アルス・マグナと覚悟の数式
アリアとリリアンヌ姫に連れられ、シエルは王宮の図書館の奥、普段は施錠されている古い文献の棚に向かった。壁一面に並ぶ埃を被った書物の中、アリアが探し当てた一冊の文献が、彼らの執務に光を投げかける。
文献に記された「アルス・マグナ」
文献を読み進めるアリア様とリリアンヌ姫の間に座り、シエルは目を見張った。そこには、勇者の一族が過去に使用した奥義について記されていたのだ。
「シエル、これを見て。『アルス・マグナ(大いなる術式)』、すなわち究極の術式の存在よ」
文献には、槍と剣と盾といった勇者の武器それぞれに、奥義となる術式が眠っていると記されていた。その中の槍の術式の一つが、「アルス・マグナ」と名付けられていた。その記述を辿ると、シエルがあの時解放した高出力の剣の力と、非常に似た効果を持つ術式であるようだった。
究極の術式と「1日1発」の制約
しかし、その術式には想像を絶する制約が記されていた。
「これを見つけてよかったわ。でも……シエル」アリアの声が僅かに震える。「この術式は、使えば使うほど勇者の一族の肉体に致命的な負担をかけてしまう。文献には、**『一日に一発が限度』**と記されているわ」
シエルが解放した山脈を割るほどの力が、命を削る諸刃の剣であることを、文献は論理的な数式として突きつけてきた。
さらに、文献には盾の術式についても言及されていた。
**「盾の術式」は、全ての攻撃を跳ね返すための「リフレクトカウンター」**として使用するようだ。
「リフレクトカウンター……」シエルは思考した。「これは相手の攻撃があって初めて成立する。一人で練習するよりも、グリムが帰ってきてからの方が、より正確な検証ができるでしょう」
覚悟こそが解放の鍵
剣の術式の詳細な**「制御の数式」については、結局見つけることができなかった。だが、シエルは王宮の図書館で文献を漁りながら、あの時、力が解放された理由を、自分自身で正確に覚えていた**ことを確信する。
それは、**「覚悟を決めたこと」**だ。
短命の呪いを克服し、アリア様の安息を護るため、命の全てを賭すという勇者としての覚悟を決めた時、この究極の術式は解放されたのだ。
「断罪する力を持つのは、覚悟が必要なのだろう」
シエルは、リリアンヌ姫に深々と礼を伝えた後、すぐに私室へと戻った。
彼は高性能のポーションを服用し、肉体の負担を最小限に抑えながら、集中して剣を顕現させる。そして、**「王都の番人」**として、来るべき最終決戦に備え、覚悟を意識した制御の修行へと身を投じた。




