第一章一節 惨影
ちょっと暗めな始まりかただよ。
4月4日4時にある子供が産まれた。それは人より産まれ、4が3つつく日にのみに産まれる忌み子であった。それは人の形をした人ならざらるでそれを人は、黒い枯れ木のような羽をもって産まれることから「影」と呼ばれた。影は14になると暴走し、周囲に厄災をもたらすとされていた。そんな影が産まれたのだ。この世に生を受けた以上は、生物として然るべき対応を受けるべきであった。それは確かに人ならざるものだ。しかしそれは羽が生えている以上の違いをほとんど持たぬ、生物上人とされる生物である。ならば人と同等の処遇を受けるべきだ。そうあるべきだったのだ。もし生んだものがその事を理解していれば、恐らく厄災は起こりえなかったであろう。だがそうはならなかったのだ。その影は捨てられ、引き取るものも現れず、その影は5歳へとなった。それが幸運であったか不幸であったのかは周囲の忌み子としての態度のとりようを考えれば明らかに不幸であろう。そしてこの不幸を噛みしめてなお生きていこうと思えるほどそれは強くなかった。それゆえに、ある大雨の日、辛うじて残っている力を全て振り絞り、自分を苦しめた元凶とも言えるその羽に飛べるような膜をつけ、高く、高く、上へと飛び、力を全て使いきった影は、落ちた。そしてこれがこの影が初めて笑ったときであった。
影に名前はないです。