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「交差点」
人波あるれるスクランブル交差点で、やけにそいつだけがはっきりとオレの目に飛び込んできた。 オレの対角線上で、真っ直ぐにこちらを見つめている凛とした目の少女。
後ろを振り返ってみるが、彼女が見つめる対象物になりそうなものはない。やはりオレを睨んでいるとしか思えない。
昔から馴染みのある、少し寂しげな童謡のメロディーが流れ出すと、ゲートの開いた馬のようにオレたちは一斉に歩きだす。
対面の少女もゆっくり歩を進める。相変わらずオレを睨んでいやがる。
大人として、そういう態度はいけないと注意してやろうと思い、こちらも負けじと睨み返し、歩を進めて、オレたちはちょうど歩道のど真ん中ですれ違うことになった。
「おい、君ねえ…」口を開いた瞬間、目の前の景色が180度入れ替わった。
目の前のデパートの、ショーウィンドウに少女の姿だけが映っていた。