王都塔の深淵と情熱のフォルティッシモ
グリムが唐紅の矢でシルファを牽制し、マスターが荒々しいゴレモリーを引きつける中、シエルは王都塔の最深部、魔力核の制御室へと急いでいた。
制御室の中央、七天のホムンクルス、シルファが優雅に佇む。魔力演算盤の青白い光は、既にシルファの嫉妬の魔力に侵食され、緑色に汚染され始めていた。
「遅いな、演算の愚者。この**『コンチェルト』**の最終章は、貴様の敗北で飾られる」
シルファが指揮棒を振り、床から赤い斬撃が隆起し、シエルの進路を塞ぐ。
「僕の演算が導き出した、最速の移動時間です。そして、僕の演算が導き出した、貴方の存在の最も非効率な論理」シエルは眼鏡を押し上げ、魔力核への意識接続を開始した。
演算 vs 嫉妬:論理の衝突とフェルマータの罠
シエルは**「絶対防御」**を展開し、シルファの侵食を阻む。
「無駄なことを。我の嫉妬は、貴様の知恵を利用する論理だ!」シルファは嘲笑し、**「アッチェレランド」**を告げる。
無数の赤い斬撃の針が驚異的な速度でシエルの防御論理を突き、解析を加速させる。シエルは、防御の一部を解除し、アリア様への**「愛の論理」**へと演算を集中させることで、アッチェレランドの高速侵食を弾き返した。
シルファは、シエルの「愛の論理」を崩すため、次の罠を仕掛ける。「フェルマータ」
赤い斬撃の針が空中で静止し、静寂が支配する。そして、「コンチェルト」の号令と共に、静止していた全ての斬撃が、一斉にシエルに集中攻撃を仕掛けた!シエルは多方向からの攻撃に傷を負い、防御が崩れかける。
フォルティッシモの絶対防御と「情熱」の連弾
その隙を逃さず、シルファは王都魔力核の論理に自身の嫉妬の魔力を深くねじ込み、システムの乗っ取りを図る。
その瞬間、制御室の外、王都塔の入り口からグリムの叫びが響いた。
「理なんて関係ねぇ!俺の情熱こそが理だ!」
唐紅の矢が、グリムの情熱を纏い、シルファが展開する論理の網を迷いなく貫き、制御室へと向かっていく。
シルファは微動だにせず、最大の強弱記号を宣告した。
「フォルティッシモ」
シルファの周りの待機空間から赤い斬撃が瞬時に、そして最大出力で形成された。それは、グリムの唐紅の矢の軌道上に展開された**「絶対防御」**。爆風さえも計算に入れた、完璧な防御壁だ。
唐紅の矢がフォルティッシモの障壁に激突する。
矢は、一瞬静止した。
「ふふ……これで終わりだ、情熱の愚者」シルファは冷酷な笑みを浮かべ、反射演算が起動するのを待った。
グリムの左腕から鮮血が滴り落ちる。制御室へと矢を射ち込む直前、シルファが放った赤い斬撃の一つが、グリムの左腕を掠めていたのだ。だが、グリムは痛みに顔を歪めることもなく、情熱の魔力を込める動作を続行する。
しかし、シエルは冷静に指示を出した。
「グリム!その矢には、貴方の**『情熱の論理』を『不安定』なまま、最大で込め続けろ!僕の演算が、フォルティッシモの防御論理を『愛』で上書きする!」
しかし、シエルは冷静に指示を出した。
「グリム!その矢には、貴方の**『情熱の論理』を『不安定』なまま、最大で込め続けろ!僕の演算が、フォルティッシモの防御論理を『愛』**で上書きする!」
愛と情熱の協奏曲
シエルの額の光が最大限に高まる。シエルは、自身の「愛の論理」を王都魔力核の防御論理と同期させ、シルファが展開したフォルティッシモの防御の**「最も美しい、論理的に安定した部分」に、「愛」**という数式をねじ込んだ。
愛は、防御を極限まで安定させる。しかし、シルファの論理が「愛」を解析しようとするその一瞬の隙こそが、シエルの狙いだった。
「フォルティッシモ!貴様の防御は最も安定した時が、最も脆くなる!」
シエルの**「愛の論理」がフォルティッシモの防御論理を「絶対的な安定」**に固定したその瞬間、グリムが叫んだ。
「理なんてブチ破れ!」
グリムの唐紅の矢に込められた、計算不能な、「不安定な情熱」の魔力が、シエルによって「絶対的な安定」に固定されたフォルティッシモの防御論理と衝突した。
「安定」と「不安定」。この論理的矛盾が、絶対的な防御壁に致命的な亀裂を生み出した。
バキッ───。
音を立てて、シルファのフォルティッシモの防御障壁が砕け散る。唐紅の矢は、防御を貫通し、そのままシルファの胸を直撃した!
嫉妬の論理、崩壊
「あ……ああ……不協和音……!我の論理が……完璧な安定によって……!」
シルファの嫉妬の魔力は暴走し、王都魔力核から強制的に引き剥がされる。
シエルは静かに呟いた。「貴方の論理は、愛と情熱という**『非論理的な協調』**までは予測できなかった。演算の勝利です、シルファ」
緑色の光を発しながら、シルファは苦悶の表情を浮かべ、王都塔の奥深くへと消えていった。
血を流しながらも、グリムは王都塔を見上げる。
「チッ……シエル。お前の**『愛の論理』が、俺の『情熱の論理』と協奏曲**を奏でやがったか……」




