マモン王国へ向かう旅立ちと、同行者
王宮の会議室での緊迫した話し合いを終え、一行はマモン王国へ向けて出発の準備を進めていた。
リリアンヌ姫は、賢者の森のエルフたちの避難を手配するため王都に残り、アリア様がマスターたちに同行することになった。また、**「緑の錬金術師」の居場所の手がかりを得るため、古老の残した資料の解析を続けるメイド長(姉)**は、転移陣を使ってリアルタイムで情報を共有することになった。
マスターの意地
王宮の門前。豪華な馬車が用意され、シエル、グリム、マスター、アリア様が乗り込もうとしていた。
マスターは不機嫌な面持ちで、グリムに転移結晶を渡した。
「いいか、グリム。マモン王国では、私の言うことは絶対に聞け」
グリムは驚いて尋ねた。「どうしたんだよ急に? 旦那(?)に会いたくないからって、そんなにピリピリすんなよ」
「うるさい!」マスターは即座にグリムの頭を叩いた。「個人的な感情でなく、王国の使者として来ている人物だ。私の昔のことは一切話すな。特にシエルは」
マスターはシエルに視線を向けた。シエルは、いつになく感情的になっているマスターを見て、静かに答えた。「分かっています。僕は錬金術師として、ただ秘宝を手に入れることに集中します」
マスターは少し安心したようにため息をついた。「フン。分かればいい。あの男の前で、勇者一族の短命の呪いがまだ解けていないことを知られるわけにはいかない」
最初の目的地:緑の錬金術師の釣り堀
豪華な馬車に乗り込んだ一行は、まず**「緑の錬金術師」が目撃されたという、マモン王国国境近くの小さな釣り堀**を目指すことにした。
道中、グリムはマモン王国についてアリア様に尋ねた。
「マモン王国って、本当に石油の錬金術が盛んなんですか? 俺たちの魔力錬金術とは全然違うってことですよね?」
アリア様は資料を読み上げながら答えた。「ええ。マモン王国は、魔力資源の少ない砂漠地帯で発展したため、地下資源(石油)を錬金術の核としています。彼らは物質の変性とエネルギー効率を極め、独自の進化を遂げてきました。彼らの錬金術は、私たちの命の理を探る精神性の錬金術とは、まさに対極にあるのです」
シエルは窓の外を見つめながら、静かに呟いた。「対極... まるでビアスの思想そのものだ」
砂漠の街道と油の傀儡
マモン王国へ向かう馬車の中、マスターのピリピリとした空気と、アリア様によるマモン王国の錬金術に関する説明で、車内は重い静けさに包まれていた。
石油の影
数日後、一行はマモン王国国境近くの砂漠の街道に差し掛かっていた。周囲は赤茶けた砂漠が広がり、空気は熱く乾燥している。
「あの... アリア様の話だと、マモン王国の錬金術は石油が核なんですよね? ここはもうその影響下にあるんですか?」とグリムが額の汗を拭いながら尋ねた。
アリア様が頷く。「ええ。マモン王国の錬金術師たちは、地中に眠るエネルギー資源を操ります。そのため、通常の魔力とは異なる、粘性と高熱を伴う術式を使うわ」
シエルが周囲の砂漠を見つめた。「魔力の流れが非常に混濁している。まるで油が混ざった水のような...警戒が必要です。この環境は、僕たちの魔力錬金術の演算を狂わせる可能性がある」
最初の刺客
次の瞬間、馬車が激しく揺れ、停車した。
「止まれ! 誰だ!」マスターが馬車から飛び出すと、広大な砂漠の真ん中に、異様な存在が立ちはだかっていた。
それは、黒く粘性の高い油を纏った、巨大な人型の傀儡だった。体から高温の湯気が立ち昇り、地面に足跡を残すたびにアスファルトのように黒い油が滲み出す。
「七天...ではないな」マスターが剣(柄の部分)に手をかけながら呟く。「雑魚のホムンクルスか?」
傀儡は無言で、手を鞭のように変形させると、黒い油の塊をグリムめがけて放った。
「くそっ!」グリムは咄嗟に炎の矢を放ち、油の塊と衝突させた。しかし、炎は油を一瞬燃やし尽くすものの、油はさらに激しく燃え上がり、爆炎となってグリムを襲った。
「グリム!」シエルは即座に盾を展開し、グリムを庇った。
対極の錬金術
「無駄よ!」アリア様が叫んだ。「マモン王国の石油錬金術は、熱を与えると爆発的なエネルギーを生む! グリムの火炎属性は、彼らにとって最高の触媒になってしまうわ!」
シエルが盾越しに分析する。「なるほど。僕たちの錬金術とは、まさに対極の属性...」
マスターは舌打ちした。「厄介な。熱を与えずに破壊する、純粋なフィジカルが必要ってことか」
その時、油の傀儡の背後から、もう一体の傀儡が現れ、同時に左右から挟み撃ちを仕掛けてきた。マスターはシエルとグリムに指示を出す。
「シエル! お前は風の演算で奴らの体温を下げ続けろ! グリムは氷だ! 奴らの油を凍らせて硬化させろ! 私が潰す!」




