邁進①
月日の経つのは早いものだ。
正月1日は、ウチのログハウスに
実咲と母親を招待し、
アタシと陽子、執事シュウの3人で出迎えた。
こうして5人が家族のようになって元日を過ごすのは初めてだ。
今年は4月からアタシと実咲の二人とも4年生になる。
進路についても考えていかないと。
実咲は心理系大学院への進学、
さらに大学院で2年過ごした後には公認心理師へ。
アタシは今年、栃木県の教員採用試験を受験し、
高校数学の教員に。
「勉強の方は順調なの? 」実咲の母が訊いてくる。
当然の疑問だ。
この質問に、陽子が先に答えた。
「お二人とも、問題ありません。
実咲様におかれましては、これまでの『心理学検定』の学習から続いて、
さらに『心理学キーワード&キーパーソン事典 』(ナツメ社)も使い、
完璧な対策をしております。
大学においては、昼に内容の音読、『詠唱』を毎日続けておられます。
おそらくは、心理学専攻の3年生、いや、全学年におかれましても、
リコ様を除いてこれほど勉学に専念されているお方はおられないかと。」
「まあ、リコさんの勉強の方は心配してないけど、
ウチの実咲、そんなに勉強してるの?
ウチでは英語の勉強はしてるみたいだけど、
1時間も経たずに終わらせてるみたいだし。」
「毎日続けてるんだろう? 」アタシも口を挟む。
「41例文を5等分して、8例文くらいずつ毎日音読。
土曜日だけ休みね。
もう3年近くそうしているわ。
最近は1回10例文くらいずつ音読してるわ。
そのうち暗唱できるかも。」実咲はこともなげに言う。
「完璧だ。
今の時点で、心理英語をそこまで極めている大学院受験生は、
全国レベルでも10%以内の上位層だろう。」アタシがそう言うと、
「本当なの?
高校1年のとき、あんなにグータラだった子が・・・」
実咲の母は言う。
「身内を過小評価してしまうのは親のサガでしょうけど、
実咲さんはあの頃の実咲さんとは別人です。」
「それで、花嫁修業もさせた方がいいのでしょうか? 」
「無理のない程度に。
この通り、わが家には陽子もシュウも、
そしてメイドたちがそろっています。
不自由はさせません。
ただ、それとは別に、ある程度の『花嫁修業』は必要だと考えます。」
「なんで? 」実咲は伊達巻を食べながら訊いてくる。
「『普通の人たち』の感覚を失ってほしくないからだ。
庶民感覚がない者がカウンセリングを行っても、
クライアントとの関係がうまく築けないだろう。」
「そうね。」実咲は今度は数の子を頬張る。




