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自称悪者な俺と悪のお助けマンな後輩ちゃん  作者: たかくん
第1章 悪役同盟始動...のはずが?
8/10

◯悪事その② 活動資金通り魔徴収策?中編


第8話



(はぁ...もう疲れちゃったよ...さっきから歩き回ってばかりで何にもしてないし...)


今回、神城先輩が考案した活動資金通り魔徴収策という悪事は実行が思っていたよりも難しかった事を私は今更ながら自覚していた。


肝心のターゲットとなりえる女子も中々見つからないため、成功か失敗かの否か以前に実行自体も危うくなってしまってるし...


「...ねぇ、先輩。もしも、この子もダメだったらこの悪事の続きはまた明日にしませんか?これ以上、何もしないでウロウロしてたら周りの人達からは私達が不審者扱いされかねませんよ?」


「ちっ、悔しいがそうせざるを得ないかもな...」


私は今、尾行している少女に気づかれないように小声で神城先輩に提案すると先輩の方からも渋々といった形で了承を得る事に成功した。神城先輩の方も体力的に限界だったのだろうか?


「.........」


「.........」


そのまま黙って少女の尾行を続けていると、その少女は人気がより少ない裏道へと進んでいったではないか。おまけに立ち止まって携帯電話の操作までしている。


「っ...!神城先輩、これはチャンスかもしれません...」


「そう...かもな...」


物陰に隠れていた私と神城先輩の意見はまたも見事に一致した。


か弱き女子が人気の少ない裏道で立ち止まっている...これを逃せばこんな絶好なタイミングはもう訪れないかもしれない...


「手順通りに...私が気配を消してあの子に近づいて一瞬で気絶させますので!その隙に神城先輩はささっと財布からお金を奪ってきてくださいね?」


「あぁ、任せておけよ...」


この瞬間、遂に今回の悪事のターゲットが決まった。


「...では、いきますね...」


そして、私は気配を消して立ち止まっている少女に一歩、また一歩と近づいていった...それを見守る神城先輩もしっかりと自分の出番のタイミングを窺っているのが分かる。


(よし、あと少しで届く...)


私があと一歩進めば女の子に攻撃を当てる事ができる...というところまで距離を縮めたその時だった。


「あっれ~?お嬢ちゃん、こんなところで何してるのかな~?それと瞳と顔つき的にどこかの国のハーフだったりする~?」


「えぇ、まぁ...」


「えっ!マジかよ!まさか、こんなところでハーフ美女と出会えるなんて俺達とってもついてるぜ!なぁ?お嬢ちゃん、俺達と遊びにいこうぜ!」


女の子の前方にいたらしい如何にも二人のチャラそうな学生が女の子にナンパ目的だろうか?声をかけた。その光景を見た私は咄嗟に物陰に身を隠して様子を窺う事にした。


(良いところだったのにとんだ邪魔が入っちゃった...)


とりあえず、彼らと女の子の会話が終わるのを待ってから仕掛けるつもりだったんだけど...


「あのっ...ごめんなさい!私、そういうのに興味なくて...」


「おいおい!そんな冷たくしなくてもいいじゃねぇか!」


「ほらっ!行こうぜ!」


二人組のナンパに女の子は嫌がっている素振りを見せていた。しかし、二人組はそんなのお構い無しに女の子の手を引いて無理矢理どこかに連れて行こうとしている。


「いやっ!その...離してくださいっ!」


「怖くないから!楽しい事もしてやるって!たっぷりとなぁ...」


聞くに絶えない言葉に私はあの二人組を心底軽蔑した。


(それはそうと...計画の方はどうしようか?とりあえず、神城先輩にLINEで聞いてみよう...)


私はこっそりとLINEで神城先輩からの指示を聞く事にした。


『計画はどうしますか?今日のところは諦めます?』


『ふざけんな!ここまで来て諦められるかよ...あっ、そうだ!喜愛、面倒だからあいつらもまとめて気絶させてしまえばいいんだ!お前ならできるだろ?』


『えっ?』


確かに不意をつけばできなくもない...というか、私は真正面での勝負の場合、相手が男子でも武道経験者でない限りは勝てる自信はあるんだけど...


『年下の後輩に任せて高みの見物なんて恥ずかしくないんですか?』


『お前は俺のお助けマンなんだろ?だったら、ここは従ってくれ!俺もちゃんと自分の役目は果たすつもりなんだからよ!』


ううっ、そう言われてしまうと断りにくいよ...もう腹を括るしかないかな?


『仕方ありませんね...やりますよ!正直、私達の悪事を邪魔したあの二人組に天誅を...という気持ちも少しはありますので。』


『そうだとも!あいつらは俺達の悪事を邪魔したんだからな!』


そうと決まれば私の行動は早かった。


「こらっ!その子は私のっ!横取りすんなぁ!」


「ぐえっ!」


私は物陰から飛び出すと二人組の内の一人の顔面を蹴り上げ、即座に意識を奪った。そして、すぐにもう一人の男に視線を向ける。


「なっ...ひいっ!何だよ!?お前は...」


男の方は私と意識を奪われた相方を見るなり、すっかり怯えてしまっている。


どうやら、こいつは口だけの小者で喧嘩の心得などは全くないみたいだ。これなら年上でも余裕で勝てるだろう。とはいえ、わざわざ無駄な労力を背負いたくはない。


「どうする?あなたもこうなりたい?こうなりたくなかったらそいつを背負ってこの場から消えて?」


「はっ...はいっ!」


私がそう言うと男は気絶した相方を背負って一目散に逃げていった。


(さて、邪魔者は消えた...そろそろ本題に...)


それを見届けた私が残された女の子の意識を奪いにいこうとした時だった。


「あっ...ありがとうございます...あなたのおかげで私...私っ!ううっ!ぐすっ...」


「えっ?ちょっと!もう泣かないで!?」



女の子が私にお礼を言ったかと思うと泣き出してしまった。どうやら、あの二人組の行動がよっぽど怖かったらしいね...













「あのっ...ごめんなさい...私、あの人達が怖くて...」


「気持ちは分かるよ...」


私は女の子を泣き止ませると彼女の話を聞いていた。流石にこの状態の女の子の意識を奪ってお金を取るなんて非情過ぎる行動には出れないもの...


「あっ、自己紹介がまだでしたね...初めまして、中学3年生の宇來(うく)ライナです。」


「私と同い年なんだね!喜愛輝星だよ。ちなみにさっきの二人組が言ってたけど、あなたって日本とどこかの国のハーフだったりするの?」


「はいっ...父親はウクライナ人で母親が日本人です!去年、ウクライナから帰ってきたばかりなんです。」


私が助けた女の子の名前は宇來ライナちゃんというらしい。そして、名前の通りにウクライナと日本のハーフなんだとか。


実際にライナちゃんは瞳が綺麗な美人さんだ。おまけに...


(いいなぁ...私もこういう名前が良かった...)


神城豪牙という名前に似合わず、至って平凡な先輩と喜愛輝星という名前の割に全く輝けない私からすれば名前負けしていない時点で羨ましいものだ。


「あのっ!喜愛輝星さんっ!あなたは私のヒーローです!どうか私とお友達になっていただけませんか?」


「えっ?」



ライナちゃんが放った言葉を理解するのに私はしばらく時間がかかったのだった...




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