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それでも⑪
五十嵐はともかく、
中島が苦虫をつぶしたような顔をしているのは、理解はできる。
妻帯者である私が、
同僚の女性とイチャイチャしているように見えるというのは、
正義漢である彼としては、許しがたいものがあるのだろう。
「いや、あれは、講義のメモを写させてくれと言われたのであって、
別にイチャイチャしていたわけではない。」
『お見合い』の話は伏せておいた。
今話せば、余計に混乱させる。
私はノブにそう言ったのだが、
ノブは一言、
「リコさん、うらやましいっす。」
また面倒な話になったものだ。
五十嵐は小声で一言、
「別に管理職に報告しません。
ただ、翔子先生の動向には気をつけて下さい。
後で報告いたしますが、
彼女の素性もなかなかの曲者です。」
家に帰ってから聞いたのだが、
実はノブと五十嵐はすっかり友達になったようで、
お互いに私の護衛や監視をする同業者として
仲良くなったようだ。
あの慎重居士の五十嵐の警戒を解くとは、
ノブもやるものである。




