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83. その後

「おはよう」


白い世界を乱すかのような黒いドレスを着た魔女は嬉しそうにこちらを見る


「君はまた、ここにきてしまったね」


黒い椅子に座り、白いコーヒーカップを片手にカフェラテのようなものを飲んでいる


「ああ、そうだな。アルフィア」


この世界にいるということは自身が眠りについているということ。直前の記憶を思い起こそうと思考を巡らす


「俺は何度も死を経験したのか」


さっきまでは死の痛みに耐えきれず精神的におかしくなっていた。だか、今は何事もなかったかのように冷静だ


死んだのに死んでない。その現象が全く理解できなかった。おそらくあのシアという魔人の力だろう


「運命の神、10個の神のスキルのうちの一つ。シアという男のスキルはこの世界で最も強いスキルの一つだよ」


「詳しいんだな」 


何時になくアルフィアは色々と教えてくれそうである


「情報が欲しい。もっと教えてくれないか!」


スグルは前のめりしながらアルフィアに問いかける


「仕方がないなあ。特別だよ」


アルフィアの手元に突然本が現れる。そして、ペラペラとページをめくり話始める


「初代魔王はすべての神のスキルの保有者だった。初代魔王の名はライラ。一人の女性だよ」


話は続く。複数の神からスキルを与えられ多くの期待を背負わされた。人間と魔族、二つの均衡を保つためだ


「しかし彼女の取った行動は人間との友好だった。当時、彼女と互角に戦っていたのは勇者ノア・ミリアル」


戦っていくうちに二人は恋に落ちた。そこから人間と魔族の共存が生まれたのだ


「ああ、その話は以前ナナさんから聞いたかも」


「そうなんだね。じゃあ悪魔災害も?」


「悪魔災害?」


「知らないようだね。悪魔災害はその言葉の通り、悪魔が世界を蹂躙するって話」


まだ、パンドラと呼ばれた少女の存在に気づいていなかった頃。少女の周りでは小規模な悪魔災害が起きた。彼女は冥界と現世をつなぐ鍵みたいな存在だ


「その少女が悪魔を連れてきたってこと?」


「いいや。正確言うなら悪魔が少女を利用して現世に顕現したの」


その少女が住んでいた貧民街はその少女以外全滅した。その後王国に引き取られたが今度は王国中心街で悪魔災害が起こった。次第にその少女が原因なのではと疑う者が増えていった。しかし、少女は悪魔に唆されてしまったのだ


「それで少女はその後どうなったの?」


「初代魔王、ライラ様に引き取られた」


その時偶然、王国を訪れていたライラはその少女を引き取ることに決めたようだ


「それにしても、アルフィアはなんでそんなことまで知ってるの?」


「それは私が初代魔王ライラ様の配下だからだよ」


「え?今さらっととんでもないことを・・・」


目の前にいるこの魔女が初代魔王の配下であると聞いて驚く。しかし、実力から考えるとすぐに納得がいった


「そしてパンドラと呼ばれた少女、サーシャの教育係だよ」


もともと、研究が主な仕事だったアルフィアは突然ライラに命令されサーシャの教育係になった


「サーシャっていうのか。初耳」


「可愛い名前だよね。甘えん坊さんだったなあ」


昔を懐かしむようにアルフィアは話す。サーシャと呼ばれた少女はみんなが恐怖するほどの人物ではなかったように思える


「ふーん。それじゃあサーシャって子は──」


ぐらッと突然めまいが起こり倒れそうになる


「覚醒が近いみたいだね。この話はまた今度ゆっくりと」


「おう、ありがとうアルフィア。早くアルフィアの体を見つけるよ」


別れの挨拶を交わし無色の果てしない世界は終わりを迎える


窓から差し込む光が目を刺激している。もう朝のようだ


「あんまりよく眠れなかったなあ。あれ・・・」


横でアリスが当たり前のように寝てる


「ん?」


目をこすりながら体を起こす。どうやらアリスも目が覚めたらしい


「んあ、お兄ちゃん。元気になった!」


「ちょっ!」


急にアリスに抱き着かれた。少し心配をかけてしまっていたようだ


「うん・・・分かったからそろそろ離れて」


「え~ケチ」


「俺はどのくらい寝てたんだ?」


「丸一日くらいじゃないかな」


「そんなに寝てたのか。心配かけたな」


俺は気絶してから丸一日ほどニーホンの事務所内で寝ていたようだ


「俺は魔人協会のシアとかいうピエロに殺されかけたけど。アリスが助けてくれたのか?」


「そうだよ。って言いたいところだけど。タタラの棲家って冒険者がアリスの来るまでにお兄ちゃんのこと守ってたの」


「リアム達か!今近くにいたりするの?」


「もう冒険に出ちゃったよ。スグルによろしくって」


「マジかあ」


懐かしい名前に嬉しくなりつつも、知らないところで大きな貸しをつくってしまったようだ


「今度あったときに感謝しないとな」


「カミヤに招待状を送っておいたから。向こうで会えると思うよ」


「気が利くな。ありがと」


タタラの棲家のみんなにはいろいろと世話になってしまったから、国を挙げて歓迎したい


「そういえば何か大事なことを忘れているような」


何かが頭に引っかかっていた


「そういえばお兄ちゃん。変な男の人たちがお兄ちゃんに会いたがってるんだけど?一回シめたほうがいい?」


可愛い顔をしながらなかなか暴力的な発言をするアリスに相変わらずだなあと思ってしまう。


「えっと・・・確か・・・あ」


結成日昨日のスグル組のトップなのに部下の存在を忘れていた。誤って殺されていないだろうか


「シめないでください。あいつらのことだろう」


「うん、場所教えるからついてきて」


部屋を出て迎えに行く。決してアリスと競い合いたいわけではないが、俺の初めての部下であり期待は大だ。きっとスグル組に恥じない立ち振る舞いで待っているに違いない


「お~スグちゃん。元気になってよかった」


清掃服姿でレナは施設の掃除をしている最中だ


「ああ、ありがとレナっち。ところでなんで掃除してるの?」


レナは特にここで働いているわけでもない


「いやあ・・・そのお・・・」


「ねえレナ、何度言ったら分かるの。雑巾をしっかり絞らないと床が水浸しになるでしょ」


突然キレ気味のマリがレナの説教に来る。なぜか罰としてここで一週間の掃除を課されているそうだ


「アリス様お疲れ様です。何か御用でしょうか?」


「違うよ。お兄ちゃんを彼らのところにね」


「かしこまりました」


用がないと分かるとマリは容赦なくレナに向かっていく。それも凶悪な虎のように


「スグちゃん助けて~」


マリに首根っこを掴まれレナは連れ去られる。その光景に苦笑いしながら申し訳ない程度に手を振った


「朝から慌ただしいなあ」


「そう?二人はいつもあんな感じだよ」


双子だけど明らかな上下関係が見える。まあ仲がいい事には変わりないのか


「あいつら逃げ出してもよかったのに。わざわざ迎えに来るなんて可愛い奴らだな」


「そうだね」


なぜかアリスは気まずそうに手を後ろに組む


「どうした?」


「いやーそのー」


少しモジモジしている。この先の光景がとても不安だ


「じつはー」


アリスに連れてこられたのは備品置き場だ。入口を指さした後、鍵を渡された


「もしかしてアリスさん?」


「てへへ」


頭を手で押さえながら可愛い顔で誤魔化し切ろうとする。恐る恐る鍵を差し込みドアを引くとそこには縄で縛りつけられた者達で溢れていた


「「「「助けてください!スグル様ああ!」」」」


縄をほどこうと必死になってもがいている


「もしお兄ちゃんのストーカーだったらと思って」


「あーそういうことね」


すぐに状況を理解した。それにしてもこんな簡単に捕縛されてしまう部下達。なぜか妹に負けた気がするのは気のせいだろうか


「ごめんみんな。すぐに解くよ」


急いで部下の開放につとめる


「「「「「スグル様ああ!ありがとうございます」」」」」


「おお、とりあえず落ち着け」


どうしてこんな状況になったか第一補佐のジルに話を聞いた。急いで迎えに行こうとしたが道中で双子の少女にボコボコにされて捕まってしまったそうだ。何度も俺の部下だと話をしても説得できず今に至る


「それは散々だったな」


労いの言葉にスグル組のメンバーは全員片膝をつき敬意を示す。横ではアリスがその光景を面白そうに見ている


「ちなみに組織名はスグル組なんでしょ。ヤクザにでもなりたかったの?」


ククと笑いながら耳打ちしてきた。さすがに恥ずかしい


「スグル様。ちなみにそちらの方は?」


「アリスだ。俺の妹だからよろしく!」


「妹君でしたか。これは失礼いたしました」


続いて向きを直しスグル組のみんなはアリスに敬意を示す


「苦しゅうない。楽にしてよいぞ」


「「「「「ははあああ」」」」」


いや、時代劇かよ。やっぱりアリスには勝てないな。自分の部下であるかののようにみんなを手玉に取ってしまった。他のみんなとも仲良くできそうでホッとした


「ちなみにこの人たちをどうするの?」


「新しくできたカミヤ協魔国の初の移住者になってもらう」


「え!お兄ちゃん天才?意外だね」


物珍しそうな顔で見つめられる


「あれ?いまディスられなかった?」


「気のせいだよお」


二人は笑い出した。その光景に慣れていないスグル組のみんなはどんな顔をしていいか分からずあたふたしている


「じゃあ、そろそろカミヤに戻ろうか」


「そうだな」


ノルン共和国には一週間ほど滞在した。よく考えたら、これがアリスと初めての海外旅行だったかもしれない。いろいろ慌ただしかったけど、楽しい思い出もいっぱいあったから良しとしよう


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