三つ巴の衝突と裏切りの炎
巨人の防衛戦
ベリアルが闘技場に乱入し、マモン王が貪欲の巨人を召喚したことで、決勝戦は七賢者の秘宝を巡る三つ巴の激戦へと発展した。
ベリアルは巨大ゴーレム**「貪欲の巨人」**を前に、獰猛な笑みを浮かべた。
「面白い! 物質の壁か! なら、俺の純粋なフィジカルがその貪欲を打ち砕いてやる!」
ベリアルは地面を蹴り、巨人の足めがけて突進した。巨人の漆黒の油の鎧は驚くほどの強度を持ち、ベリアルの初撃を軋みを上げながらも受け止めた。
「無駄だ! ベリアル!」マモン王が巨人の頭上から叫ぶ。「この巨人は油田の膨大なエネルギーで構成されている! お前の力は、無限の富の前では無力だ!」
しかし、ベリアルの一撃一撃が空間を歪ませるほどの重圧を伴い、巨人の鎧には微細な亀裂が入り始めた。
秘宝奪取の隙
シズクは、七天同士の衝突という最高の好機を逃さなかった。
「シエル! グリム! マモン王は秘宝を自分の懐に隠している。巨人を倒す必要はない、マモン王本人を無力化しろ!」
「了解!」シエルは即座に演算を開始した。「グリム、僕が巨人の体温を急激に低下させ、石油エネルギーの流れを一時的に遮断します! その一瞬の隙に、弓の精密さでマモン王の魔力回路を狙ってください!」
グリムは躊躇なく氷属性の矢を番えた。「やってやるよ、マスター!」
ベリアルが巨人の右腕をへし折った瞬間、シエルが究極の演算を発動させた。
『演算開始:アブソリュート・オペレーション・フリーズ!』
巨大ゴーレムの全身から、凄まじい熱が一気に奪われ、石油の流れが滞った。巨人の動きはフリーズし、マモン王の顔に焦りの色が浮かんだ。
その隙を見逃さず、グリムが渾身の魔力を込めた矢を放った。矢はベリアルと巨人の間を縫い、マモン王の左肩に正確に命中した。
ズンッ!
マモン王は激痛に顔を歪ませ、懐に収めていた七賢者の秘宝を手放してしまった。古代の宝玉は、黄金の玉座の階段を転がり落ちた。
取引の実行
秘宝が転がったのを見たベリアルは、巨人の拘束を破り、秘宝に向かって突進しようとした。
「させん!」マモン王は傷つきながらも叫んだ。「秘宝は渡さん! シズク! ベリアルを止めろ! 秘宝はくれてやる!」
マモン王は、富の私物化のため、七天のホムンクルスという立場を完全に捨て、勇者一族との取引を選んだ。
シズクは一瞬も迷わず、秘宝を回収したグリムに指示した。「シエル! 秘宝を持って緑の錬金術師の元へ転移しろ! グリム! 私の演算補助に戻れ!」
グリムは回収した秘宝を握りしめ、転移結晶に魔力を込めた。閃光とともに、グリムは闘技場から姿を消した。
ベリアルは激怒した。「テメェら! 裏切りやがって!」
「秘宝はもうここにはないぞ、ベリアル!」マモン王は、油田のエネルギーを全て巨人の再生に注ぎ込んだ。「シズク! ベリアルを倒せ! 富を護れ!」
シズクは剣を構え、ベリアルと対峙した。彼女の瞳には、**「息子と富」**を護るという、マモン王と同じ貪欲な光が宿っていた。
命の対価からの解放と冷静な判断
シズクとマモン王の巨人、そしてベリアルが闘技場で激しく衝突する中、シエルは七賢者の秘宝を手にマモン王国の闘技場から転移した。
シエルが転移した先は、約束通り緑の錬金術師がいるオアシスだった。シエルは冷静さを保ちつつ、息を切らしながら**秘宝(物質の変性を司る古代の宝玉)**を錬金術師に差し出した。
「約束通り、秘宝を持ってきました、錬金術師殿。時間はありません。至急、短命の呪いを解く術式を教えてください」
緑の錬金術師は秘宝を受け取ると、その宝玉を深海魔力結晶(釣り餌)と重ね合わせた。二つの古代の物質が触れ合った瞬間、周囲の魔力と生命の波動が共鳴し、オアシスの水面が強い光を放った。
「焦るな、若き演算魔よ。君の冷静な頭脳こそが、この創造の数式を定着させる鍵だ」
錬金術師は光を放つ二つの物質をシエルの盾に押し当てた。「君は論理を司る。そしてこの秘宝は、物質の制御を司る。君の究極奥義が命を削るのは、物質変換の際に不必要なエネルギー(生命力)を触媒として利用してしまうからだ。君の演算回路(盾)に、この秘宝の力を恒久的な触媒として組み込む」
究極の防御と論理の完成
シエルは錬金術師の指示に従い、全身の魔力を盾に注ぎ込み、秘宝の力を演算回路に取り込んだ。シエルの盾は鈍い光を放ち、古代の緻密な幾何学模様が浮かび上がった。
「感じるか? もう君の魂のエネルギーは、物質錬成の回路から切り離された。君の命の代償は、この秘宝が供給する物質の変性エネルギーによって、恒久的に肩代わりされる」
シエルは、究極奥義である**『リフレクトカウンター』を瞬時に演算した。命が引き抜かれる恐怖の感覚が一切なく、その代わり、盾が無限の魔力を供給する原子炉**のように安定しているのを実感した。
「命ではない...僕の論理と防御が、命の軛から解放された...」
「その通り。これで君は、演算の安定性と防御力を無限に高められる。君の命は、純粋な演算のために使えるようになった。今こそ、グリムを助けるための**『最後の定数』**を導き出すのだ」
シエルが呪いから解放された直後、グリムが組んだ転移陣が緊急の通信を求めて光り始めた。
「シエル! 良かった、生きてたか! ベリアルがマモン王の巨人を破壊した! マスターがベリアルを足止めしてる! すぐに戻ってきてくれ!」
シエルは古代の幾何学模様が刻まれた盾を固く握りしめた。その冷静な瞳の奥には、仲間を救う決意と新たな論理が宿っていた。
「了解した、グリム。僕の命の代償は消えた。今度は僕が、最強の演算でシズクと君を護る絶対の盾になろう!」
シエルは緑の錬金術師に深く一礼し、究極の防御力を得た盾を手に、再びマモン王国の闘技場へと転移した。




