パンドラフィールドと、理の追跡者
氷のホールの中央、光の錬金術師の子孫****スリムと黒の錬金術師****ビアスの論理が激しく衝突していた。しかし、長老の予言通り、その差は圧倒的**だった。
白の理の限界
スリムの**『白の理』が展開する氷の結界は、ビアスの黒い魔力に触れるたびに瞬時に砕け散り**、その力を吸収されていった**。
「無駄だ、スリムよ。お前の**『白』は未完成の論理に過ぎない。私の『黒の理**』は全てを統合する。お前の消滅の力すら、私の完全を証明するための****要素となる**!」
ビアスの圧倒的な魔力がスリムを押し潰し、スリムは膝から崩れ落ちた。その顔は絶望に染まっていた**。
「やはり…私の力では**……ユミルを止められないのか……」
ビアスは勝利を確信し、とどめを刺すために右腕を振り上げた。
情熱と愛の介入
その瞬間、ボロボロのグリムとマスターが氷の破片を蹴散らして二人の間に躍り出た**。
「もう一人の賢者の子孫を好きにさせるかよ**!」グリムは左肩の傷を無視し、唐紅の炎を僅かながら拳に集めた。
「悪いけど光の賢者となれば私の足りない力でも守らせて貰う!」マスターは狂気の愛の魔力でグリムを庇うように立ち、ビアスに強烈な睨みを利かせた。
ビアスはその場で動きを止め**、冷たい笑みを浮かべた**。
「情熱と愛……最も非効率的で無意味な感情の塊が、私の前に立つか。よかろう。全てが等しく無意味に散る****様を見せてやろう」
パンドラフィールドの展開
ビアスが両手を広げた瞬間、全身から強大な闇のオーラが吹き出し、ホール全体が黒い球体に包まれた。
「黒の理、『パンドラ・フィールド(万物の無意味**)』。この領域では**、全ての物質、概念、そして理**(ことわり)が等しく消滅する!」
パンドラ・フィールドが展開すると、周囲の氷の構造物が音もなく塵と化して消滅していく。グリムの情熱の炎も**、マスターの愛の魔力も**、その黒い霧に飲み込まれて急速にエネルギーを失っていった**。
スリムは力を振り絞り**、再び立ち上がった**。
「やらせない**!『白の理**』、『アンチパンドラ・フィールド(対消滅の純粋)』**!」
スリムも同名のフィールドを展開するが、ビアスの圧倒的な魔力差により、スリムの作る****白い結界はビアスの黒い領域に一瞬で触れ、消滅していく。
刹那の転移と追跡の論理
「グリム!これはダメだ!全てが消える!」マスターが叫び、懐から転移の結晶を取り出した。
「この結晶で瞬間的に遠くへ逃げる**!スリムくんを連れて**!」
グリムはボロボロのスリムを抱え上げ、マスターが転移の呪文を唱える。ホール全体が黒い霧に飲み込まれる****寸前、三人の姿は光と共に****消えた**。
転移の先は、ニヴルの王都から遥かに離れた****雪山の奥。グリムは安堵の息を漏らした。
しかし、ビアスは微動だにしなかった。彼は転移の際に僅かに漏れた****魔力の痕跡を、冷徹な目で追っていた**。
「フム……転移の理を使うか。だが、その瞬間に生じる僅かなノイズすら、私の『黒の理』の演算は見逃さない。逃げ場はないぞ、愚者たちよ」
ビアスの全身が再び黒い霧に包まれ、凄まじい速さでグリムたちが転移した雪山の方向へと追跡を始めた**。
愛の壁、白の理の継承者
極寒の雪山に転移したグリム、マスター、そして光の錬金術師の子孫****スリム。しかし、黒の魔力を纏った****ビアスの追跡はすぐそこまで迫っていた。
グリムが傷ついたスリムを抱えて雪の中を走る中、スリムは顔を上げた**。
「もうすぐ追いつかれる。お願いだ、僕を置いて行ってくれ」
マスターは走りながら即座に反論した。
「何を言ってるんだ!今、世界でビアスが何をしているか、貴方は理解しているはずだろ**。その『黒の理』の真実を知っている****唯一の存在である貴方を、ビアスに殺させる訳にはいかない」
グリムは歯を食いしばって言った。「ああ……一瞬でも隙を作ることさえできたら問題ないんだが……」
その言葉を聞き、スリムの目に強い決意が宿った。
「だったら、僕の力を授かることができる**。アイツにとって、僕の力は影響は少ないだろうけど、唯一と言ってもいいほど影響があるはずなんだ。お願いしてもいいかな**?**」
愛の継承とグリムへの託宣
スリムの視線は真っ直ぐにマスターに向けられていた。グリムの情熱の器よりも、マスターの**『狂気の愛**』という純粋な執着こそが、『白の理**』を受け入れるに相応しいと、直感したの**だろう。
マスターはその提案を一瞬で理解し、覚悟を決めた。
「私しかいないだろ?わかった。貴方の理、受け入れる」
雪の上に三人が立ち止まる**。スリムは最後の力を振り絞り、その胸に宿る****白の理の核を抽出した**。雪山に白く眩しい光が溢れ、その理の核がマスターの心臓へと吸い込まれていく**。
「グリム、スリムくんを連れて逃げてくれ**。俺は隙を作って逃げる**。この力なら、一瞬だけどビアスの動きを止められる**」
「マスター…!」グリムは叫ぼうとしたが、マスターの目に宿る揺るぎない愛の決意に言葉を詰まらせた。
「大丈夫だ。私の愛は誰にも壊させない。貴様は必ず、スリムくんを守って**、鍵を手に入れてくれ」
ビアスとの一騎打ち、愛の壁
グリムがスリムを抱えて再び走り出した瞬間**、漆黒の雷が空を裂き、ビアスが彼らの背後に追いついた。
「逃げられると思うたか、愚かな人間よ」
ビアスの黒の魔力が雪山全体を覆い尽くそうとしたその時、マスターが振り返り、両手を広げた。
「もう、逃げない**。ビアス、貴様の**『完全なる理』なんて、私の**『狂気の愛**』の前では、ただの砂上の楼閣だ**!」
マスターの全身から溢れ出す****純粋な愛の魔力が、先ほど受け継いだ****『白の理**』と融合した。その場に展開されたのは、愛と消滅の二つの論理が合わさった****白い障壁だった。
「究極の連鎖の理、『フラッシュラッシュ(絶対なる愛の守護**)』**!」
ビアスの黒の魔力が何枚にも重なった白い障壁にぶつかり**、激しい対消滅を起こした**。ビアスは目を見開いた。
「馬鹿な**!この消滅の理は……!スリムの力を受け継いだというのか**!?しかし、これは**……純粋すぎる**!**」
マスターの愛は、『白の理』の暴走を恐れていた****スリム自身よりも**、その力を極限まで純粋に引き出していた。
氷の雪山で、全てを統合しようとする****『黒の理**』と、全てを守ろうとする****『愛と白の理**』を宿した****マスターの孤独な一騎打ちが始まった**。その光景は、後に「愛の障壁」と呼ばれることになる**。グリムは涙を堪え、スリムを抱えて雪山の奥へと姿を消した。




