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小説

爆笑ネタ動画を見ながらティッシュを使わずに年越しそばを完食出来ればレギュラー番組ゲットのクエスト

作者: シサマ


「さあ! 罪深き今年を締めくくる大晦日の贖罪(しょくざい)イベントが始まります! お二人とも、準備はいいですか!?」


 仰々しいBGMと司会者の煽りに晒されている、不倫でやらかした元イケメン俳優とスパチャ詐欺をやらかした元アイドルのVtuber。


(笑える動画を観てそばを完食すりゃいいんだろ? 吹き出したらイメージダウンだが、今更そんな事気にしないぜ!)


(大晦日はいつも、録画したM−1観ながら年越しそば食べてるのよ? 舐めんじゃないわよ!)


 ティッシュを使わず完食すれば、レギュラー番組ゲット。

 ヨゴレでもいい、たくましく育って欲しい。


「それでは完食ファイト、レディーゴー!」


 刺さる人にだけ鬼ブッ刺さる掛け声とともに、再生されるネタ動画。

 

 だが、これは芸人ネタではなかった。

 伝説のバカゲー、『ニンジャコ〇バット』のプレイ動画だったのだ!


「ん〜火炎龍……」ズバズバズバッ!「あ゛あ゛ぁー!」


 必殺技を溜めている間に、秒殺されてしまう主人公。

 

 全年齢ゲームとは思えない、そのソウルフルな断末魔ボイス。

 なまじ芸能人であるふたりは、この声を手に入れるために何年のボイトレが必要なのか分かっていた。


「ぶーっ!」


 早くもダシを吹き出すふたり。

 だが、まだ上着を汚しただけだ。


(……!? このそば、短すぎるぞ! 箸に絡みにくい)


(箸で大量にすくって、一気に吸い込むしかないわ!)


 思わぬ強敵と対峙したふたりは、一気に勝負をかける。

 

 だが次の瞬間、動画はいきなりラスボスとの一騎討ちに突入。

 

 主人公の手裏剣が通用しないラスボス相手には他のキャラクターを選択しなければならず、主人公の技で通じるのは、ジャンプ体当たりだけ。

 ラスボスの隣が崖になっているのにもかかわらず……。


 バキッ!「あ゛あ゛ぁー!」バキッ!「あ゛あ゛ぁー!」


 たった一撃のダメージのためにひとりの命を崖にポイ捨てする現場を見せつけられ、必死に笑いを堪えるふたりの眉間にシワが寄る。

 短いそばが、鼻の穴に溜まってしまったのだ。


(あぁ……今くしゃみをしたら、大量のそばが鼻から飛び出て、あたしの尊厳がかじの2:8比率で終わるわ)


(くっ……そばに加えて熱いダシで焼け付く痛みだ。今くしゃみをしたら、鮮血の混じったダシとそばが鼻腔から……)


「ティッシュティッシュ! ギブアップ!」


 『ニンジャコ〇バット』の前にあえなくギブアップした二人は、その後レギュラー化したこのコーナーでお茶の間の人気者になったそうじゃ……。



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― 新着の感想 ―
[良い点] これは元ネタ知らなくても何となく分かってしまって笑えてしまう描写力しゅごい! [一言] 激しく面白かったです! あとキャラクターや番組の構成など、妙にリアルで素晴らしかったです!
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