嵐の前の静けさ
「Paw Couture」の店内は、彩花のSNS投稿がバズったことで一時的に活気づいていた。
地元だけでなく、遠方からも問い合わせが増え、週末には店頭に新しいお客さんがちらほら訪れるようになった。莉子ちゃんの飼い主である若い女性や、コタローさんのおじさんがSNSで拡散してくれたことも後押しした。
「彩花、すごいよ! この動画、5万ビュー超えてる!」美咲がスマホを手に興奮気味に言った。彩花は得意げに笑いながら、「ほらね! うちの物語、ちゃんと伝われば人は動くんだよ!」と答えた。
しかし、喜びも束の間、ショッピングセンターの建設は着々と進み、「PetPop」のオープン日が刻一刻と近づいていた。商店街の空気は重く、他の店主たちも不安を隠せなかった。八百屋のおじさんは「客が全部あっちに流れたら、うちなんか持たねえよ」と愚痴をこぼし、喫茶店のマスターも「若い子は安いもんに飛びつくからな…」とため息をついた。
美咲は店の帳簿を眺めながら、現実的な数字と向き合っていた。「彩花、確かにSNSの反響はすごいけど、売上はまだ安定しない。このままじゃ、PetPopがオープンしたら一気に客足が遠のくかもしれない…。」
彩花はムッとした表情で答えた。「だからって、値下げしたり、既製品に手を出すなんて、うちの魂を売るようなもんだよ! もっとイベントやって、ワークショップとか開いて、直接お客さんと繋がればいいじゃん!」
二人の意見は依然として平行線だったが、ひとまず「攻める」方向で動くことにした。
彩花の提案で、週末に「Paw Couture」のオーダーメイド体験イベントを開催することにした。
ワンちゃんのサイズを測り、簡単なデザインを一緒に考えるワークショップだ。SNSで告知すると、すぐに予約が埋まり、期待が高まった。