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ある魔女のための鎮魂歌【第1部】  作者: ワルツ
第3章:少女セイラ
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第3章:第14話

普段騒がしいはずの図書館はこれ以上ないくらいの静けさだった。ゼオンにオズにルルカというメンバーだったら当然といえば当然だが、この様子を例えばキラなどが見ればきっと苦笑するだろう。

けれど三人とも今ここが異常なほど静かなことに関してそこまで気にしてはいなかった。特にゼオンなんかは騒がしくなくて落ち着くくらいにしか思っていなかった。

ゼオンは相変わらず紅茶を飲みながら窓に映った映像を眺めていた。

ちょうどキラがシャドウを捕まえたところだった。

するとルルカが画面に映ったセイラの様子を見ながら言った。


「ほんと…なんなのよあの子…。」


ルルカがそう言うのも無理はない。媒体無しで魔法を使い、時間操作魔法なんて見たことのない魔法を使う。

だが、ゼオンが一番気になることは別にあった。


「…あのセイラって奴、小悪魔共の動きが読めてないか?」


それを聞いたルルカがこちらを向く。

オズが言ったことに嘘が無ければ、シャドウはキラのとこに行くように指示されていたはずだ。

だがシャドウがキラに会ってからすぐにセイラが現れた。まるでシャドウがキラの所に行くことを知っていて、シャドウがキラの所に来るのを待っていたいたかのように。

ルルカが言う。


「それって、他人の考えが読めるってこと?」


「いや、多分違うな。馬鹿女が自分の頭を踏みつけていくことはあいつも予想していなかったみたいだし。」


なぜキラの所にシャドウが行くことを知っていたのか。いくつかの可能性は浮かんでもまだ確定はできなかった。

謎の部分が多すぎる。それだけが確かだった。

ゼオンはオズを見た。こっちも謎しかない奴だ。先ほどから妙に何も言わずに窓に映し出された映像を見ていた。


「時間を操る魔法…か。」


見覚えのある物でも見るような言い方だった。

その時、突然急に後ろから扉を蹴り飛ばす音が聞こえた。

突然のことだったので三人ともすぐに後ろを振り向いた。

図書館の入り口のドアが開き、そこから暖かい光が射し込んでいた。そして同時にこの雰囲気とは不釣り合いどころか正反対と思うほどのけたたましい声が響き渡った。


「ゼーオーン!やっぱりここにいたぁ!

 会いたかったよぉー!」


甲高い声と共にティーナが図書館に飛び込んできた。

全く一体どうしてここがわかったのだろう。ゼオンはため息をついた。

そんなゼオンの様子なんてお構いなしにティーナはゼオンのところまで走ってきてゼオンに抱きつこうとした。もちろんゼオンはすぐにそれをよけた。

するとティーナは勢い余ってテーブルの足につまづいて大きな音をたてて転んでしまった。

それはそれは見事な転びっぷりだった。


「それで、どうしてここがわかったんだ。」


ゼオンが呆れた様子で聞いた。

するとティーナは転んだ状態のまま顔だけ上げてゼオンに言った。


「ああ、キラの友達の水色のクルクルちゃんに教えてもらったの。」


「水色のクルクル……?

 …ああ、リーゼのことか。けどなんであいつ俺たちの居場所知ってたんだ…?」


「さあ?それはあたしはわかんないよ。」


少し不思議だったがキラが今日のことをリーゼに話してその時場所も言ったのかもしれないとゼオンは思った。

ティーナは転んだ状態から立ち上がると辺りを見回した。

今ティーナの他にいるのはゼオンとルルカとオズだけだ。

ティーナは少し不思議そうに言った。


「ところで今日は随時静かだね。

 キラとかうるさい小悪魔どもはどこ行ったの?」


ティーナはそう言ってゼオンの座っている椅子の隣の椅子に座った。

話を説明するのが少し面倒だなとゼオンは少し思った。

そんなことを考えているとティーナが窓に映っている映像の方を向いた。

ティーナは映っているキラを見た後、セイラの方へと視線を移した。

その途端、ティーナの表情が凍りついた。


「なんで…セイラがこんなとこにいるの…?」


突然ティーナは立ち上がって映像を指差した。

ゼオンは耳を疑った。ルルカとオズも信じらんないというような表情でティーナを凝視している。

どうしてティーナがセイラのことを知っているのだろうか。

ルルカがおそるおそるティーナに尋ねた。


「え…その…貴女、あのセイラって子と面識あるの?」


ティーナはハッとしたようにルルカを見た。その後、すぐにいつもの笑顔に戻って尋ねた。


「ねぇ、この映像の場所って村の近くの森だよね?」


「…ちょっと、話聞いてる?

 セイラと面識あるの?」


「うんあるよー、知り合い知り合い。ってか友達?

 久しぶりだなぁ!あたしちょっとセイラに会ってくるね!」


「あ、ちょっと待…」


「じゃ、行ってくるねー!」


ティーナはゼオンたちの驚きなんてこれっぽっちも気がついていないようで、あっという間に図書館から飛び出していってしまった。

三人はしばらく唖然としたまま入り口の方を見つめているしかなかった。

一体どうしてティーナがセイラのことを知っているのだろう。

ティーナと会ってからずっと付きまとわれてここまで旅をしてきたがセイラのような少女に会ったことなんてない。

そうなると会ったのはゼオンに会う前ということになる。

ゼオンはティーナと初めて会った時のことを思い出してみた。

たしかどこかの街の宿屋か何かの建物の裏を歩いてきた時、ティーナがやってきて今は何年何月何日だか不安そうな顔で聞いてきたのだ。

その時、ゼオンがティーナに素性を尋ねるとティーナはこう言ったのだ。

自分は300年前の世界からタイムスリップしてきたと……


「まさか……」


ゼオンの中である一つの可能性が浮かんできた。

確証はないが有り得ない話ではないはずだ。

セイラはたしか時間を操る魔法を使っていた。

どうしてそんな魔法が使えるかはわからないが、ティーナとセイラの繋がりのわけは想像がついた。ゼオンは急に椅子から立ち上がった。

ルルカがゼオンの方を見た。


「どうしたのよ?」


ゼオンはルルカの言葉を無視してあっという間に図書館から飛び出していってしまった。

ルルカはまた唖然として何も言わなかった。

すると今までゼオンやティーナの行動を傍観していたオズが立ち上がってルルカに聞いた。


「俺はあいつら追ってみよう思うんやけどお前はどうする?」


ルルカは頭に手を立てて心底疲れた様子でため息をついた。


「…行くに決まってるでしょ。」


そう言ってルルカとオズも図書館から出ていき、ティーナを追い始めた。

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