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美しい家
もうダメだ。
これ以上、こんな息苦しい場所にいられない。今日も新入りが続々と入ってきたものの、
誰もがお互いに好き勝手な方向を向いて、適当なところで固まって、後はもう、どこにも行こうとしやがらない。
もう少し体を伸ばせば、食事にはありつけるのだが、その上にでっぷり肥えた色グロのおっさんが横たわっているので、どうにも手が出せない。
「オッサン、早くそこどけよ」
と、声をかけてみる。こっちはもう、何週間も空腹が続いて、今にも死にそうなんだ。
「オレだって、どけるもんならどきたいよ。誰ひとり、ピクリとも動けやしねえだろが」
オッサンは激高して言った。
背後からものすごい叫び声がした。
無理矢理の脱出を試みた奴の足が3本ももげ、その上体がべったりと床にへばりついたようだ。あちこちで死を覚悟した嘆息が漏れた。
皆、夢の家だと信じてやってきた奴らばかりなのに…
ゴキブリだって生きているんだ!!