自明の理
この学校はおかしな奴らが多い。
ある女は将来美容師になるため床屋で修業をすると言い学校を止めた。
ある男は喫煙をしているのが教師にバレてしまい退学になった。
教室でイチャイチャしていたカップルは子供が出来てしまったため、学校を止めた。
古典の先生は認知症の症状が悪化したため、教師を辞職した。
多種多様な生徒がいる中で特にお気に入りの生徒がいる。
どの運動部員よりも真っ黒な肌といかつい肉体を持った自称漁師。
独創的な画力とユーモアのある絵を描き、人々をドン引きさせる自称アーティスト。
一日の半分をゲームに費やし、たくましく廃人の道へ足を進める自称プロゲーマー。
目を合わせたら最後、恋に落ちてしまう自称アイドル。
センスのあるプレゼン力とマーケティング力を持つ自称英語教師。
夢の溢れる高校生がいるおかげで毎日の学校生活が楽しく送れる。
だが彼等には少し失望してしまうところがある。
「自分の好きな仕事に就きたい」と自称漁師は言った。
「どうしようかまだ考えている」と自称アーティストは言った。
「とりあえず大学は行こうと思っている」と自称プロゲーマは言った。
「お父さんの会社で働く」と自称アイドルが言った。
「何を学ぶかなんだよ」と自称英語教師は言った。
他人の将来を俯瞰したって何の意味もない。
私は他人の人生についてとやかく言う権利はない。
ただ見届けることしかできない。
強く生きろよと言うことしかできない。
私はこれからどんな人生を送るのか、それは誰も予想できない。
階段を駆け上がり目標を目指すのか。
エスカレーターに乗り目標を目指すのか。
どちらを選んでも苦労するだろう。