武術大会の喧騒
シズク(マスター)とシエル、グリムは、深海魔力結晶という重要な**「餌」**を手に入れたものの、**アビス(シエルの父)**との再会による重い空気を引きずりながら、マモン王国の首都へと到着した。
マモン王国の首都は、砂漠の国とは思えないほど活気に満ちていた。巨大な油田から立ち上る炎が夜空を照らし、街は富と闘志の熱気に包まれている。
一行はまず、武術大会の登録所へ向かった。
「すごい熱気だな...」グリムが圧倒されたように呟く。「この国全体が、石油と闘志でできてるみたいだ」
シエルは冷静に周囲の魔力波動を感知する。「マモン王国の錬金術師が石油エネルギーを魔力に変換しているため、街全体の魔力密度が非常に高いです。これは七天のホムンクルスにとって、最高の活動環境となります」
登録所では、各国から集まった屈強な戦士たちが列をなしていた。シズクは**「王国の錬金術師一行」**として、シエルとグリムを伴い、特待枠で登録を済ませた。
「これで、七賢者の秘宝を手に入れるための舞台は整った」シズクは冷たく言い放った。
マモン王の謁見室
登録後、一行は大会の主催者であるマモン王への謁見に招集された。
マモン王は、全身を金色の装飾品で飾り立て、傲慢な笑みを浮かべた男性だった。彼の周囲には、粘性の高い魔力が渦巻いており、シエルは一瞬で七天のホムンクルスである可能性を察知した。
「よく来た、勇者の血を引く者たちよ」マモン王は、その肥えた体躯を揺らしながら言った。「特に、命を削りながらも最強を誇るシズクよ。私は君たちの命の輝きに、深く魅了されている」
シズクの目が険しくなる。彼女が本名で呼ばれたこと、そして短命の呪いを熟知していることから、マモン王の正体は**「マモン」**で確信に変わった。
「目的は何だ、七天のホムンクルス」シズクは問答無用で核心を突いた。
マモン王は楽しそうに笑った。「さすがはシズク。回りくどい駆け引きは不要か。私の目的は、君たちが手に入れようとしている七賢者の秘宝、そして君たちの究極奥義のデータだ」
緑の錬金術師との約束
謁見を終えた夜、一行は宿舎に戻るなり、シズクは深海魔力結晶をテーブルに出した。
「約束通り、緑の錬金術師にこれを渡すぞ」
シエルは直ちに転移陣の数式を組み上げ、緑の錬金術師を呼び出した。オアシスの畔から、緑の錬金術師が姿を現した。
「ご苦労。流石は勇者の血を持つ者。私が必要とした釣り餌を手に入れるとは」彼は満足げに結晶を受け取った。
そして、その結晶を手に取ると、真剣な表情に変わった。
「この結晶が、君たちの短命の呪いを完全に断つための最終的な鍵となる。君たちは、マモン王に会っただろう?」
「ええ」シズクが答える。「彼の目的は秘宝と我々のデータだ」
「彼の名はマモン。貪欲を司るホムンクルス。彼が秘宝を賞品にしたのは、勇者一族の究極奥義を、全世界の観客の前で暴発させるためだ。それがビアスの計画の一部だ」
緑の錬金術師は、シエルとグリムに顔を向け、警告した。
「君たちが秘宝を手に入れ、命の代償を切り離そうとした瞬間、マモンは究極の罠を発動させるだろう。君たちの奥義の暴走で、この王国の油田全てを爆発させ、世界を混沌に突き落とすのが、彼の真の貪欲だ」
油田の巨人、マモン王の防衛戦
マモン王の真の目的が、勇者一族の奥義暴発による油田破壊ではなく、秘宝の私物化と王国の富の維持にあると判明した。彼は、秘宝を奪おうと強引に動くであろうベリアルを最大の脅威と見なしていた。
決勝戦の幕開けとベリアルの介入
武術大会の決勝戦の日。マモン王国の巨大な円形闘技場は、石油エネルギーを魔力に変換した煌びやかな照明と、富の象徴である黄金の装飾で彩られていた。
決勝戦は、シズクとグリムの師弟コンビと、マモン王国が送り込んだ最強の石油錬金術師との戦いとなった。シエルとグリムは、緑の錬金術師から教わった**「命の代償の遮断弁」**を試しつつ、氷と風の連携で相手を圧倒。見事、七賢者の秘宝を勝ち取った。
マモン王が黄金に輝く**秘宝(物質の変性を司る古代の宝玉)**を手にし、シエルに授与しようとしたその瞬間、観客席の一角から、凄まじいフィジカルを持った人影が飛び出した。
「待てよ、マモン! その宝は、俺たちが勇者一族からデータを取るために必要なものだ!」
現れたのは、七天のホムンクルス、ベリアルだった。彼は観客席を蹴り上げ、闘技場に降り立つと、マモン王に向かって一気に突進した。
マモン王の迎撃:「貪欲の巨人」
「チッ、やはり来たか、武力の暴徒め」マモン王は秘宝を懐に収めると、余裕の笑みを浮かべた。
「世界の破壊など、富を失えば意味がない。私の所有物を奪おうとする者は、ビアスの使徒だろうと容赦せん!」
マモン王は巨大な体躯を震わせると、闘技場の地面に向けて両手を叩きつけた。
ゴオオオッ!
闘技場の地下に張り巡らされていた石油パイプラインが、マモン王の錬金術により瞬間的に魔力炉と化した。黒い油が地面の亀裂から噴き出し、瞬く間にベリアルとシエルたちを分断した。
そして、噴き出した油が凝固し、巨大な人型の構造物へと形を変えた。それは、黒曜石のように輝く分厚い油の鎧を纏い、油田の炎を両肩に燃やす巨大なゴーレム――**「貪欲の巨人」**だった!
「石油の錬金術は、物質を魔力に、富を力に変える! ベリアル、貴様の純粋なフィジカルでは、この究極の物質の壁は破れまい!」マモン王は巨人の頭部に立ち、自信満々に言い放った。
シズクとシエルの判断
ベリアルは目の前に現れた巨大な敵を前に、獰猛な笑みを浮かべた。「へえ、七天同士の潰し合いか。面白い。だが、そんなデカブツ、俺のフィジカルで一撃だ!」
ベリアルが巨人に突進しようとした瞬間、シズクがシエルとグリムに指示を出した。
「グリム! ベリアルに手を出すな! マモン王の目的は秘宝の私物化だ! シエル、マモン王の巨人の制御数式を解析しろ! 秘宝を奪うぞ!」
シエルは冷静に演算を開始した。「了解! マモン王の術式は、巨人の内部構造に石油エネルギーを循環させている。熱伝導の数式を逆用すれば...」
シエルとシズクの狙いは、ベリアルとマモン王が衝突している間に、秘宝を奪取し、緑の錬金術師との約束を果たすことだった。




