マモン王国への道
緑の錬金術師から命の対価を一時的に切り離す術の初歩を学び、シエルとグリムは致命的な弱点を克服する最初の一歩を踏み出した。一行は、いよいよマモン王国の首都を目指し、再び砂漠の街道を進む。
錬金術師の忠告と使者の情報
馬車の中、アリア様は緑の錬金術師から受け取った釣り餌のリストと、マモン王国の使節団が運ぶ交易品の情報を照合していた。
「このリストにある**『深海魔力結晶』、これはマモン王国の使節団が王都へ運ぶ予定の高級装飾品に酷似しています。間違いなく、これが緑の錬金術師の言う『餌』**でしょう」アリア様が結論づけた。
マスターは腕を組みながら吐き捨てる。「フン、わざわざ面倒なパシリを。あの男(旦那)の使節団と揉めることになるだろうが」
シエルは冷静に尋ねた。「マスター、その使節団は既にマモン王国に入っていますか?」
「いや。マモン王国の武術大会に合わせて、各国からの使節団は国境の検問所で足並みを揃えることになっている。つまり、今向かえば、確実に奴らに遭遇する」マスターの表情が険しくなった。
グリムが不安そうに尋ねた。「もし、その王国の使者がマジでマスターの旦那だったら、どうするんだ? 会いたくないって言ってたろ?」
マスターは静かに答えた。「会いたくないのは事実だ。だが、今は七賢者の秘宝が最優先。私情は挟まない」
砂塵を纏う騎士
国境の検問所まであと数時間という地点。馬車の車窓から、激しい砂塵が巻き上がっているのが見えた。
「何だ? 嵐か?」グリムが身構える。
シエルは魔力の流れを感知し、顔色を変えた。「違います! 魔力的な衝突です。あれは...騎士団の魔力!」
馬車を止め、一行が砂漠を見渡すと、数十名の王都の騎士団と、それを遥かに上回る数のマモン王国の兵士が小競り合いを繰り広げていた。
そして、その騎士団の先頭に立つ、一人の男性の姿をマスターは捉えた。
その男性は、精悍な顔立ちに銀の鎧を纏い、勇者一族特有の濃い金色の髪を風になびかせていた。彼は、マスターとシエルの特徴を併せ持ったような姿をしていた。
マスターの顔から一切の感情が消え、まるで凍りついたように硬直した。
「あれが...」シエルが思わず呟いた。
「王国の使者、そして...」マスターは低く、押し殺した声で言った。「シエルの父親だ」
その時、マモン王国の兵士たちが、体中に油の結晶を纏わせた強化兵へと姿を変え、騎士団を圧倒し始めた。王国の騎士団は劣勢に立たされ、使者であるシエルの父は、自ら剣を抜いて応戦せざるを得ない状況に追い込まれていた。




