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第一章『天辻 風子』

遅れてすみません(@_@;)

書く事や、今後の展開を考えるのが、まだまだダメダメです。

なんとか改善していきたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。


「く…っそ。溝に入ったやつが取れねぇ…」


ひたすら靴を壁に擦る。

近くに誰も居なくて良かった。見られたら不審者として通報されてしまう。

まあ、桜槻高の制服着てる時点で不審者よりもタチ悪いから、いつ通報されてもいいよう逃げる対応はできてるが。

ともかく、このまま異臭を放ちながら帰るのは気が引ける。

このまま帰ったら道中で近所のガキ共に「うわ、あいつだよいつもウンコ臭いの……」とかひそひそと言われて石を投げられる、という惨めな思いをするのは俺の経験上わかりきっている事だ。

だからこの先にある普段人気のあまり無い公園の水道で一旦汚れを洗い落とそうと、俺は壁から靴を離し、再び歩く。

だが、その足をすぐ止めた。


「……、うん?」


百メートルぐらい先か。

黒塗りのワンボックスカーが猛スピードで走ってきた。

窓にスモークが張ってあり、車内はまったく見えない。

別に不思議な車じゃない。

黒塗りのワンボックスカーなんて、高速道路でも見てれば走っているもんだ。

俺が言いたいのは、この狭い一本道は車が通ると歩行者が通れないので、車両は通行禁止されてるんだ。

なのに、車がブレーキをかける様子はなく、減速する様子もない。

つまり、だ。


ヤバくね?



「ひ――、轢き殺される!?」


あれだけスピードが出てる車に真っ正面からぶつかれば、冥界入りは絶対だ。

どうやらいつも以上に不幸スキルが発動してしまったらしい。

逃げろ、と意識した時には車との距離はあと二十メートルもなかった。

逃げるのは――無理だ。

さっきいつでも逃げる対応はできてると言ったな?あれは嘘だ。

何故なら、曲がり角、もしくは盾になってくれそうな電柱も遥か後ろだった。

以前、将来は孤独死かな……と鬱になりながら自分の死ぬ時を考えた事もあったが、あくまでそれは未来の話。

でもたった今、その死ぬ時が来るとは思っていなかった。


俺は、今、死ぬんだ。



「―――ッ!」


そう直感した時、ふと頭に過るのは走馬灯……ではなく、昨夜テレビで見た、『バイクに乗った男、トラックに衝突され死亡』という深夜ニュースのテロップ。

俺も――そうなるのか?

己の不幸体質のせいで俺は死ぬのか。

それとも、ここで車に轢かれる事は不幸云々関係なく、これはただの運命なのか。

どちらにせよ言いたい事は―――1つ。


「――、ふざっけんじゃねぇ!ナメやがってぇえええええええええッ!!」


絶叫する。

絶叫してもどうならないとわかっている。

それでも、喉から血が出るぐらい叫ぶ。

死の恐怖と理不尽に対する怒りで頭が割れるように痛くて、クラクラする。


「ちくしょうッ!!毎回、毎回、馬鹿にしやがって!!」


不幸、運命、もしくはその他。テメェらは俺に死ねって言いたいのか。


ふざけんなよ。


なんで、テメェらみたいなクソッたれ共の言いなりで俺が死ななきゃならない!

俺はまだ生きたいんだよ!

ふざけてるかもしれないけど、寮に帰ってまだクリアしてない『夫婦イド2』をやったり、『インゲンビスケット』食ったり、将来は無理かもしれないけど、女の子と仲良くなって喜ばしてゲフフな事したり、自分の人生をエンジョイしたいんだ。


幸せになりたいんだ!


なのに!なのに、なのに、なのに!!なんなんだよ、これ!!!


「くっ、ァァあああああああああッ!!」


目を瞑り、ただ叫びながら突然の死を待ち受ける。

死ぬ時は痛いのだろうか、痛いと感じる前に黄泉送りか。

最後にそう考えた時には、車のエンジン音がとてもよく鮮明に聞こえた。



そして、不意にシュィン!という大気を裂くような音がしたかと思うと、真横に何'か'が金属を擦ってるようなものすごい音を発しながら猛スピードで通過した。

最後に、ガシャン!という大きな衝突音。



「……、え!?」


瞼を開く。

黒塗りのワンボックスが……いない……!?

自分の体を見る。

多分、死んで……いない……!?


「生き、てる……」


痛みも衝撃もないし、三途の川も天使も閻魔様も現れやしない。ちょっとだけ、天使や閻魔様が美少女だったら喜んで死んで三途の川でレッツパーリィ!……とか、心の奥底でニヤニヤしながら思ったりしたが……

いや、それより車はどこに行ったんだ?

あと、真横を通過したのは一体……?


「……、」


なんとなく、体ごと後ろを振り返った。


そこには、


真っ二つに縦に綺麗に切断されてる、

黒い車体があった。



「ええええぇぇぇぇぇ!?」


半分に切断された二つの車体は遥か後ろの電柱にぶつかって止まっており、電柱は折れ曲がり、車の前面はグシャグシャにひしゃげてしまっている。

車内は丸見えで――エアバッグが作動していて顔は良く見えないが運転手や乗客が乗っているのが見えた。

コンクリの壁が車の摩擦で黒く焦げ、切断面からこぼれた車の部品がバラバラと道に落ちている。

不幸中の幸いか、車は炎上はしていない。


「なんだ、これ……」


俺が逝かないで、車が逝ってしまわれた。

もしかして……あれ、俺がやったとか?

……、いやいやいや、ありえんありえん!!

あんな車を切断できる神業が俺にあるなら、俺はさっさと『流浪の悠司』とかほざいて幕末剣客ロマンな旅をする。

いや、そんな事はどうでもいい!


「ともかく警察か救急車……いや、無理か」


……通報したいが、生憎、俺は携帯電話を持っていない人なんだ。あれ、値段が高いから。それに、メールする相手も俺にはいないしね………………、それも今はどうでもいいか……。


「……、一体――」


――……どうすれりゃいい?

それがわからず、目の前の惨状を眺めてると、後ろから足音が近づいてきた。

俺の叫び声や車の衝突音とかのせいで野次馬が来たのかもしれない。

このご時世、ケータイを持ってない奴は俺ぐらいだから、その野次馬が持っているケータイを借りよう。


(よかった。これで、救急車を呼べる――)


期待に満ち溢れながら振り返るとそこには、



「――、民間人を巻き込もうとするとは……『正しき狂信者達[ライト・ファナティック]』の相手は本当にめんどいですね……」



カツッと。

靴の音を鳴らして現れた。

そこにいた人は――どうも野次馬には見えず、

なにか、別の目的でこの場に来たようにも見えた。


現れたのは一人の少女。


年は……俺と同じくらいか。

どこか鉄の冷たさを思わせる風貌。

そして、黒。

白い肌とは対照的な漆黒の長い、髪。

少女は俺を見据えながら言う。

まるで剣で突き刺そうと言わんばかりに睨みながら。


「漏らしてませんか、そこの顔芸」


と。

黒い少女は言った。

それに俺は固唾を飲みながらふと、少女の言葉で想像する。

……、さっき死に際の時の眉間にシワを寄せて目を思い切り瞑ってビビりまくってる自分の顔を。


我ながら、とても笑える顔だった。


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