第三部
翌朝、小太郎が目を覚ますと、ターイとヒラメがすでに朝食を用意して待っていた。
湯気の立つ皿がいくつも並び、香りだけで腹が鳴りそうだった。二人に給仕されながら、小太郎は、生まれて初めてと言ってよいほど贅沢な朝食を味わった。
食後、少し休んでいるとカーメンが訪ねてきた。
「小太郎さん、今日は竜宮城をご案内します。どうぞ、私についてきてください」
小太郎はターイとヒラメを部屋に残し、カーメンの後に従った。
-竜宮城の世界-
歩きながら、カーメンが言った。
「昨日は驚かれたかもしれませんが、ここでは皆、衣を身につけずに暮らしています。私たちにとっては自然なことなのです」
その言葉どおり、竜宮城の内部は、小太郎がこれまで見たどんな世界とも違っていた。
• 光を放つ壁
• 空中に浮かぶ道具
• どこからともなく流れる音楽
• 色を変えながら揺れ、踊るように見える植物
• その枝を跳ね回る、見たこともない小さな動物たち
• 見ている間に地面から生え、立派な建物へと成長するキノコのようなもの
小太郎が驚きのあまり立ち止まるたび、カーメンは優しく説明を加えた。
そして、昨日から小太郎が抱えていた疑問に、少しずつ答え始めた。
• 乙姫やカーメンたちは子どもではなく、れっきとした大人であること
• 彼らが小柄なのは、種族としての違いであること
• 彼らは人間よりはるかに進んだ文明を持ち、遠い昔に人間を創造した存在であること
• かつては人間と共に暮らしていたが、今は別の場所で静かに見守っていること
• 小太郎の優しさに心を動かされ、竜宮城へ招いたこと
• 彼らは特別な手術によって千年の寿命を持ち、歳をとらないが、人間は百年ほどしか生きられず老化も早いこと
小太郎には初めて聞く話ばかりだったが、カーメンはゆっくり、わかりやすく語った。
-世界の仕組み-
さらにカーメンは、小太郎が想像したこともない話を続けた。
• 小太郎たちが暮らす地面は平らではなく、大きな球の形をしていること
• お日様が村の上を動いているのではなく、地面のほうが回っていること
• 夜空に見える星々は、遠く離れた光の世界であること
カーメンは砂を使ったり、光る球を浮かべたりしながら丁寧に説明した。
小太郎は最初こそ呆然としていたが、次第に点と点がつながるように理解が深まっていった。
-竜宮城での年月-
小太郎は村へ帰ることを忘れ、竜宮城での未知の生活を楽しんだ。
• 思い浮かべるだけで音楽が生まれる部屋
• 扉を開けると別の世界が広がる不思議な廊下
• 球を使った遊びや、空を飛ぶ体験
• ターイやヒラメのような召使が生まれてくる棺のような箱
• 海の底を泳ぎ、雪の上を滑り、星々の間を旅するような感覚
• そして、多くの美しい女性たちとの親しい交流
竜宮城の世界は、どこまでも広く、どこまでも不思議だった。
ここが海の底なのか、星々の間なのか、小太郎にはもう分からなかった。
ときには、途方もなく長い夢の中にいるような感覚に囚われることさえあった。
気がつけば、季節の移ろいも忘れ、
小太郎が村を離れてから、五十年以上が過ぎていた。




