●着物姿もまた良し
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第24話
「はぁ...せっかく、年明け直後は家でゆっくりしたいと思ってたのに...」
年が明けた新年の早々...俺のそんな願望は叶わなかった。
(よりにもよって喜愛の家に携帯を忘れていくとはな...俺としたことが完全にやらかしてしまったぜ...)
そう...前回、半ば強引に開催された悪役同盟改めBLACK輝牙の集会の際にうっかり携帯を忘れていくというミスを犯してしまったのだ。
幸いにも何回も喜愛の家にお邪魔しているおかけで家への道順自体は覚えていた。よって、俺はさっきから喜愛の家へと向かっていて今、ようやく玄関の前まで到着したところだった。
「よし、やっと着いたぜ...携帯を返してもらったらさっさと帰るか...」
そんな軽い気持ちで俺は玄関のチャイムを鳴らした。チャイムが鳴ると同時に返事が聞こえる。
そして、玄関の扉が開かれて顔を見せたのは喜愛の母親らしき女性だった。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「あっ、喜愛輝星さんの友人の神城豪牙といいます。輝星さんにちょっと用があって訪ねました。」
「神城...輝星の友人なのですね...」
何か俺の名字を聞いた途端に喜愛の母親の様子がおかしいような...気のせいだろうか?
「あの...何か?」
「いいえ、何でもありません!あの輝星に友人ができた事に動揺してしまいまして...さぁ!あがってください!輝星を呼んできますから!」
「はぁ...」
喜愛の母親は娘を呼びに家の奥へと戻っていった。それから10秒もしない内に俺の来訪を知った喜愛が玄関までやってきた...のだが、
「神城先輩、新年早々に私が恋しくなったのですか?」
「喜愛、お前...」
「えっ?あっ...」
俺の前に現れた喜愛は綺麗な花がたくさん描かれた着物を身に纏い、頭にはちりめんの簪を身に付けていた。
今の喜愛は普段の『変な奴』というイメージからかけ離れており、俺も喜愛の人柄を知らなければ惚れていたかもしれない...それくらいに綺麗な美少女が俺の前にいたのだ。
「すげぇ似合ってるな...」
「なっ!?くっ...口説いているのですか?この私を...」
「あっ...」
心の中で呟いたつもりの言葉が普通に口から出ていたらしく、喜愛が普段の冷静さが嘘のように顔を赤くして動揺している。コイツにも可愛らしい部分はあるんだな...
「いや、そうじゃない。普通にお前の着物姿が綺麗だと思ったから口に出てしまっただけだ。」
「そっ...そうですか...まぁ、目の前に着物姿の女の子がいた時のリアクションとしては合格ですね。」
そりゃ、昔から寘杏や梨華と接してきたからな...デリカシーが全くないわけじゃないんだよ。
「それよりも俺がここに来たのは...」
「大方、携帯の事ですよね?ちゃんと保管してますよ。次に神城先輩と会った時に返すつもりでいました。」
「良かったぜ...それは助かった。すぐに返してくれ。」
これで俺は携帯を返してもらって万事解決...とはいかなかった。
「良いですけど...その代わりに私はこれから隣町の神社でおこなわれる正月祭に行きたいと思っているのであなたも付いてきてください。」
「いや、何で俺が...」
俺が付いていかないといけない理由なんてあるのか?ナンパを防ぐためだったしても喜愛自身が武道も嗜んでいるから問題ないだろ...
「わざわざ私の家に携帯を取りに行ってすぐに帰るというのは何かもったいないと思いませんか?せっかくですので私と一緒に楽しみましょうよ。それともこの後に何か予定でもあったんですか?」
「はぁ、仕方ないな。付き合ってやるよ...」
「ありがとうございます!」
まぁ、俺の忘れていった携帯をちゃんと保管してくれたってのもあるしな。これで貸し借りはなしになるし、何となく正月祭を楽しむのも悪くはないと俺は思いはじめたのだ。
「そんなわけでお母さん!今から神城先輩と正月祭にいってくるから!」
「いってらっしゃい。ちゃんと夜には帰ってくるのよ。神城君でしたっけ?娘をよろしくお願いします。」
「あっ、はい...分かりました。」
それにしても喜愛の母親は娘がよく知らない年上の男と二人で出かけるのは当たり前のように許可したのは何でなんだろうな?
「神城先輩、早くいかないと置いていっちゃいますよ~!」
「おいおい、あんまり走るなって!」
正月祭が開かれる神社に近づくにつれて喜愛はどんどん無邪気になっていく。どうやら、よっぽど正月祭を楽しみにしていたらしい。
「なぁ、ここら辺の道は雨上がりで足場が悪くて滑りやすいぞ...道幅もかなり狭いし、おまけに大きな側溝まである。下手をすれば大変な事になるからゆっくり歩いた方が...」
「大丈夫です!それよりもあともう少しで神社に到着です!神城先輩も忙...きゃっ!」
「あっ、喜愛!」
俺の微かな不安は最悪の形で的中してしまった。
次の瞬間、喜愛が足を滑らせて側溝に転げ落ちてしまったのだ。そして、その側溝には大量の水が流れていたため、せっかくの喜愛の着物はびしょ濡れになってしまった...
「大丈夫か!?ほら、掴むぞ!」
「あっ...ありがとうございます...」
すぐに駆け寄った俺は喜愛の腕を掴んで何とか引き上げる事に成功した...のだが、
「あっ、痛っ...!」
「どうした?」
「その...落ちた時に足を挫いてしまったみたいです...」
「マジかよ...」
やれやれ、新年早々にこんな悪い事が続くとは...これじゃ先が思いやられるぜ...




