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拘束された少女が家にやってきた件  作者: 有原優


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第十話 襲撃

「熱いな」


 俺は朝、熱さを感じて目が覚めた。

 見ると燃えている。火が激しく燃えて、マンションの部屋全体を襲っている。


「なんだよこれ」


 マンション一室が燃えているのだ。


「ゴホッゴホッ」


 くそ、煙のせいでしんどい。

 いや、一番心配なのは奈々と、春。特に春だ。

 二人を見ると、まだ寝ているようだ。


「おい、二人とも!!」


 俺は叫んだ。

 まさにこんなところで寝てたら死んでしまう。

 煙は空気より重いから、下にいた方が良いとはよく聞く。

 だが、寝ているままだと煙を際限なく吸ってしまう。それに、一秒でも早く脱出しないと。


「どうしたの?」


 奈々が寝ぼけた様子で言う。


「家が燃えているんだ」


 俺は奈々にそう告げる。それを聞いた奈々は、ゆっくりとあたりを見る。

 そして、状況の理解が追い付いたのか、一気に顔が青くなる。


「でもなん――」

「これは罠です」


 混乱する奈々とは違い、冷静に言う春。


「これは、私達を家から追い出そうとする組織の罠です」


 確かにと、俺は思った。

 今、春の手足は拘束されている。これは、春の行動を阻害するだけではなく、春を春と知らしめる役割も持っている。

 今の春は、どんなに変装しても、春と丸わかりなのだ。

 しかし、この行動。春の命はどうでもいいのか?

 春の確保が最重要課題だと思うのだが。

 俺がそう考えこんでいると、


「私のことは放っておいてください」


 そう、突然、春が言った。


「私を助けたら、きっと、私の関係者としてひどい目に合うでしょう。だから。お願いです。私をおいて言ってください」


 何を馬鹿な事を言っているんだ。


「お姉ちゃん、大輝さん、好きでした。この恩に報いれないのは残念ですけど、それが私の運命です。私の分まで生きてください」


 おいおい、なんだよ。

 俺たちは、まだ中学生の子に、こんな涙を流させるのかよ。

 お別れにはまだ早い。

 春を死なせる訳には行かない、


「奈々、お前は春を置いていきたいか?」

「そんなわけないじゃない」


 やはり奈々もそう言ってくれるか。


「よし、決まったな」


 俺は春を肩に担ぐ。


「なんで?」

「お前は俺の、俺たちの家族だ。そのことを忘れるんじゃない」

「でも、私は。大輝さんたちの足手まといになるのなら死にます」

「いや、今更俺たちが今更お前を置いていくようなやつらだったら、俺はお前を引き取ってねえ。分かったか」


 俺はそう言って窓のほうまで行く。春が何を言っても春を助けてやる。


「ご丁寧に、救出準備が整っているじゃないか」


 下には救出用に、布が広げられている。そしてそのそれぞれの端を救助隊の人たちが持っている。

 本来ならあの人たちは味方だ。だが、あの顔は、春が落ちてきたときに即座に捕えられるように準備しているのだろう。


 今の俺たちは火から逃げ延びたら終わりじゃない。その後、人からも逃げなければならない。

 ああ、なんだよ。なんでこうなったんだよ。

 だけど、春を家に泊めさせることを選んだ時点でこうなることは決まっていた。

 恨むなら過去の俺を恨むしかない。


「悔やむことは無い」


 そう言って俺は春をお姫様抱っこし、下に飛び込む。


 そして、下の布に見事にキャッチされた。

 そして救助隊の一人が、春の足を見る。そこには見事に枷がはめられている。


「こいつだ」


 そう、男の一人が叫んだのを聞くと同時に、俺は奈々の手を掴む。そしてそのまま、俺たちは、逃走した。

 とは言っても高校生の足。

 しかも、春を抱っこしたままだ。スタミナの差がある。

 それに、奈々が段々と俺から後れを取っていく。

 このままだと、まず奈々が捕まってしまう。


「待てー!!」


 その声がどんどんと近くなってくる。

 まずい、非常にまずい。だが、俺にはどうしようもできない。

 だが、そんな時、俺たちの体はさらわれて行った。


 そして気が付けば車に乗っていた。

 素早い、拉致技術だ。


 一体どこの誰が?

 しかし、非常にまずい。

 このままだと、春をかくまった罪で、捕えられてしまう。


 しかし、そんな心配は杞憂だったと、すぐに分かった。


「お父さん!?」


 そう、奈々が言ったのだ。


「間に合ってよかったよ。今はその子の安全の確保が何よりも大事だからね」


 そう、奈々のお父さん、寿人さんが言った。


「それに、奈々、お前もな。さて、これから我々の住む本拠地に向かう」

「それってどういうこと? お父さん」

「奈々の知っての通り、僕は僕なりの方法で世通党と戦っている。政治の場面でな。だが、それだけでは対抗できない。それも物理の世界ではな。だからこそ、我々は、必死に力をつけてきたのだ。奴らに対抗する力を」

「それってまさか」

「そう、そのまさかだ。僕たちは組織に抵抗するための力をつけていたのだ」


 なんて、スケールの高い。俺は少なくとも話についていけてないし、奈々も、恐らくは春も状況の変化に追いつけていないようだ。

 しかしこの車には寿人さん以外にも四人乗っている。それが力なのだろう。


「僕たちはその子が、大輝君の家に住んでいるという事を知ったんだ。大輝君と奈々が、一緒に電話しながら歩いてたからね。だからこそ、その子を保護行こうとしたら、マンションの火が燃えていたという事だ。

 実に危なかったよ。あ、この車は窓がマジックミラーになっている。内側からは外が見えるが、外からは中が見えない。しばらくは大丈夫なはずだ」

「でも、お父さん。警察が」


 周りにはサイレンを鳴らしたパトカーが沢山走っている。


「大丈夫だ」


 寿人さんがそう言うと、即座に車の速度が上がった。一〇〇キロ、一一〇キロ、一二〇キロ、そして最終的に、一七〇キロだ。


「早いけど、大丈夫なの」

「今日は平日。大丈夫だ。だが、これで僕は政治の世界から追放されるだろう」


 そう、悲壮そうな顔で寿人さんが言った。

 そうか、奈々が春の関係者とばれてしまった今、寿人さんにもその疑いの目が言ってもおかしくはない。


「今は武力で対抗できるほど、僕の組織は強くはない。ただ、今その子を取られては、僕たちは巻けてしまう。そのことを君は知っているはずだ」

「う、うん」


 春はおどおどと答えた。春が取られたら負ける。

 つまり、そう言う事なのだろう。

 春は奴らにとっては最重要人物なはずだから。


「君が捕まったら、クローン計画が進行してしまう」

「クローン計画?」


 そのために春が必要なのか?

 俺の膝元に座る春を見ると、汗をたらたらと、垂らしていた。


「クローン計画の事を聞いていないのか?」

「……」


 確か、春は組織の計画のことは何も知らないと言っていた。

 だけど、春がこんな汗を流しているという事は、何か裏があるという事か?


「なあ、は――」

「知らないです!!!」


 春の大声が車内に響いた。


「知らないです知らないです!!」

「おい、春」


 そんなに暴れると!!


 案の定、春は地面に落ちた。

 俺の手で支えていたのが、落ちてしまったのだ。


「やれやれ、シートベルトをつけさせてあげなさい」

「あ、はい」


 俺は春の体にシートベルトを着けた。これで、衝撃には大丈夫になるだろう。


「ごめんなさい、クローン計画については内密にしてもらえませんか? 特に、大輝君には知られたくない」


 悲壮感がある。

 俺は、もしかしたら気づいてはいけないことに気付いてしまったかもしれない。

 春がここまで否定する理由。もしかして、そう言う事じゃないのか?


「春、お前は」

「それは、大貴君に知られたくないです!!」

「ああ、分かった」


 言い切ってほしくないみたいだな。

 別に俺はこれを言っても得をするわけでは無い。

 春のために、


「訊かなかったことにする」


 俺は、この一連の会話をなかったことにしなければ。



 そして三時間くらいたった頃。

 とは言っても、スマホの電源は切らされているので、正確な時間は分からないが、

 寿人さんが、


「もうすぐ着く」


 と言った。



 いつの間にか、警察も巻いたようだ。

 本当に奈々のお父さんはすごいな。

 そして、本拠地に着いた。


「ここだ」


 そこにあったのは、古びた廃校だった。


「この中にあるんだ」


 そして、中の階段を降りると、綺麗な場所があった。


「ここが、本拠地だ」


 そう、寿人さんが手を広げながら言った。

急なシリアス展開です……

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