ショッピングセンターのオープン
イベント当日、商店街は久しぶりに賑わった。莉子ちゃんやコタロー、さらには初めてのお客さんのワンちゃんたちが、色とりどりの布やリボンに囲まれて楽しそうに店内を歩き回った。
彩花は子供たちにデザインのコツを教え、美咲は丁寧に採寸しながら飼い主さんと話をした。
参加者からは「こんな素敵な体験、初めて!」「うちの子にぴったりの服、作ってくれてありがとう!」と感動の声が上がった。
しかし、その翌週、ショッピングセンターがグランドオープンした。派手な音楽とバルーンで飾られた「PetPop」の店舗は、初日から大盛況。若いカップルや家族連れが、トレンド感のあるペット服をカゴに放り込んでいく。価格は「Paw Couture」の3分の1以下。SNSでは「PetPopで買った服、めっちゃ可愛い!」「安いのにクオリティ高い!」と投稿が溢れ、彩花の動画の勢いは一気に影を潜めた。
商店街の客足は目に見えて減った。八百屋のおじさんは「もうダメだ…」と肩を落とし、喫茶店のマスターも「このままじゃ、商店街がゴーストタウンになる」とぼやいた。「Paw Couture」も例外ではなく、常連のコタローさんのおじさんが来店した日も、店内は静かだった。
「美咲、彩花、こんな時こそ踏ん張りどころだぞ。でも、正直、PetPopの安さには敵わねえよ…」おじさんはコタローの新しいマントを手にしながら、ため息をついた。
美咲は唇を噛みながら答えた。「うん、わかってる。でも、うちの服には愛情がある。それを信じたい…。」
だが、内心では不安が渦巻いていた。店の貯金は底をつきつつあり、常連だけで経営を続けるのは限界が見えていた。彩花も焦りを隠せず、「もっとバズる投稿が必要だ!」と夜遅くまで動画編集に没頭したが、反応は以前ほど伸びなかった。