亡霊の出会いについて記述しておこう。

 私が亡霊と初めて出会ったのは、五歳にも満たない頃だ。研究者である両親に昔から『伝説』の話を聞かされていた私は、ある日母が読んだ絵本に釘付けになった。

 そう、かの有名な『亡霊の白い花』だ。

 塔に住む亡霊がある少女に惹かれ、そして喪失を体験する、報われない恋の物語。

 私はその物語に夢中になった。それこそ、何かにとり憑かれたかのように。

 その理由は未だに解明されていない。私にも分からないのだ。何故こんなにも心惹かれるのか。

 この『亡霊と白い花』は多分世界で一番知られている『伝説』に関する逸話だと思う。皆が知っている。多くの者が知っている。ならば何故自分だけがこんなにも惹かれてしまったのか、よく分からない。それでもなお表記するとしたら、私は多分、この亡霊に恋というものをしたのだ、とだけ言えるのだろう。

 絵本に手を置き、耳を寄せて、文章が語る亡霊の全てを聴く。心地良い心臓の音が流れてくる。それは勿論自分のものであるのだが。

 心臓の音が速くなる。私はきっと、この亡霊に恋をしてしまったのだ。決して報われることのない恋。何故こんなに惹かれるのか、何故こんなに涙が溢れてくるのか。まだ幼い私には理解できない事柄だ。

 一つだけ言えるのは、私が亡霊について調べ考えるのは、亡霊に会う、ただそれだけの理由が根底にあるためである。会って何をするわけでもない。ただ一目、亡霊の姿を見ることができたら満足するのだろう。私は貴方が好きだ。貴方が私の生きる意味なのだ。


 一度でいい、貴方に会いたい




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