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しばらく進んで行って、歪みがあると言う森へと到着した。
ひえ、ガチの森じゃん……。森なんて殆ど行った事ないよ。虫とか大丈夫かな……。いや虫どころの話じゃないんだよな。魔物がいるんだった。よくわからないけれど、得体の知れないモノは怖いし、フレドとレオルカさんが瞬殺したといえどあれは脅威だった。
もしかして、おばあちゃんもああいうのに会っちゃったりしたのかな。
だとしたら、やっぱりおばあちゃんを怖い目に合わせる訳にはいかないよね。同行どころかおばあちゃんにはお留守番してもらいたいな。
いや、それもちょっと嫌だな。うん、同行が一番だ。
「あ、魔物。チフユ止まって」
「ウッス」
制止されて素直に止まる。見ればそれは大きな猪みたいな生物がこちらを殺気むんむんに睨んでいた。こわぁ……。突き出た牙も、ありえないくらい大きくて、基本的に魔物ってサイズがバグっているとしか思えない。
小型サイズはいないんです……?
「群れじゃないしサクッとやりますね」
そんな事を言って、サクッと一太刀で首を落として仕留めるフレドに私はこいつはやはりおかしいと心の底から思うのだった。
「……おかしい」
ぽつりとフレドが呟いたのは、森を小一時間ほど進んだ時だ。
その言葉に、えっ自己申告? 奇遇だね私も君達おかしいと思うよ。と茶々を入れるのを堪えた。というか、あんなに平然とさくさく魔物を始末していたのにいきなり何なの。さっきまで普通だったじゃん! 何でいきなりそんな不穏な感じなの!? どうやら、森の様子がおかしいらしい。
他の人達も、だよなと言わんばかりの顔をしていた。
ちょっとそういうのは早めに言ってほしい。私は普段の森の様子など知らないわけで、この森怖いなとびくびくしながら歩いていたんですよ。普通の女子高生なら「あり得ないんですけど〜。とりま帰って寝るわ。乙」ととっくに踵を返しているところだよ。
「魔物が少なすぎる」
「す、少ないの? もう三体くらいは退治してなかった?」
「大型のヤツしかいなかったろ。小型や中型の魔物が一切出て来てない。……静かすぎるんだよ」
「そ、そっか。確かに、鳥の鳴き声すらないもんね」
「そういうこと」
確かにそうか。
一番最初に、今この世界では魔物が増えて……とか言っていたもんな。す、少ないのかぁ。割ともういっぱいいっぱいなんですけど。グロは苦手なもんでですね。
「多分だけど。やばいのがいるんだろうね。弱い奴は逃げたか隠れたかしたんだろう。危険を察知したわけだ」
「な、なるほど?」
やばいのってどういうこと!? 今までよりやばいのがいるってこと!?
今までもやばいのしかいなかったのに!?
平静を装ってはいるものの、普通に怖いんですが。
「あとは、捕食された可能性もあるかなぁ。ま、どっちみち、心構えはしとこっか」
なんて事ないようにレオルカさんが言うけれどもそんなさっくりとした感じじゃないよね? 緊張してるの私だけなの……?
そう思い、周りを見渡してみたら、レオルカさんとフレド以外は緊張した面持ちで少し安心した。異世界人の私が感覚ずれてるわけじゃないようだ。王子は引き攣りながらも「ふん、面白いじゃないか」とか言っていたけど。




