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少年

右手にランプを下げ、カタっカタっと足音を立てながら暗闇の中を進む。石造りの通路のの隙間からはぽたぽたと水滴がこぼれる。不穏な音とともに扉が開かれる。そこで待っていたのは一人の少年だった。


「奴を、アリスを殺せるか?」


小柄な獣人の少年はこくりと頷き、両手にはめられた手袋を丁寧に取る。


「ベノムさんに貰ったこの力、死の神、さえあれば必ず殺せる。」


新参者である第七席次のグリムは自身の力を疑うことはなかった。一番欲しいていた強大な力、これさえあればもう二度と貧しい思いをしなくても済む。そのために少年は戦うことを決意した。



—これは少年グリムの約1年前の話である―


照りつける太陽の下、ボロボロの麻でできた衣服をまとい街中を歩く少年がいた。少年は今にも倒れそうになりながら町を歩く。道行く人たちはまるでその少年を認識していないかのように変わらない日常を過ごしていた。


「ハアッ、、ア、、、」


力尽き道の真ん中で倒れるが、通行人は見て見ぬふりをする。この町では誰も誰かを助けられるほどの余裕はないのだ。


「おいっ!あいつを捕まえてくれ!」


パンを抱きかかえた男は人込みをかき分け逃げていく。この町での窃盗は日常茶飯事だ。犯罪を犯さなければ生きていけない。少年にはまだその決心ができなかった。


「そこまでだ!」


剣を腰に下げた王国兵士の二人が男性を取り押さえた。近くにいた野次馬からは拍手喝采、被害にあった店の店主は兵士の方に深々と頭を下げた。男性は手錠をかけられ強引に兵士に連れられた。近くで倒れていた獣人の少年は一部始終を見ていたが直後気を失った。


サーっと雨が降っていた。気づくと少年は裏路地の壁に背を持たれていた。目の前には袋に詰められたパンがおいてあった。あたりを見回しだれもいないことを確認するとものすごい勢いでパンを口に放り込んだ。


「ああ、おいしい、、、」


涙を流しながら約一週間ぶりの食事にひどく喜んだ。誰がこのようなことをしてくれたかなど考える余地もなくひたすらにパンをむさぼる。しかし、ものの数分ですべてを食べきってしまった。物足りない少年は立ち上がり歩き出す。雨の中、食べ物はないか必死に走り出す。雨ということもあってほとんどのお店がやっていなかった。やっと見つけた八百屋さんで少年はそっと身を潜め店主に気づかれないようそっと手を伸ばす。周りに人もいないため絶好の機会だ。店主は今日はもう店じまいだと商品を片付け始める。その隙に少年はリンゴへと手を伸ばした。掴んだ瞬間に地を蹴り猛スピードで逃げる。後ろで何か聞こえたようだが雨で声はかき消された。


「や、やったあ」


手にしたリンゴを見つめ少年は喜ぶ。そして妙な高揚感を覚えた。それからというもの少年は小回りの利くからだと、獣人特有のスピードを生かしこの町の有名な泥棒になった。食べ物だけではなく、工芸品や貴重品など金に変わるものは片っ端から盗んでいった。


「ここの雑貨屋はいいものが揃ってるな。」


少年はとある雑貨屋に目を付けた。剣や防具だけではなく魔道具、魔導書など、高級品が取り揃われていた。そのため警備も厳重にされており、王国兵士が運営している警備団もすぐ近くに隣接していた。


「少し警備は硬いけど、襲われないと思っている逆を突いてやろう」


少年はそう呟き、少年は強引に店の扉を破壊し、その店で一番高価そうな紫に光る美しい魔石に手を伸ばした。」


「おい何やってる小僧!」


店主は驚きつつも、慌てて少年の腕を掴もうと試みる。しかし、間一髪で抜け出した少年は街中へ飛び出す。照りつける太陽の下、空腹に死を感じたあの日を思い出しながらも人込みに身をひそめる。店主は少年を追うため外に出て、叫ぶ。


「おいっ、誰かあの泥棒を捕まえてくれ!」


人込みに出れた時点で僕の勝ちだ。この人込みは逃げるために有効活用できる。何度も盗みを続け、自分の身体の使い方を学んだ。どんな人間の動きも止まって見える。この障害物を上手く利用して逃げ切れる。


「捕まってたまるかよ」


これで当分盗みをしなくても生活できる。最高な気分だ。この後、闇ブローカーにこの魔石を換金してもらおう。そしたら、、、


「ここだあああ!」


「は、、、、」


なんだコイツ、僕の右足を掴むだと、、、え、なんで


「コノヤロー、離せって」


「おにいちゃ~ん、た~すけて~」


ほんとになんだこの生き物は、でもここで捕まったら僕の人生が終わってしまう。嫌だ、このまま引きずってでも、、、


「おりゃあ」


後ろからものすごい勢いで走ってきた男に覆いかぶさるように捕まってしまった。少年は何とか逃げようと試みるも少女の信じられないくらいの力で手を取り押さえられた。


「犯人たいほお!えっへん」


「アリスさん、今人質だったよね。どちらかと言えば俺が捕まえてたでしょ」


二人の兄弟に少年は取り押さえられ、町の人々はこの兄弟に拍手を送る。遅れてやってきた王国兵士もこの兄弟にお礼をし、獣人の少年を取り押さえる。少年の抵抗もむなしく彼はライン王国で一番恐れられているライン監獄へと連れていかれることになった。


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