逆転のペットフェス
イベント当日、商店街はまるで昔の賑わいを取り戻したかのように活気づいた。
色とりどりのテントが並び、ワンちゃん連れの家族や若者たちが笑顔で歩き回る。
「Paw Couture」のブースは大盛況で、オーダーメイド体験に参加した子供たちが「次はうちの猫ちゃんの服も!」と目を輝かせた。
子供達は、購入したシンプルな、ワンちゃんやネコちゃんの服に、布地用の糊で、リボンや、レースをつけたり
ワッペンを、親にアイロンでつけてもらっていたりしていた。
手縫いや、ミシンが出来る大人や、学生達は
自分の好きな柄の生地で、服を作っていく。
八百屋のペット用スムージーは完売し、マスターのカフェスペースはワンちゃん連れで満席になった。
彩花の動画も再びバズり
SNSでは「商店街のペットフェス、最高!」「Paw Coutureの服、めっちゃ愛情感じる!」とコメントが溢れた。
地元テレビ局まで取材に訪れ、商店街全体が注目を浴びた。
PetPopの店舗は依然として賑わっていたが、商店街のイベントは「安さ」ではなく「人と人、ワンちゃんと飼い主の絆」を求める人々を引きつけた。
常連のコタローさんのおじさんは、「お前らの情熱、ちゃんと伝わったな!」と笑顔でマント姿のコタローを撫でた。
ペットフェスの成功で、「Paw Couture」は新たな常連客を獲得し、オンラインショップの注文も増えた。
美咲は現実的な視点から、限定の既製品ラインを小規模で導入することを提案。
彩花も「オーダーメイドの魂を損なわないなら」と渋々賛成し、祖母のデザインをベースにしたシンプルな既製品を展開した。これが意外なヒットとなり、店の安定収入につながった。
一方、彩花はSNSでの発信をさらに強化し、ワンちゃんごとの「物語」を紹介する動画シリーズを始めた。莉子ちゃんのドレスやコタローの武将マントが、飼い主さんの愛情とともに全国に広がった。
商店街もペットフェスを定期イベント化し、PetPopとの共存を図りながら独自の魅力を発信し続けた。
美咲と彩花は、祖母のスケッチブックを手に、改めて誓った。
「どんなに大きなチェーン店が来ても、うちの服にはワンちゃんと飼い主さんの笑顔がある。それを守り続けるよ!」
商店街の外れにそびえるショッピングセンターを横目に、「Paw Couture」の小さな看板は、今日も温かな光を放っていた。