第11話 告白
その地下施設は壮大な感じがした。
「とりあえずわれらが本拠地へとようこそ。ここで私たちの今までを話そう。全ての真実を」
寿人さんがそう前置きすると、「座れ」とそばのソファーを指さす。俺たちはそこへと座った。
「まず、ここは組織を相手取るために作ったと言ったな。さて、組織の情報はどこまで知っている」
「ほとんど知らないわ」
まず、奈々が言った。
「ほとんど触りだけ」
「やはりそうか。世通党は35年前から存在するという事は知っているか?」
「はい」
1990年からある。つまり、バブル崩壊期からだ。
「そこまでは普通の政党だった。だが、ある時期から変わってしまった。それは、2005年のことだ。私が25になった年だな。その時に、澤雪邑輝という人物が出てき、組織を作りあげたんだ。
邑輝は早速クローンの製造へと力を入れて行ったんだ。春、君の父親だよな」
その言葉に春はただ頷いた。
それは、知っている。
最初は本気で政界へと、取り組んでいた。
だけど、ある日変わってしまった。
それは、最愛の娘が死んだ時だった。
その言葉を聞き、春は唇をかむ。俺は春の方を見る。
今の春は死んだ、その言葉に春は否定しなかった。
「ここから先は自分で言った方がいいか?」
「っはい」
そして春は立ち上がった。
「もう隠し通せなさそうですね」
悲痛そうに言う春。
秘密があるという事なのか?
俺たちには言えなかった秘密が。
「私は。春ではありません。私は春という人間を真似たクローンなんです」
「は?」
俺は驚いた。
春がクローンだって?
つまり目の前にいる春は、テクノロジーの塊という事。
信じられないような出来事だ。
だが、その一方春はおびえている。
「どうしたんだ?」
俺は春にそう問いかけた。
「私は今まで大輝さんたちをだましてたから」
「だましてた、か。だましてないだろ」
「でも、私は本物の春じゃないんです」
「本物偽物関係ないだろ。お前は春なんだ。お前が実はクローンでしたなんて言われても、俺たちには、関係ない。そんなもので、見る目が変わるわけないだろ」
「あ、ありがとうございます」
春は決まりが悪そうにそう言った。
「それで、俺たちはどうしたらいいんだ?」
「様に。組織に対抗するためにこのまま過ごしてほしい」
「何もしなくてもいいのか?」
「ええ。そのまま春ちゃんの面倒を見てもらえれば。だけど、春ちゃんには手伝ってもらいたいことがある。いいか」
「はい」
そう春は頷いた。
そしてここでの生活があh時待った。
今までと比べ、幾分か楽になった。
学校は退学処分になったが、ちゃんと教育はしてもらえるようになっており、この組織も組織で中々すごいものだと思った。
生活はだいぶ楽になった感じがする。
何しろもう、隠さなくてもいいのだ。春の存在を。
春にはつらい思いをさせている。それは俺たちのせいではない。しかし、それでも彼女には笑っていて欲しいのだ。
「大輝さん。今日一緒に寝ていいですか」
そんなある日、春は俺にそう言ってきた。
「大輝さんにはずっと感謝しています。だから言いたいことがあります」
「なんだ?」
「大輝さんは、私がクローンであることを知っても優しくしてくれますよね。でも、私はずっと思ってしまうんです。私がオリジナルなら良かったのに。交通事故で亡くなった、本物の春だったらよかったのにって」
「春、そんなことはない」
「いえ、あるんですよ。私は本物同様に作られた精巧な偽物」
偽物なんて言うなよ。
「でも、本物にはなりえない理由があるんです」
「何だそれは?」
「生殖機能です」
そう悲しげに言った春。
「私には願っても子供を作ることが出来ないんです」
泣きそうな声だ。
「ちょっと落ち着け」
「落ち着けません。私は大輝さんの子どもが生みたいんです」
「は?」
急に言われたその言葉に俺は動揺した。
「私はずっと、大輝さんのことが好きでした。でも、お姉ちゃんと仲良さげに話す大輝さんを見て嫉妬しちゃったんです。この人は私と違って、ちゃんと本物だし、生殖異能もある。それにそもそも私は本物の人間じゃない。私は春という人物になることを強いられ続けてきましたし」
「春、一つ言っておく。俺は春が本物であろうか、偽物であろうが、関係が無い。俺はお前という個しか見てない」
「ありがとうございます」
「それと、好きってどういう事だ?」
そんなこと言ってなかったか?
「私は大輝さんが好きなんてす。だから私の拘束が外れた時には、一緒に暮らしませんか?」
これは春の一世一代の我儘だろう。
俺にはこれに答えるか否かを決める権利がある。だが俺は答えられない。
「ごめん」
俺は一言そう言った。
確かに春は可愛く、健気ないい子だ。だけど俺はその告白には答えられない。
「なんでですか?」
「俺には別に好きな人がいるんだ」
春よりもずっと一緒にいた人が、奈々が。
春はその少女の方を見た。
俺はもう一度言った。「ごめん」と。
「惨めになるだけだからやめてください」と春は言った。




