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自称悪者な俺と悪のお助けマンな後輩ちゃん  作者: たかくん
第2章 仲間を増やして次の悪事へ...
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◯悪事その⑤ 麺料理捕食魔逃亡劇?後編


第11話



まさか、休日にこれまでの悪事についての反省会も兼ねて寄ったラーメン店にて5回目の悪事が始まるとは流石に私も予想できていなかった。


「あの~!神城先輩、実は財布を忘れてしまったというのは真っ赤な嘘で本当は最初から今回の悪事をおこなうつもりだったんじゃないんですか?つまり、さっきのやり取りは完全に演技ですよね?」


「はぁっ!?なっ...ああ!そうだとも!俺がラーメン店に入っておきながら財布を持ってこないなんて間抜けな事をする訳ないだろ~?」


「ですよね...それなら良かったです。」


一瞬だけガチのド忘れかと思ったけど流石にそれはないよね...外食に行きながら財布を持ってきていない人なんて普通に考えればおかしいもの...


「おいおい、俺がそんな奴に見えるのか?」


「いいえ、見えませんね。神城先輩は変態さんではありますがおバカさんではないと思っていますので。」


「いや、ちっとも褒められた気がしないんだが!?」


それにしても神城先輩の他人を騙す能力はお世辞を抜きにしても凄すぎる。この悪事の実行のために昼食の場に客が少ない上に防犯カメラのないラーメン店を選び、財布を忘れたというリアルな情けない演技をする事で敵を騙すには味方からという理論で悪のお助けマンの私すらも欺いて裏がないと見せかける...


そして、私がただ呆れているタイミングで今回の悪事を発案し、私を驚かせるというやり方だ。普段の悪事とは違って今回の悪事の名称を自らつけているという時点で神城先輩の本気が窺える。


(だったら、私も悪のお助けマンとして神城先輩の役に立ってみせる!)


神城先輩の期待に応えるために私も決意を固めた。


「さて、一通りの内容は説明し終えたからな。問題はどのタイミングで実行するかなんだよな...」


「タイミングこそが今回の悪事...麺料理捕食魔逃亡劇の肝ですね!」


「実際のところはただの食い逃げなんだがな...それとさっきから声が大きいぞ。少ないとはいえ、このラーメン店には俺達以外にも客がいるって事を忘れないでくれ...おまけに何人かは俺達の近くの席に座っているだろ?」


「あっ、よく考えたらそうでしたね...」


麺料理捕食魔逃亡劇は私がレジの前にいる女性店員さんの注意を引き付けている間に神城先輩が颯爽と逃亡し、私もそれを追うという至って簡単なもの。


神城先輩の足がよっぽど遅いか、追いかけてくるであろう女性店員さんの足がよっぽど早くない限りは失敗しないはずだ。


(私達の悪事は5回目...今回こそは絶対に成功させないと!)


さて、肝心の問題は悪事を実行するタイミングだ。できればレジ付近の席にいる男の人が退店した後が好ましいかな?無駄に追いかけてくる人を増やしたくはないしね...


「先輩、どうします?あの男の人が退店して1分くらい後のタイミングが好ましいと思いますが...」


「あぁ、俺も同感だ。」


そこからしばらくは私と神城先輩はくだらない雑談をするなりして適当に時間を潰していた。


しばらく時間が経った頃、私達が警戒していた男の人が席を立ってレジへ向かい、財布を取り出すのが見えた。


「喜愛、気づいてるよな?あのおっさんが動き出したぞ...」


「えぇ、もちろんです。準備は万端ですよ。」


それと同時に私達も荷物をまとめ、退店の準備を始める...そして、男の人が店を出てから私達も動き出した。


「...いくぞ。悪のお助けマンとしてしっかり頼むぞ?」


「はい...今度こそは絶対に成功させましょう。」


小声でそう言い合っている内にも私達はレジに着いた。そこからは神城先輩が会計を済ませるためかなあたかも財布を取り出すかのような素振りをしている。その短い間に私は他の客が私達を見ていない事を確認した。


(よし、今だ!)


そして、遂に悪事を実行する。


「てっ...店員さんっ!足元にゴキブリみたいなのが!そこっ!」


「ふえっ!?きゃあっ!」


案の定、私の口からの出任せに店員さんが悲鳴をあげながら動揺している。女性はゴキブリを嫌う人が大多数なので効果は抜群だったようだ。


これにより、店員さんは注意が自らの足元に逸れてしまい、神城先輩から視線を外してしまう。私も神城先輩もこのタイミングを見逃さなかった。


「...今です。」


「よし、いくぜ!」


その瞬間、私と神城先輩は店から飛び出した。


「えっ!?あの!お客さん!?」


突然の事態に困惑する店員さんの叫び声に僅かながらの罪悪感を覚えながら...


そして、私と先輩は共に走りに走り続けてラーメン店からかなり離れた公園に差し掛かったところで追っ手がいないと判断して休息を取る事にした。


「遂に...遂に私達、悪役同盟の悪事が成功しましたよ!これは良い子にはできない事です!」


「そうだな!普通なら良い子は絶対に真似しちゃいけないからな!俺達だからこそ成し遂げたんだ!」


「神城先輩~!次の休日に打ち上げにでも行きませんか?もちろん、先輩の奢りで!」


「何で俺が...と言いたいところだが今は気分が最高だからな!いいぜ、その時は奢ってやらぁ!」


「神城先輩、太っ腹~!」



私と神城先輩は初めての悪事の完全成功による喜びに浸っていた。













...が、しかし...













「嘘でしょ!?あの二人まさか...」


『その...申し訳ありません。さっきの二人ですけど...実は私が奢る約束をしていたんですよ。なので私が代わりにお支払い致しますので領収書を見せていただけませんか?』


「あっ、そうだったんですね...てっきり、食い逃げと勘違いしてました...」


(ふふっ、出費は痛いけど神城くんのとんでもない一面を知っちゃった♪)



予想外のイレギュラーの存在によって知らないところで今回の悪事が失敗に終わっているという事を私達はまだ知らなかった。




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