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理の演算






帰還の論理

クレナイの厳命を受け、グリムは再び王都へ急いでいた。左肩の傷が脈打つ。それは、先の戦いで己の「情熱」と引き換えにした、痛々しい勲章だった。隣を歩く緑の錬金術師は、感情の波一つない、優雅で絶対的な平静を纏っていた。


「フム。君の左腕の負傷は、ベリアルの破壊の論理を打ち砕いた対価として、極めて釣り合っている。実に効率的だ。」


「ちくしょう、アンタはいつもそうやって理屈で切り捨てる」グリムは顔を歪めた。「俺の腕が痛むことが、どう効率的だっていうんだ?」


「違う」錬金術師は淀みなく答える。「その鈍痛は、君が**『不滅の情熱』を手放したという論理の明確な証明だ。その『喪失』こそが、王都の崩壊を防いだ。全体の生存確率を最大化するという観点から、これは最高の効率**だ。」


錬金術師は歩きながら、王都上空を覆う魔力の流れを解析し始めた。


「シエルくんの**『ホールディング・アルゴリズム』は素晴らしい。王都の崩壊を、最小限のエネルギーで限界まで食い止めている。だが、魔力核の損傷は致命的。僕の『生命の理』が必要なのは、その深部の修復だ。」


「生命の理で、機械のシステムが治せるのか?」


「愚問だ。システムとは論理で動く『生きた』構造体に他ならない。僕の理は、生命の成長と修復のプロセスを応用する。シエルくんの演算に僕の理を加速させれば、王都の回復は一気に加速ブースト**される。」


融合と進化の数式

王都塔の制御室。グリムたちが辿り着いた時、シエルは究極奥義の代償と連続演算で、まさに燃え尽きようとしていた。その顔は青白く、光を失っていた。

「緑の錬金術師……!貴方の生命の理を……待っていました……」シエルは消耗しきった体で、弱々しく頷く。


「効率の悪い挨拶は不要。すぐに始めよう、シエルくん。」


緑の錬金術師は、自らの深く静かな魔力を王都の魔力核へ、そしてシエルの制御システムへと流し込み始めた。シエルの冷たく青白い演算光に、緑の錬金術師の温かく穏やかな翠の光が混ざり合い、共振する。


「君の**『愛の論理』は安定している。この絶対的な安定性を基盤に、僕が修復リカバリーのための『成長の理』を入力する。君はその修復の論理を、王都の全構造体の破損箇所へと、最も効率的に分配**しなさい。」


緑の錬金術師の膨大で体系化された知識と、命の理の力が流れ込むと、シエルの演算は一気に臨界点を超えて加速した。彼の疲弊した脳裏に、これまで知覚し得なかった、純粋で完璧な新たな数式が閃光のように焼き付く。


「……なるほど。『生命の理』は、僕の演算を**『愛』の論理から、その先にある『進化』の論理へと高めてくれる……!この新しい数式**であれば、宿敵ビアスの最終演算に対抗できる、可能性が生まれる……!」


憎悪という名の情熱

二人の師が、世界の崩壊を防ぎ、論理的な復興という名の協奏曲に没頭する中、グリムはただ立ち尽くすことしかできなかった。左肩の激痛。弓を失った手の喪失感。そして、火の国で見た、師たちが戦い、苦しんだ憎悪の痕跡。

その時、制御室の警告ランプが激しく点滅した。


「間違いない……ビアスの**『怒り』**を体現した論理……七天ホムンクルス、『憤怒』のホムンクルスです!」


遥か遠く、憤怒の嵐が王都へと迫りつつあった。グリムは、今、武器となる弓を持っていない。だが、彼の胸の奥底—喪失と痛みの最奥には、かつての**『不滅の情熱』を遥かに凌駕する、新たな情熱が宿っていた。それは、全てを焼き尽くす「憎悪の情熱」**だった。


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