氷の地の邂逅、光と黒の二元論
グリムとマスターはクレナイに託された使命を胸に、極寒の地、氷の大陸へと辿り着いた。炎の情熱と狂気の愛を持つ彼らにとって、全てが凍りつくその大陸はこれまでの戦場とは全く異なる理に支配されていた。
氷の街ヒョウガ、古い記録
氷の大陸の入り口に位置する小さな街、ヒョウガ。住民たちは厚い毛皮を纏い**、その生活は厳しい寒さに耐えることに全てを費やしていた。
マスターと共に街の長老を訪ねた。マスターは寒さなど意に介さず、真っ直ぐな瞳で尋ねた。
「お爺さん、ここには遥かな昔から**『白の理』を継ぐ**、光の賢者の子孫がいると聞いたんだが、その方の手がかりが欲しい。知ってる事を教えてくれないか?」
長老は白く長い髭を撫で、遠い目をした。
「光の賢者……彼は私たちの一族の記録に度々登場する御方だ。お前さんたちがその力を求めるということは**、あの『黒』の理が再び世に災いをもたらしたのだ**ね」
黒の錬金術師、ユミルの真実
長老は壁に刻まれた****古代の幾何学模様を指さし**、驚くべき歴史を語り始めた。
「黒の錬金術師、ビアス……彼の真の名は**『ユミル』といった。彼と光の賢者は、元は師弟であり、そして、対を成す****存在だった**」
グリムは驚愕した。「対を成す……対極の理ってことですか**?**」
「その通りだ、若者よ。黒の錬金術師の力は際限なく増幅し、全てを統合しようとする。その『力』の抑止力が光の賢者だった。一方、光の賢者の『白の理』は全てを消滅させる。その暴走を止めるのが、黒の錬金術師の統合の理だった**」
マスターが口を挟んだ。「お互いがお互いを監視し、制御していたってこと**?」
「そうだ。世界の理を保つための**『二元論』だ」
そして長老はさらに衝撃的な事実を明かした**。
「だが、黒の賢者は肉体の限界から生の理を超えて暴走を始めた。その時**、彼を抑えるために立ち上がったのが**、光の賢者だった。光は黒の理を否定しつつも、その知恵を惜しみ**、ユミルの**『思念』だけを抽出し、ホムンクルスとして再創造した……それが、お前さんたちが戦っている****『ビアス』の正体**だ」
グリムは言葉を失った。「ビアスを作ったのが、光の賢者……!」
新たな目的地、ニヴルへ
「つまり、光の賢者は自分が生み出した存在の暴走を止めるために**、その対極の理を残したってことか*」マスターは事態の深刻さを理解した**。
長老は最後の情報を伝えた。「今の光の賢者の子孫は、『スリム』という名を名乗っている。彼はここよりさらに奥の、氷の大陸で最も大きな国、『ニヴル』にいる。あの国に行けば、お前さんたちの求める****『白の理』が見つかる**だろう」
グリムは体に残る****情熱の炎を再確認し、決意を固めた。自分の師匠たちが守った王都の未来が、自分とマスターのこの旅に懸かっている。
「マスター、ニヴルへ行こう。ビアスの真実が何だろうと、俺たちは今、進むしかない」
「わかっている、グリム。誰が誰を作ったかなんて、私の愛の前ではどうでもいいことだ。私たちが守るべきものを守るために、進むだけだ」
グリムとマスターは極寒の街を後にし、氷の大陸の奥地にある巨大な国、ニヴルを目指して動き出した**。
氷宮の邂逅、光と黒の再会
グリムとマスターは極寒の旅を経て、氷の大陸の中心にある巨大な国、ニヴルに到着した。国中が氷と荘厳な建築物で構成された王都は、厳粛な理の世界だった。
二人は情報を探るため、街の片隅にある酒場に立ち寄った**。マスターは常と変わらぬ****華やかさで店主に話しかけた。
「店主さん。この国に『スリム』という名前の錬金術師がいると聞いたんだけど、どこにいるか分かりますか?*?」
店主は冷たい水で割った酒を拭きながら答えた。「スリムさんかい?そりゃあ、この国の国宝級の錬金術師さ。王宮で王に仕えているよ。氷の理を使った防衛システムは彼が作ったんだ**」
スリムが王宮にいると知った****二人は早速、王宮の門へと向かったが、厳重な警備に阻まれ、門番に手ひどく****追い返されてしまう。
「くそっ、こんなにも厳重だとは。どうやってあのスリムって奴に会うんだよ**」グリムは苛立ちを隠せなかった。
黒い雷鳴とビアスの降臨
その時、ニヴルの空が一瞬で真っ黒な雲に覆われた。気温が急激に下がり、巨大な魔力の波動が街全体を圧迫する。住民たちはパニックになり、一斉に建物の中に避難を始めた**。
黒い雲から雷が走り**、グリムとマスターの目の前の広場に落ちた。雷の光が消えると、そこに立っていたのは、黒の錬金術師、ビアスその人だった。
ビアスの全身からは圧倒的な黒い魔力が噴き出し**、その目は冷たい****『論理』の光を宿して**いた。
「フフ……まさか、こんな遠い場所まで来るとは**。いつも邪魔ばかりしてる貴様等を通常なら潰して捨ててやるが今は私も忙しいのだ、愚かな人間よ。貴様等はどうせ私の対策に光の賢者頼りに来たのだろうがその非効率さが、私の『完全なる理』の領域を乱す**」
ビアスは右腕を振り上げ、強大な黒い霧を発生させた。霧は瞬く間に街全体を覆い、視界を奪い、魔力の流れを狂わせた。
「グリム!見失ったわ!」マスターが叫ぶ。
「クソッ!だが、これはチャンスだ!街が混乱している今なら**…**!」
グリムはマスターの手を引き、霧に紛れて警備の手薄になった****王宮の門を潜り抜けた。
王宮の悲鳴と光の賢者の子孫
王宮の内部は、黒い霧とビアスの魔力によって混乱の極みにあった。そこかしこから王宮の人々の悲鳴が聞こえる**。
グリムとマスターは急いで****スリムの居場所を探していたが、廊下の突き当たりから**、二人の魔力のぶつかり合う****激しい波動を感じた。
二人がその場所に辿り着いた時、そこは広大な氷のホールだった。ホールの中央で、一人の細身の青年が巨大な氷の結界を展開し、ビアスの黒い魔力と激しく****対峙していた。
青年、光の錬金術師の子孫****スリムは、青白い顔でビアスを睨みつけていた。その結界は全ての動きを停止させるかのような****『白の理』の力を帯びていた**。
「ユミル……あなたの暴走は**、この世界の理を破壊する。全てを消滅させる『白の理』が、あなたの『黒の理』を止めます」スリムは静かに言った**。
ビアスは冷笑した。「スリムよ。私を生み出した愚かな賢者の子孫が。この世界は、全てを統合した『完全なる理』によってしか救われない。お前の『白』は、私の**『黒』の前では、ただのノイズだ」
光の賢者の子孫が激突する中**、グリムとマスターはその光景を息を潜めて見つめていた**。




