負けない男⑦
「変えるつもりはありません。
この服装とメイク、髪型のままです。
妹の冴子とこだわりぬいたものです。
捨て去るつもりはありません。」
即答した。
迷うことはない。
できるところまで貫く。
「よくぞ言った、ならばおのずと答えも出せるというもの。」
太郎吉先生、今日はカフェオレにしたようだ。
「出世はせんでよいのだな。
今の世の中、いくら多様性うんぬんと言っても、
まだまだ男女逆転のルックスは
広く許容されとるとは言い難いからのう。」
「はい。」
「そうしたら、英語と数学、
どちらを趣味にしたいかで
科目がある程度は決まると思うぞ。
趣味だから、
うまくいかなくてもいい。
出世目的なら、ある程度実績を作りたいから、
英語や数学といった教科教育を
仕事として取り組まなくてはならなくなる。
大きな失敗はなるべく避けたい。
趣味だったら、失敗してもまたやり直したらいい。
今、どちらが趣味となっておる? 」
「数学です。」
これも即答だった。
「英語は、今、大学で学んでいるとはいえ、
受験英語だけでなく、日常会話や日常的なライティングまで含めると、
奥が深すぎて、軽い『趣味』として取り組めません。」
「そうだ。英語とか国語は軽いノリではなかなか極められんところがある。
学術的にも日常文化的にも、広い範囲に課題がありすぎる。
ところが、数学は、高校生の大学受験に範囲を限定しやすく、
極端に言えば、黄チャートか青チャートを極めれば、
公立高校の教師としてはやり過ごせるというもの。
ゆったりとした人生を過ごしたければ、
そういう道もいいものじゃよ。
ワシは教科選択で失敗したものじゃな。
若いときに今の勉強法と教材を手にしていたら、
数学教師を目指すのもアリじゃったよ。」




