●脅迫と取引
間違って消してしまったので一部加筆して再投稿です!
第16話
肌寒くなる12月に突入したこの日、俺はいつも通りに登校して授業を受けたり、友人達と会話したりと何気ない日常を過ごしながら喜愛と出会った時の事を思い出していた。
(悪役同盟なるものを結成して3ヶ月になるのか...はぁ、俺って何やってるんだろうな...)
瑠莉を見返してやりたいという気持ちから悪になると決意した俺だったが自分が納得できる実績は未だに成し遂げられていない。いくつかの悪事の中で確実に成功したと言えるのはラーメン店の食い逃げだけだ。あれだけでは誇れる部分はないだろう。
「ちっ...おい、何だよ?」
「あっ...バレちゃった~?放課後に下らない妄想をしている神城君の情けない顔を拝見させてもらってたよ~!」
全く...お世辞にも良い気分でない時に瑠莉の奴に絡まれたものだ...コイツは自分にフラれた男の末路がそんなにも気になるというのか?
「はぁ...あのさ、今すぐに俺の前から消えてくんない?こっちはお前を見る度に憎みが溢れそうなんだよ...」
「...はいはい~!言われなくても私は今から部活に行きますよ~だ!あんたとは暇潰しに絡んでただけだし...」
そう言い残すと瑠莉は俺の前から立ち去って教室からも出ていった。ちなみに余談だが周囲の話によると瑠莉の所属している演劇部が今月の町内のクリスマス会にて劇をやるらしく、その練習に励んでいるらしい...
(とりあえず、帰るか...これ以上は教室にいても特にする事なんてないからな...)
俺が瑠莉を追うような形で教室から出て帰路に着こうとした時だった。
「あの~、ちょっと待っていただけますか?」
「ん?」
廊下にて俺は女子に声をかけられた。ちなみに実は俺はこの女子の事はそれなりに知っている。
何故なら...
「えっ...俺の事か?」
「はい、もちろんです。あなたは神城豪牙君ですよね?」
「そうだ。まさか、隣のクラスのマドンナの笠武藍夏さんに俺の名前が知られているとは思ってなかったぜ。」
彼女の名前は笠武藍夏。ムードメーカーでぶりっ子っぽいタイプの瑠莉とは対照的に清楚な雰囲気の優しい美人タイプの女の子でおまけに笠武財閥という名家出身のお嬢様でもある。そんな事もあって隣のクラスではマドンナ扱いされて男子からも絶大な人気を誇っているくらいだ。
そんな女の子が今までは何の接点もなかったはずの俺に声をかけてきたのにも驚いたがそれ以上に俺の事を知っていた事にも驚かされた。
「いえいえ、神城君はうちのクラスの子達の何人かとも仲が良いと聞いています。でしたら、必然的にあなたの事は話題に挙がるのですよ?」
「えっ、そうなのか...」
「そうですよ?何せ、神城君は優しい方だと。」
優しい人ねぇ...隣のクラスのマドンナからそういう印象で見られるのも悪い気はしないと思う...まぁ、以・前・の・俺・だ・っ・た・ら・な・?
「その...悪いが俺を優しい人と言わないでくれ。それが俺を苦しめているんだ。」
「神城君...」
いきなりそんな事を言ってびっくりさせてしまったのか?笠武が何やら困ったかの表情を浮かべた。それを見た俺が言葉足らずだったと謝罪しようとした時だった。
「やっぱり、神城君は悪になろうとしているのですね?どうやら、あの時に聞いた言葉は間違いではなかったようです...」
「はっ?」
今、笠武は何と言った?彼女の口ぶりからして俺が悪になろうとしているのを知っている?おまけにあの時に聞いただと?意味が分からない...
「ここでは人目が気になりますよね?続きは屋上で話しましょう。」
「あぁ、そうさせてもらうぜ...」
やれやれ...またしても厄介な展開になりそうだ...
「それで笠武さん...君はいったい、何が言いたいんだ?」
屋上に着くなり、俺は笠武にそう問いかけた。彼女が俺の何を知っているのかが気になって仕方がないのだ。
「では、まずはこれを観ていただけますか?」
笠武はそう言って携帯をとある画面にしてそれを俺に見せた。
そこに映っていたのは...
『さて、一通りの内容は説明し終えたからな。問題はどのタイミングで実行するかなんだよな...』
『タイミングこそが今回の悪事...麺料理捕食魔逃亡劇の肝ですね!』
『実際のところはただの食い逃げなんだがな...それとさっきから声が大きいぞ。少ないとはいえ、このラーメン店には俺達以外にも客がいるって事を忘れないでくれ...おまけに何人かは俺達の近くの席に座っているだろ?』
『あっ、よく考えたらそうでしたね...』
そう...いつかのラーメン店にて急遽おこなわれる事になった悪事について話す俺と喜愛の映像だった。
(嘘だろ!?よりにもよって...)
俺が動揺している間にも映像は続いていく...
『先輩、どうします?あの男の人が退店して1分くらい後のタイミングが好ましいと思いますが...』
『あぁ、俺も同感だ。』
最終的に俺と喜愛がラーメン店から飛び出していったタイミングで映像は終了した。
「本当に驚きましたよ...神城君にこんな一面があったとは...」
「くっ...目的は何なんだよ?」
「大した事ではありませんよ?ちょっとしたお願いがあるだけですから...」
この映像が笠武の手に渡っている時点でまずい状況なのは分かる。だが、ここで取り乱しては相手のペースに飲まれるだけと判断してあえて冷静に振る舞った。
さて、笠武はこの映像をネタに俺に何を要求するのやら...
「私を...悪役同盟のお仲間に加えていただけませんか?」
「はぁ?」
おいおい...コイツはいったい、何を言っているんだ?
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