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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

代償の肉塊

作者:わん
最終エピソード掲載日:2025/12/25
 その施設では、激痛が金貨に換金される。

 地下二階の湿った石畳の上、魔術回路の青白い光が、少年の真皮をなぞるように励起する。
 接続の瞬間。アルトの視界は赤く濁り、自身のものとは違う「他人の死」が、神経束を逆流して脳幹へと叩きつけられた。

 ――骨膜が内側から爆ぜる振動。
 ――肺胞が一つずつ、静かに潰れていく窒息感。
 ――内臓が融解し、腹腔を熱い粘液が満たしていく物理的な確信。

「……あ、……ぁ……」

 叫びは声帯の痙攣に飲み込まれ、ただ鉄錆の味がする唾液が溢れる。
 結界の向こう側では、老いた富豪が安らかな息を吹き返し、若々しい肌を取り戻していく。
 アルトが座るその椅子は、富裕層の「ゴミ捨て場」だった。

 ボロボロになった肉体を引きずり、彼は唯一の光が待つ家へと帰る。
 そこには、兄の身体から漂う死臭を、何も言わずに洗い流す妹・ミリーがいた。

「もうすぐだ、ミリー。これで、お前は学校へ行ける」

 震える指で握りしめた金貨。
 それが自分の細胞を磨り潰して抽出された「肉の代価」であることを、彼は決して口にしない。

 だが、蓄積していく損傷は、確実に彼の生存論理を破壊していく。
 最後に提示されたのは、あまりにも高額で、あまりにも致死的な最終契約。

 妹の無傷な未来を買うために。
 少年は、自らの肉体を最後の破滅へと投げ出す。

 ――その先に、どれほど凄惨な欺瞞が待ち受けているかも知らずに。
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