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介入者、ゴレモリーの魅了



魅了の光と剣の停止

 

シエルの光の剣による一撃は、ベルゼの甲殻を貫き、暴食のホムンクルスに深刻なダメージを与えた。その冷徹な顔に初めて苦痛が浮かんだが、討伐には至らない。

 

ベルゼの体から黒い血が流れ出た瞬間、闘技場の照明が、一瞬にして極彩色の眩しい光へと変わった。

 

「まぁ、熱いじゃなーい、シエル」

 

謎の女が優雅な笑みを浮かべ、シエルの背後に舞い降りた。彼女はベルゼの冷徹な撤退のための時間稼ぎとして、シエルの演算を停止させることを選んだのだ。

 

女が手にした薔薇の杖を振ると、極彩色の魔力の波動がシエルとグリムの精神めがけて放たれた。

 

「来る! 精神的な崩壊の数式...!」シエルは警告を発するが、既に遅い。

女の魅了の魔力は、思考の回路に直接作用した。シエルの脳内に、「もう戦わなくていい」「命の代償は終わった、静かに休め」という甘美な囁きが響き渡る。

 

シエルの瞳から理性の光が失われ、演算が停止した。

 

ガシャン!

 

シエルの絶対防御を担っていた盾の輝きが消え、古代の幾何学模様が沈黙した。そして、彼の右手に握られた七賢者の秘宝を宿した光の剣の輝きも、一瞬で失われた。

 

グリムの抵抗とシズクの激昂

シエルの演算停止は致命的だった。究極奥義の連携を支えていた**「司令塔」が機能停止したことで、グリムの錬成は不安定になり、魅了の波動に一人で抵抗**しなければならなくなった。

 

「くそっ! 甘ったるい声で誘惑すんじゃねぇ!」

 

グリムは情熱的な感情を持つため、魅了による精神的な歪みに苦しみながらも、闘志だけで耐え続けた。

 

「シエル!」シズクが激昂し、ゴレモリーめがけて突進した。「私の息子を弄ぶな!」

 

「あら、シズク。貴女の狂った愛情は魅力的だけど、息子を護りたいのなら、大人しく休むべきよ」

 

ゴレモリーはシズクのフィジカルの攻撃を、優雅な動作で避けながら、魅了の魔力を**シズクの「愛の論理」**へとねじ込もうと試みた。

 

狂気の愛と精神の防壁

シエルの演算停止という致命的な事態は、ゴレモリーの魅了による勝利を意味した。ベルゼは撤退し、闘技場に残されたのは、魅了の魔力を放つゴレモリーと、怒りの炎に燃えるシズク、そして精神的な苦痛に耐えるグリムだった。

 

「さあ、シズク。貴女の無謀な愛も、もう終わりよ」

 

ゴレモリーは優雅に微笑み、魅了の魔力をシズクの全身へと向けた。彼女の狙いは、シエルの傍にある盾(絶対防御のデータ)と、シズクのフィジカルの純粋なデータを回収することだった。

 

ゴレモリーの魔力は、シズクの精神、特に**「息子を護る」という根源的な愛の論理に直接作用**した。

 

「貴女の愛は狂っているわ。その短命の呪いを息子に背負わせた罪悪感から逃げているだけ。もう休みなさい。シエルは呪いから解放された。貴女の役割は終わったのよ」

 

しかし、シズクは一切動じなかった。彼女の瞳は狂気的な愛の炎を灯し続けている。

 

「私の役割? 私の命は、シエルのためにある! 罪だと? 息子を護る愛に、罪などない!」

 

シズクの**「狂気の愛」は、ゴレモリーの魅了が前提とする「一般的な感情の論理」を完全に逸脱していた。彼女の純粋すぎる、歪んだ愛情こそが、魅了という精神的な攻撃に対する最強の防壁**となったのだ。

 

グリムの最後の闘志

シズクがゴレモリーを牽制している間に、グリムは魅了による精神的な苦痛に耐え続けていた。

 

「くそっ! 戦うのをやめろって...バカな囁きに...負けるか!」

 

グリムは理屈ではなく、マスターとシエルを護るという純粋な闘志を、自己暗示のように繰り返した。彼の熱い情熱は、ゴレモリーの冷たい色欲の論理を焼き払うほどの力を持っていた。

 

グリムは震える腕で弓を構えると、シエルの盾に向かって、敢えて一本の氷の矢を放った。

 

キンッ!

 

矢は盾の表面に当たり、砕けた。その衝撃は、魅了によって無力化していたシエルの手に微かな刺激を与えた。

 

「...グリム...?」

 

シエルの覚醒と演算再開

グリムの命懸けの行動は、演算停止していたシエルの論理回路に、「仲間が危険に晒されている」という最も重要な定数を再入力した。

 

シエルの瞳に理性の光が瞬間的に戻る。

 

「論理は、仲間の命を護るためにある...!」

 

シエルは魅了の波動が完全に消えていない中、究極の集中力を発揮した。彼は盾を力強く握りしめ、ゴレモリーの魅了の魔力回路を逆解析し始めた。

 

「ゴレモリー! あなたの魅了の波長を、冷却の演算で逆位相にします!」

 

バチバチッ!

 

シエルの盾から、極めて精緻に制御された冷却の波動が放たれた。それは、闘技場に充満していた魅了の魔力の波長を打ち消すように機能した。

 

ゴレモリーは驚きに目を見開いた。「まさか...魅了を逆演算するなんて!」

 

最後の連携と撤退 

 

「グリム! 魅了の波長が消えても、彼女の防御は精神干渉だ! 物質でしか破れない!」シエルが演算を再開し、グリムに指示を出す。

 

グリムは即座に炎の矢を三本錬成した。シエルの絶対防御の波動が、ゴレモリーの魅了の残滓を完全に抑制する。

 

「これで色欲も堕落も関係ねぇ! 純粋な火力で燃やし尽くす!」

 

グリムの炎の矢がゴレモリーの体めがけて一直線に飛翔した。ゴレモリーは薔薇の杖で防御の魔力を展開するが、それは物質へと変性したグリムの矢の熱量には対抗できない。

 

矢はゴレモリーの右肩を掠め、彼女の美しい衣装を焼き焦がした。

 

「くっ……!」

 

「ゴレモリー。役目は果たした。撤退する」

 

「な!?ベルちゃん勝手すぎ!もう私も帰る!」

 

ベルゼは自らの肉体を腐敗の魔力で黒い霧へと強制的に変換させ、ゴレモリーは投げキッスと共に極彩色の魔力を放出し、その魔力が闘技場の照明を吸収しながら一瞬で空間を歪ませ、音もなく消滅した。

 

「ごきげんよう、愛の暴走機関たち。今日のデータは、ビアス様にとって最高の土産になったわ」

 

短命の呪いの終わり

静まり返った闘技場に、シズク、シエル、グリムの三人が残された。彼らの全身は傷つき、疲労していたが、瞳には勝利の光が宿っていた。

マモンマモンも富を護ることに成功し、七天はベリアルを失い、ベルゼとゴレモリーは撤退した。

 

シズクは、シエルの無事な体を抱きしめた。

 

「シエル……呪いは……もう……」

 

シエルは盾をそっと撫でた。七賢者の秘宝の力が安定した光を放っている。

 

「はい、マスター。究極奥義の命の代償は、完全に消えました」

 

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