指揮棒は演算のメトロノーム
不協和音の協奏曲
賢者の森で、七天のホムンクルスであるシルファと対峙したシエルとグリム。マスターは荒々しいベリアルと激突しており、二人はシルファの芸術的な戦闘スタイルに翻弄されていた。
グリムが「くらいやがれ!」と渾身の多重属性矢をシルファに放つが、シルファは指揮棒を優雅に一振りし、**「コンチェルト」**と告げた。その瞬間、床から赤い斬撃が隆起し、グリムの属性攻撃を全て防いだ。
「チッ、面倒くせぇ!」グリムは舌打ちする。
シエルは一瞬で槍に変化させ、間合いを詰めて前に出た。次はシルファが**「アッチェレランド」と言うと、赤い斬撃の針を驚異的な速度**で飛ばしてきた。シエルは横に跳んで回避する。
静止と加速の罠
シエルの回避を確認すると、シルファは次の拍子を告げた。「フェルマータ」。
赤い斬撃の針は急に空中で静止した。まるで時の流れから切り離されたかのように、そこに留まる。シエルは警戒を強めたが、その**「静止」**こそが罠だった。
その次にシルファが再び**「コンチェルト」と告げると、シエルの周囲に静止していた全ての赤い斬撃**が、一斉にシエルに向かって突っ込んできた!
シエルは槍で弾き続けたが、多方向からの集中攻撃を防ぎきることはできず、腕と腹に斬撃を喰らい、魔力で強化されたスーツが破れる。
フォルティッシモの絶対防御
グリムが即座に属性矢の攻撃を放ち、シルファに向ける。シルファは微動だにせず、最大の強弱記号を宣告した。
「フォルティッシモ」
シルファの周りの待機空間から赤い斬撃が瞬時に形成され、グリムの矢は全て撃ち落とされた。矢は爆発したが、シルファの赤い斬撃は爆風の影響を一切受けずにそのままグリムの身体を貫いた。
「ぐっ!」グリムは血を吐き、膝をついた。
「爆風さえも計算に入れている……完璧な防御だ!」
図星の数式
グリムは槍を盾に変化させようとしているシエルに向かって、いつになく余裕のない顔で叫んだ。
「このままじゃ俺たちやられるぞ、どうする完璧執事!」
シエルは冷静に返す。「俺が奴の攻撃を盾で防ぐから、お前は弓矢でなんとか持ち直せるか」
「こっちだって魔力は無限じゃねーし、ポーションも2つしかねぇ。ゆかけは火属性用のしかもってねぇから、多重属性の矢もポンポン放つわけにはいかねぇ。そんな中でも、あいつをやれると思ってんのかよ」グリムは息を切らし、焦りを隠せない。
シエルは、グリムの限界への焦りではなく、別の要因が彼をこれほど動揺させていることを見抜いた。
「それじゃあ、お前の気になってるお姫様ともお別れだな。御愁傷様」
グリムは顔を真っ赤にして慌てた。「は!? な、んなんじゃねえし!」
シエルは、図星じゃねえかと内心で確信した。彼は静かに盾を構えながら、心の中でそっと呟いた。
(良かったなリリアンヌ、鎌かけとは言えお前を思ってくれる男がここに居たぞ)




