勇者の究極奥義
盾の奥義、防御の極致
シエルの問いに、マスターは夜空を見上げたまま静かに答えた。その声は、かつての師としてではなく、親として、我が子の防御を案じる響きを帯びていた。
「リフレクトカウンターか。それは、弓術の使い手にとって、最も厄介で、最も恐れるべき術式だ」
弓術の視点から見た絶対防御
マスターは、かつて勇者の一族最強の弓術師として戦場に立った経験から、盾の奥義の戦術的な価値を語り始めた。
「弓術師は、**一撃必殺の『一点』を狙う。最高の演算で敵の動きを読み、『次の瞬間に敵が立つ場所』**を数式化して矢を放つ。それは、完璧な『実行』だ。だが、盾の奥義は、その『実行』そのものを無効化する」
マスターはシエルの方に振り返った。
「私が放った**『静かなる極致』の一撃が、何の抵抗もなく私自身に跳ね返ってくることを想像してみろ。それは単なるダメージではない。それは、攻撃側の演算の完全な破綻だ。命を削って放つ究極の奥義**を無効化され、その力が自分に返ってくることは、戦術的な敗北に直結する。故に、盾の奥義を持つ勇者を相手にするのは、論理的な思考を停止させる」
グリムとの練習の意義
マスターは、シエルがグリムとの練習を考えていることにも言及した。
「グリムと練習すべきだ。彼の弓矢のアルケミストの力は、多様な属性と非論理的な多重構造を持つ。それは、盾の術式にとって想定しうる最も複雑な攻撃だ。グリムの矢で盾の奥義を試せば、『リフレクトカウンターの限界』、そして**『制御の数式』**の完成度を計ることができる」
その言葉は、グリムの才能への全幅の信頼と、シエルへの防御の完成を促す親の期待が込められていた。
親の最後の教え
シエルは、過去の謝罪を拒否したことで、逆に現在の絆を強めたことを理解した。この盾の術式の解説は、単なる軍事的な知識ではなく、**「二度と命を削って勝負に出るな」**という、親から子への最後の教えなのだ。
シエルは目を閉じ、その防御の極意を頭の中で演算する。
マスターは、シエルの覚悟と制御への意欲を認めると、夜風に混じってそっと付け加えた。
「盾の術式を習得すれば、お前は完璧な防御の術を手に入れる。だが、王都の番人としての執務には、もう一つ必要な防御の奥義がある」
マスターは、王都の奥に眠る秘宝と、ビアスの襲来を想定し、シエルに絶対的な防御を完成させるための最後の術式を伝授しようとしていた。
鋼鉄の庇護
マスターはオーパーツを一旦懐にしまうと、再び夜景に目を向けた。その表情は、師としての厳しさと、親としての愛情が混在していた。
「「リフレクトカウンターで反撃の術を学んだお前は、確かに防御の戦術を完成させるだろう。しかし、王都の番人としての執務には、もう一つ必要な剣の奥義の真の力を知ることだ」
マスターは夜風に混じってそう告げると、シエルに真剣な眼差しを向けた。
「お前が命を削る覚悟で解放したあの力、剣の究極奥義の真の姿だ。それは**『断罪』であると同時に、『制御』であり、『自己の防御』**の極致でもある」
マスターは、その術式の名を静かに告げた。
「それは、『アブソリュート・オペレーション(絶対演算)』だ。剣が断罪と破壊の術ならば、それは制御と維持の術だ。その究極奥義は、命の代償からお前を守るための最後の保険なのだ」
剣の真髄:自己の命を演算する術
マスターは、剣の究極奥義が持つ戦術的な価値と、シエルの命にとっての重要性を改めて説いた。
「『アブソリュート・オペレーション』は、確かに山脈を割るほどの破壊力を持つ。だが、文献にもあったように、それは命を削るという諸刃の剣だ。この奥義の真の力は、破壊ではなく**『絶対的な制御』**にある」
「お前が戒めを解いて力を解放したとき、術式は**『命の全消費』という数式を選びかけた。しかし、『アブソリュート・オペレーション』の完全な数式が解放されれば、術式は『命を削り切らないギリギリの線』を演算**し、力の収束を可能にする」
シエルは、これがアリアたちが探している『制御の数式』の最終結論だと悟った。
「つまり、究極奥義は、命の代償を論理的に最小化するための安全装置としての側面も持つ。お前が**『覚悟』で奥義の発動条件を満たし、アリアたちの研究で『制御の理論』を学んだ今、残るは『自己を護るための演算の習熟』**だけだ」
覚悟の継承と旅立ち
シエルは、剣の真の力が**「破壊」と「防御」を兼ね備えた究極の執務**であると理解し、深く頭を下げた。
「マスター。盾の反撃、そして剣の真の制御について、心に刻みました。この奥義の術式が、僕を王都の番人として完成させます」
マスターはシエルの肩を軽く叩いた。
「わかればいい。お前はもう、私の教えを必要としない領域にまで達している。あとは、お嬢様たちとの研究で、制御の数式を完成させるだけだ」
夜明け前、マスターはオーパーツを抱え、解析研究所へ向かうため、その場を離れた。シエルは、夜風に吹かれながら、リフレクトカウンターとアブソリュート・オペレーションの二つの究極奥義を、王都の番人としての覚悟と共に胸に刻み込んだ。




