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プロローグ

 久々に書いてみました。



 ――マンホールの下って意世界だったんだぜ?


 普段使わない「だぜ」なんて語尾を使ってしまうくらいには混乱していた。

 周囲には人、人、人。しかし統一のとれていないただの人ゴミというわけじゃなく、前方に向かって真っすぐに五つくらいの列が続いている。先ほど、マンホールから落ちた直後には地面に尻もちをついていて、混乱して何をしていいかわからないのでとりあえず空を見上げてぼんやりしていたら、走り寄ってきた中年男性に列に並ばされたのだった。

 というか、ここはどこだろう?

 なんて疑問は正直飽きた。だって考えたってわからないものは分からない。分かるのは、マンホールの下には異世界があったということだけ。そんなことを考えていると自分の正気の方を疑いたくなってくるよ。

 まぁ、なんだ。投げやりな気分で周囲の状況を見渡してみることにする。

 やはり目につくのは人の列だろう。まっすぐ進む五つの列。そしてその中には何の一貫性もないわけじゃなく、みんな僕と同じくらいの年齢の少年少女だった。そしてそのだいたいが緊張の面持ちで少しずつ進んでいく列の先を見ている。そうでない者も友人たちと話して少々浮き足立っているように見えた。

 そしてこれと同じような光景を僕は知っている。


 ――テスト前の受験生みたいだな。


 そう、つい一ヵ月前くらいに受けた高校受験の会場がこんな雰囲気に包まれていた。

 それに周囲にある建物。

 どうもここは中庭らしく三方向を建物に囲まれていて、残った方も森のように見える。そして三方を囲む建物は美しい西洋風の装飾が施されてやや豪奢ではあるけれども、ガラス窓の配置や単調で画一的な部屋の並びはよく知る校舎のものだった。

 そして表情を固くして何やら順番を待っている少年少女たち……。

 なんだかヒジョーにめんどくさい場所にいる気がしてきたよ。

 それにしても髪の色が緑やらオレンジやら……カラフルだなー。



 そうこうしている間に長かった列も短くなり、最後尾の僕まで順番が回ってきた。

 どうも、列の先で何らかの儀礼を行った人は吹き抜けの奥に見える体育館のような建物に入っていくらしい。

 そして、列の先にはパイプイスがありそこでスーツを着た大人たちが真剣な顔をして座っていた。

 「君が最後だ。頑張ってきなさい」

 そう言いながらスーツを着た男性が僕に一枚の紙を差し出した。手にとって見てみる。


 『身体調査表』


 きっと僕は悩ましい表情をしていると思う。





 ★☆★☆★☆





 祖父が死んだ。

 大げさな書き出しだけども何か事故にあったわけでも病気だったわけでもない。ただの老衰だ。

 だけど、流石にショックだったことは事実だ。

 祖父は僕にとっては事実上の父であり、母であり、人生にとって大事なものは全て祖父から学んだからだ。

 というのも幼いころに両親を事故で亡くし、親戚もなく天涯孤独となった僕を引き取っておしめをとり替えてくれたのが何を隠そう祖父であり、両親の記憶がない僕にとっては祖父だけが「親」というやつだった。

 どんな人か、それを一言で表すのなら「荒唐無稽」がピッタリだ。まぁそれは現代の感覚に照らし合わせてのことで、きっと江戸時代くらいにさかのぼれば祖父の人間性もきちっと認められると思うけど。

 正義を重んじる人であり、行動に躊躇はなく、義に厚かった。ただし直情的で感情のままに行動するので、その辺がどうも破天荒に見えていたらしい。

 そして何より、剣に生きる人だった。古来より脈々と受け継がれてきた殺人剣『乱絶御影流』の正当継承者。それが祖父だった。

 ただ、その厳しい脈々と受け継がれる修行方法と祖父の性格ゆえに受け継ごうとする人は亡き両親を含め現代では皆無で、道場を開いてもなかなか人は集まらないし、来たとしてもすぐにやめていってしまう。継承する者がなければ流派がお取りつぶしになってしまうくらい逼迫した状況だった。これには祖父も相当焦っていたらしい。

 そういう事情もあって祖父は僕を必要以上に可愛がり、そして僕自身はいつも祖父にくっついて自然と剣の道にのめり込んでいくことになる。

 どうも話を聞くところによると、二歳のころにはスポーツチャンバラのスポンジ刀を振り回して意気揚々と遊んでいたらしい。

 初めは体力づくりと礼節からはじまって、基礎的な剣の振り方、歩法、技へと発展していく。そして『乱絶御影流』がここで終わらないのは、剣以外も学ぶというところだった。倉庫にはいろいろなものが置いてあった。

 槍、薙刀、手裏剣、クナイ、トンファー、鎖、鎖鎌、(サイ)などなど。

 剣以外のものといわれて一番得意だったのは釵かな。

 これは三又に分かれている十手のような武器で、手元を合わせて50cm程度の長さ、そして三又に別れた真ん中の長い部分は先が鋭い棘のごとくとがっている。主な用途は刺突と釵全体を使っての受け、そして柄頭を使っての打突、そして投擲だ。

 どちらかというと防御に優れているように思う。実際、熟練の相手(祖父)にこれを使われるとなかなか攻撃を通すことができない。

 そして早いのか遅いのかは自分ではわからないけど着々と『乱絶御影流』を収めていき、祖父の甘甘かつ子煩悩な審査で十三歳の時に免許皆伝を貰った。その時は賞状を勲章のように掲げて飛び回ったな。

 免許皆伝を貰った僕だったけれども、剣の道に終わりはない。そもそも祖父の方がずっと強かったし。中学には通っていたけれども、部活にも入らず授業が終わるとすぐに家に帰って祖父と修行の日々。

 というわけではなく、確かに剣の修行もしていたことも事実だけど、アニメ、マンガ、ゲーム、大好きでした。格好いい主人公を想像していた人、ごめんなさい。

それは受験を控えても変わることはなかった。

 そんな生活をしていた僕だったけれども勉強が特別苦手なわけでもなかったし、最寄りの高校には十分合格できる成績を維持していた。


 そして高校受験を受けて最寄りの高校に合格し、入学式も間近にせまったある日、唐突に祖父が亡くなった。前の日まで道場で飛び回っていた祖父がなかなか起きてこないので部屋まで起こしに行ってみると、静かに息を引き取っていた。

 確かに悲しかったけど、取り乱すことはなかった。いつかこんな日が来るんだと分かっていたからだと思う。

 僕は祖父の亡骸に静かに頭を下げた。祖父の机の引き出しには遺書が書き残してあり、その遺言通りに慎ましやかな葬式を行った。



 そして遺骨を先祖代々の墓に納めた帰り道、ボーっとしていた僕は蓋のあいたマンホールに落ちたのだった。





 ★☆★☆★☆





 『身体調査表』の測定項目を見ていると、変なことに気がついた。

 身長、体重、体脂肪率、視力、聴力、握力。このへんはいい。だけど……、魔力値、魔力純度、魔力操作速度、魔力置換属性、術式速度。とってもファンタジーだ。いったい何のことだろうか?いや、予想はつくけど……。

 身長、体重、体脂肪率とごくごく――僕の価値観で――一般的な身体測定が終わり、次は順番的に行けば魔力値と魔力置換属性の複合測定らしいんだけど、いったい何をすればいいのやら。

 というか、なんで普通に身体測定受けちゃってるんだろう?でもここで騒ぎ出すのもなんか変だし……。いや、変じゃないのか?まぁ、どうでもいいや。

 とにかく前の人を見て何をしているのか確かめてみる。

 列の前ではパンツ一丁になった男の子が水晶に手をかざしている。いや、全員パンツ一丁だから特徴を捉えたものではないけど。

 水晶は綺麗な球形で、男の子が手をかざした瞬間薄く赤色に発光する。それを見た医療関係者であろう白衣の男性は男の子の身体調査表に何事かを書き込んでいく。

 つまり、列の前まで行ったら手をかざせばいいということだろうか?

 次は僕の前の爽やかな顔のイケメン男子が水晶に手をかざした。今度は先ほどの男の子よりもやや水晶が強く輝き、緑色と黄色が交互にあらわれた。そして白衣の男性に書き込まれた文字を見てガッツポーズをした。彼にとってはうれしいことだったらしい。

 さて、次は僕か。

 白衣の男性に身体調査表を渡し、前の人たちと同じように水晶に手をかざした。すると身体と水晶がまるで一体になったような感覚に襲われ、同時に身体の奥から今まで感じだことのない、例えるとするなら生命の源泉のような、そんな確かな力を感じた。

 そして水晶が発光する。光はやや弱く、色はただの白だった。

 それを見た白衣の男性は、むぅ、とうなった。何か駄目だったんだろうか。

 そして新たに書き込まれた身体調査表を返してもらう。「魔力値C」、「魔力置換属性、無し」と書かれている。

 百歩譲っても優秀な結果ではないだろう。



 そして全ての測定が終了し、服を着た。

 しばらくすると、別の場所で測定していたのであろう女子たちも体育館に入ってきた。

 水晶に手をかざしたときに感じた不思議な感覚はその後の測定でも感じ、今は身体の奥底から自在に引き出して身体に纏うことができるようになっていた。そうすると身体に力が満ちてくる感覚がある。

 いや、実際剣を今まで磨いてきた僕には分かる。確実に身体能力が向上している。

 これはいったいなんだろうか?身体測定表の言葉を借りれば、魔力、ということになるんだろうけど。

 そんな力が実際に現実にあるんだろうか。実際に使えている以上、信じる以外にはないんだけどさ。

 しばらくそうして身体の中の魔力を操っていると、拡声器から声がした。


 <はぁ〜い♪それではキャストを配るので集まってくださ〜い♪>


 陽気な女性の声がした。

 舞台の上には二十台中ごろの女性がマイクを持って飛び跳ねていた。髪の色はやや赤いピンクで身長は普通くらい。

 それにしても、キャスト?また知らない固有名詞が……、どうすればいいんだ。

 しかしそんな僕の葛藤を余所に、周囲の人は女性の促す通りに舞台の方に設置された大きな机の方に歩いていく。どうやらそこでスーツを着た大人たちから何か道具を貰っているみたいだけど……。

 まぁ、ここはみんなのする通りにしておくのがいいか、なんて日本人的なことを考えた。



 さて、僕の順番となった。

 机の上には棒状の機械やら、拳銃、小銃のようなもの、杖のような謎の物体などなど、様々な用途不明の代物が置かれている。

 「さて、君はどんなキャストを使うんだい?」

 そんな事を聞かれたって分からない。だいたい「キャスト」って何だ。銃のようなものから棒状のものまで一緒くたに「キャスト」というからには戦うための武器?なんだろうか。

 「……?」

 首を傾げるしかない。

 「ははは、聞き方が悪かったかな? 君はなにが得意だい?」

 あぁ、それなら答えられる。

 「剣には少し自信があります」

 「剣か。じゃあフロントだね。はい、頑張って」

 そして僕は謎の棒状の機械を渡されるのだった。







 棒状の機械を貰った後、校舎裏の森の中の前に案内された。僕は何が何やら分からないけど周囲の人たちの顔は真剣そのもの、というか殺気立っている。まるで試合が始まる前の空気だ。

 いや、実際そうだと思う。先ほど配られたものはおそらく武器だ。そして武器を持って殺気立つ少年少女。非常にまずい気が……。

 そして先ほど操れるようになった謎の力、魔力を周囲の人たちから感じる。実際は水晶に触れた時から一人一人に常に感じてはいたけど、今はそれがだんだんと高まって量も増え、攻撃的になっている。

 <ではこれから、実技試験を始めま〜す♪>

 さっき舞台の上で舞っていた女の人の声が聞こえてきた。

 <受験生の皆さんにはこれから森の中に入ってもらいます。そして今から五分後、開始の合図とともに戦ってもらって実力を見させてもらいます。一人で戦っても、誰かと手を組んでも結構です。時間内に今まで磨いてきた魔法の腕を存分に発揮してください。あ、キャストはスタンモードオンリーなので、ケガの心配はしなくていいよ♪ 戦闘結果はキャストに記録されるようになっていますが、こちらでもサーチ魔法によって映像を確認します。この試験はその両方で判断するのでそのつもりで。では、森の中に入ってください>

 放送が途切れると、周りの人は明らかに人間が出せる以上の速度で森の中に駆け込んでいく。

 ていうか、魔法、今放送で魔法って言った。そりゃあ、魔力があるなら魔法もあるだろうけど……。


 それにしても……。


 「はぁ……」


 また受験かー。

 僕もトボトボと森の中に入るのだった。

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