憤怒の嵐、そして氷の啓示
緑の錬金術師とシエルが王都の復興を進める中、七天ホムンクルス、「憤怒」のサマエルが王都へと迫っていた。グリムは左肩の傷を抱え、弓を失ったまま、憎悪を胸に王都の城壁へと向かった。
憎悪 vs. 憤怒:完膚なき敗北
城壁の上に立つグリムの前に、憤怒を司る****サマエルが降臨した。サマエルの全身からは赤黒い****魔力が噴き出し、周囲の空気を激しく****歪ませていた。
「貴様か、ビアス様の計画を二度も邪魔した愚者は。シルファとアザゼルの失態の全て、この**『憤怒』の論理で処理**してやる!」
サマエルは論理ではなく純粋な暴力で襲いかかった。その拳はグリムの情熱の炎を遥かに上回る熱量と破壊力を持ち、一撃が城壁を砕いた。
グリムは弓懸を失った****左腕を庇いながら、唐紅の魔力を拳に集中させ、応戦するが、サマエルの憤怒の力はあまりにも圧倒的**だった。
「貴様の情熱は弱すぎる!憎悪の炎が足りない!」
サマエルの連続した鉄拳がグリムを襲い、グリムは為す術なく城壁に叩きつけられた。左肩の傷が裂け、全身の骨が軋む。グリムは憎悪で立ち上がろうとするが、サマエルの圧倒的な魔力に抑え込まれた。
サマエルはグリムの胸に足を乗せ、最後の一撃を振り上げた。
「愚者は消滅が最も効率的**だ。死ね!」
狂気の愛、憤怒を退ける
その瞬間、地響きと共にマスターが城壁へと跳び上がった。左腕の骨折も顧みず、狂気の愛の魔力を極限まで高めていた。
「おいグリム!文句があるならこの状況を作り出した自分に問題があるんだ!こんなにボロボロになって困らせるな馬鹿弟子!」
マスターはサマエルを突き飛ばし、ボロボロのグリムを抱えて脱出を図った。
「マスター!ぐっ……」
サマエルは思わぬ反撃に一瞬ひるんだが、すぐに追撃を開始する。しかし、王都塔から緑の錬金術師の援護が届いた**。
「マスター!今だ!俺の**『生命の理』が作り出した****一時の安全な結界**へ!」
緑とシエルの魔力の流れが作り出した****結界に滑り込み、マスターとグリムは辛うじてその場を脱した。サマエルは憤怒に叫びながら結界を叩くが、防御は破れなかった。
療養の地で聞く、氷の啓示
数日後、グリムは王都の療養所で横になっていた。緑の錬金術師の治癒とシエルの演算によって致命傷は免れたが、全身が激しく消耗していた。その病室に、マスターと共にクレナイ師匠が入ってきた。
「クレナイさん!無事だったんすね!」
クレナイはグリムの無事を確かめると、静かに言った。「ああ、私たちは、アザゼルを大地の奥に追い返すことに成功したよ。でも、その代償は計り知れない**」
クレナイの目は真剣だった。「グリム、お前さんたちが今まで戦ってきたホムンクルスは、もう一人の力じゃない。話を聞く限り特に、ベリアルが**奪った王都の秘宝と合体した『思念体』は、全ての理屈と価値を食い尽くす****究極の強欲の塊だ。これからの戦いは、今までのものと比べ物にならないからね」
クレナイは続けた。
「私たちの師匠たち**(七賢者)は、こうなることを予測していたんだ。ベリアルの思念体を倒すための鍵は、情熱でも生命の理でもない、真逆の理屈**……氷にあるらしいよ」
マスターが眉をひそめる。「氷ですって?北の氷の大陸?」
「ええ。氷の大陸には、遠い昔に、全てを消し去る****『白の理』を操った****光の賢者の子孫が、今も静かに暮らしているという言い伝えがある。その『白の理**』こそが、ベリアルの強欲を打ち消すためのヒントになるかもしれないんだ」
クレナイはグリムの左腕を見た。「グリム。お前さんは情熱の源を失くしたけど、その魂の炎は消えていないよ**。マスター、お前さんは王都の復興をシエルと緑に任せて、グリムと一緒に北へ行きなさい。これが、私から貴方たちに与える****最後のお使いだよ」
憎悪と敗北を胸に、グリムとマスターの新たな****旅の行先が、極寒の地へと定まった。




