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81. 運命の神

「ベノム聞こえるかい?」


トランシーバーのようなものを片手にシアは連絡を取っている。ラクーンドックを抜け人目の付かない通路を辿ってスグルを担いでいる


「ああ、どうした」


「偶然、九頭大蛇を見つけてね。どうしたらいい?」


どうやらシアはスグルを本部へ持ち帰ろうとしているようだ


「分かった。ミリスをそっちに向かわせる」


「はーい」


さーて、さっきから誰かに見られているな


背後に何者かの気配を感じる


「なんだい?さっきからコソコソしてないで出てきたらどうだ」


背に向けて話しかける


「あーはいはい」


シアの後ろを尾行していた男は手を挙げ降参だとアピールする


「他にもいるんだろう。出てきなさい」


「あちゃー、バレてるか」


男は頭を抱えながら、隠れていた仲間に目で指示を送る


──煙幕──


少女の魔法によって黒い煙がシアの周りを覆う


「やる気なのですか。これもまた運命ですね」


シアはスグルを抱えながらも冷静に状況を把握する


「ソフィア、今よ」


──透過人間──


突然、担ぎ上げられていたスグルはシアの体をすり抜けるかのように下へと落ちていく


「ナイス、後は俺に任せろ」


──高速移動──


リアムは落ちていくスグルの体を上手くキャッチし、シアから距離を取る。タタラの棲家による華麗な救出劇はシアを少し驚かせた


「素晴らしいね、君たち」


何も問題がないのか拍手で賞賛している。その隙にとスグルを抱え逃げようとする


「逃げられるかは別問題だけどね。もう君たちの運命は確定しているよ」


シアは不敵に笑う


「悪い、逃げられない」


リアムは何度も高速移動で逃げようとするが何度も同じ位置に戻されてしまう


「これどういうことなの」


「分からないが、あの気持ち悪いやつのスキルだろ」


リアムは状況を判断し逃げるという選択から抗戦という選択にシフトする


「気持ち悪いとは失礼ですね。私は魔人協会第二次席次のシア・カーンです。以後お見知りおきを」


余裕であることを見せつけるかのようにこちらに向かって礼儀正しく一礼する。


「魔人協会?初めて見たよ。なんでお前らがスグルを誘拐する必要がある?」


「それは内緒です。そもそも今から死ぬ貴方たちが知る必要もないのでは」


シアは魔法詠唱を始める


──神々しく照り天空より出でよ大天使ミカエル──


槍を持ち、大きな鎧をまとった天使が召喚される。召喚とともに大きなエネルギーが周囲の建物を破壊する。そして、あたり一帯が更地になった


「四大天使?噓でしょ・・・」


「さすが魔人協会か、これはまずいな」


ソフィアのスキルで爆発に巻き込まれることはなかったが民間人の多くが悲鳴を上げている


「さあ、標的以外を抹殺しなさい」


シアはミカエルに指示を送った。あまりの惨劇にアリシアは怒りだす


──ライトニング──


アリシアの杖から解き放たれた雷がシアへと向かう。得意の無詠唱魔法でシアの隙を突こうとするが天使によって阻まれた


「くっ」


「アリシア、天使に魔法は効かない。俺とソフィアに強化魔法をかけろ」


アリシアは急いで二人に強化魔法をかける


「ねえ・・・リアム。私に高速移動・・・かけて」


「りょうかい」


リアムはソフィアの背に触れる


「行くぞ」


リアムはソフィアをシアのところまで思いっきり飛ばす。ソフィアは天使をかわしシアへと相対する


「お前の相手は俺だぜ」


主を守ろうとソフィアへ、ヘイトが向く。しかし、そうはさせないとリアムが止めに入る。得意の拳で何度も殴っていく


「やっぱり化け物だな」


敵の攻撃が見えないので守ることを止めひたすら殴る。ソフィアのスキルのおかげで敵の攻撃はすり抜けるのだ。ソフィアは俺たちのフォローをしながら魔人と互角に戦っている


「リアム何やってんのよ。早く倒して」


「分かってる。アリシア、回復魔法をソフィアに集中させろ」


早く倒さないとソフィアの体力が持たない。アリシアは後ろから常に回復魔法で俺たちを援護している。だが持久戦となるとかなり厳しい


「君たちは素晴らしい。スキル持ちの二人と無詠唱魔法の少女。君たちは素晴らしいパーティーだよ。でも私の敵にはなれないよ」


シアはにやりと笑い剣をステッキに戻す。あたかも戦いが終わったかのように


「おい、ソフィア!」


ソフィアは腹から血を出している。体力が切れスキルが発動しなくなったようだ。リアムは急いでソフィアのもとへ急ぐ。しかし、ソフィアのスキルが無いため天使に吹っ飛ばされ、壁に頭を打つ


「最後は君だけだよお嬢ちゃん」


最後まで立っていたのはアリシアのみ。シアは怯えるアリシアに近づいていく。だが、アリシアはスグルの前に立ちふさがるように構える


「よくもみんなを!」


──爆炎──


杖から放たれた炎がシアへと襲い掛かる。だが天使がそれを防ぐ


「ミカエル、あと一人だ」


アリシアの方を指さし殺すように命令する。天使は勢いよく槍で襲い掛かる


──全員止まれ──


倒壊した瓦礫の上に一人の少女が冷たい目で様子を見ている。放たれた言葉を機にその場にいた天使を除く全員が金縛りのように動けなくなる


「大丈夫?お兄ちゃん」


アリスはすぐに駆け寄り状態を確認する。気絶しているだけで命に別条がないことが分かる


「あなたはいったい?」


「お兄ちゃんを守ってくれてありがとう。後は任せて。レナ!」


「はい、かしこまりました」


レナに頼みみんなをその場から避難させる




「ねえ、どういう風に殺してほしい?」


アリスの目は闇に包まれる


「この力、貴方がシャルを殺したのですね」


「あー、そういうことね。なら丁度良かった」


そう言いつつ横から襲い掛かってきた天使の顔を片手で掴み上げる。天使は壊れたロボットのような動きをした後、行動を停止する


「どういうことかな。いったい何をしたのですか?」


天使が急遽に動きを止めたことに驚きを隠せない


「さあ、行きなさい。元の主を殺してきて」


「なっ!」


アリスの命令に従い天使はシアへと襲い掛かる。


「天使よ止まれ!・・・・」


シアの命令は届かない


「召喚主の私の命令を聞かないだと」


シアは天使を操ることを諦めなんとかアリスの拘束を解く


「まあいいです。天使に勝てないこともないので」


「へー頑張れー」


シアは必死に天使の攻撃を受け流した。アリスはただその戦いを面白そうに見守っている


「趣味が悪いですね」


相手は大天使でありかなり強い。天使に勝つことができたが無傷とはいかなかった


「貴方のその余裕は自分の首を絞めますよ」


天使との戦いで満身創痍だ。しかし自身の力を絶対視しているのでまだ諦めていない。わざわざ殺すこと楽しんでいるアリスを見て自分の勝ちを確信したようだ


運命の神 テュケー


「貴方の運命は確定しました。あなたに勝ち目はありません」


「あはははは、それを待ってたよ」


アリスはお腹を抱え笑い出す


「何が面白いか分かりませんが、貴方の勝ち目はなくなりましたよ」


「だってその力ってあれでしょ─────」


アリスはおかしく笑う。まるで悪魔にでも憑りつかれたように


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