80. 第二次席次 シア・カーン
「さあ、早く脱ぎたまえ」
自分は常に優位に立っていると信じて疑わないラコンは状況が変わったことに気づかない
「早くしてくれよ」
その前兆に隣のバスターが無表情で固まっていた。自身の欲望が優先され周りが見えていない
「いいのか。人質を殺しても」
一方のアリス達は少しずつ相手の異変に気付き様子をうかがう。すると突然、トゥルリンっと奇妙な音がアリスのポケットから鳴った
「なんだ今の音は?」
携帯を確認するとアリスは少し驚いた表情を見せつつもクスクス笑い始めた
「死刑宣告だよ」
アリスは目線でマリとレナに合図を送る
「な!俺様に楯突く気だな。バスターやってしまえ・・・おいバスター?」
バスターは全く反応しない
「おい何をしている?おい──」
だがバスターは突然消えてしまう。状況を掴めないラコンはあたふたする。だがアリスは容赦しない
「ちょっと待ってくれ。命だけは・・・」
レナはラコンの後ろに回りナイフを首に突き付ける。ラコンはあまりの恐ろしさに声が出ない
「なぶり殺しにしたいけどマリちゃんの好きにしていいよ」
アリスはラコンの生死をマリの選択に任せる。本当は今すぐにでも殺したいようだが何か考えがあるようだ
「お姉ちゃん、こいつどういたぶる?」
レナはどうしてもラコンの解体ショーが見たいようだ。だがマリは決断する
「殺さねーよ。死ぬまでニーホンのために働いてもらう」
思わぬ答えにレナは少し納得がいかないようだ。しかし、アリスはその答えにマリの成長を感じていた
「なんでよ~ころそ」
「コイツはこの商業都市でいくらか顔が効く。殺すよりも利用することの方がメリットが大きい」
思わぬ形だが自身の命が守られたことにラコンは安堵する。そしてマリはラコンに絶対服従の契約魔法をかける
「死ぬまで働け」
「はい。かしこまりましたああ」
ラコンは汗ダラダラになりながら跪きマリに忠誠を誓う。痛い思いをしなくて済むと分かったラコンは穏やかな表情に戻る
「ねえ、レナちゃんラコンを押さえてて」
「はーい。アリス様!」
事が済んだかのように思えたがアリスの怒りは収まっていなかった
「いやああああ殺さないで」
「殺さないよ」
アリスは抑えてきた怒りを拳に乗せてふくよかなラコンの腹に一発入れる
「お・・おえっ・・・ええ」
床に嘔吐物を巻き散らかした
「ねえ汚いよ」
もう一発、さらにと殺さない程度に腹を殴っていく。悲鳴が建物内に鳴り響く。この魂の叫び声がお兄ちゃんまで届くようにと。気を失ってリアクションがなくなるまで何度も殴り続けた
「「「「「「一生ついていきます」」」」」
スグルの目の前に30人ほどの人間が跪いている。さっきよりも少し冷静になったスグルはこの景色を見て改めて驚いている
「お・・おうっ!この俺、スグルについていけば間違いはないぜ」
ノリで集めてしまった。アリスが部下を作っていたのに対抗したい気持ちも少なからずあったがここまで多いのは想定外だ
「全員の名前は覚えられそうにないから代表者とかいない?」
少しざわざわしていたが一人の男が立ち上がり立候補した
「この組織の№3だったジルです。スグル様。これからもどうぞよろしくお願いいたします。」
おお、なんかそれっぽくなってきた。正直こういう部下みたいなのが欲しかったんだよなあ
「よし、ジルお前を俺の第一補佐に任命する!」
「はい」
うおおおなんか俺かっけー。でもこんなところアリスに見られたらと思うと急に恥ずかしくなってきた
「組織の名前はどうしましょう?」
組織?確かにみんなをまとめるためのチーム的なやつだろう。それにしても名前なんてすぐには思いつかないし・・・
「ジル、早速だけど初の仕事だ。この組織の命名権をお前に与えよう」
今のセリフかっこええ、なんか俺強くなった気がする
「はい。でしたらスグル組はどうでしょうか」
「うん・・・・」
いやそれはヤクザだよ。確かにかっこいいけども
「それにしよう」
名乗るときはスグル組のなになにだと言うことになるのか。それはそれで面白い
「俺がいないときは、第一補佐のジルに指揮権を委ねる。皆、スグル組の名に恥じぬ働きをしてくれ」
「「「「はい!」」」」
全員が片膝をつき敬意を示している。その光景に思わず感動する
「じゃあ早速だけど──」
「なにやら面白いことをしていますね。私も混ぜていただけないでしょうか」
目の前からピエロの化粧をした長身の男が話を遮ってきた。スグル組のみんなはすぐに戦闘態勢に入る。どうやら敵のようだ
「ピエロはお断りだぜ。みんなは下がってくれ。この組織の第一目標は生きて帰ることだ」
部下たちの怯えようからただ者ではないことだけは分かる。すぐに部下を後ろに引かせた
「ジルあの気持ち悪い顔の奴は何者だ?」
どう見てもピエロだ。あんまり好きじゃないから近寄らないでほしい
「魔人協会第二次席次のシア・カーンです」
魔人協会?魔王ロキに言われた俺が一番関わっちゃいけないやつだよ
「あの、どういったご用件で?」
魔神協会だと分かると急に態度を変え、相手の気に障らないよう必死になる
「いやいや、ここは私たち魔人協会の資金源でして重要な場所なんですよ」
ふーん。ってことは・・・俺相当まずいことしたなあ・・・え!待ってどうしよう。絶対怒ってるやつ
「これもまた運命ですね」
ピエロは手に持っていたステッキを剣に変える。戦いは避けられようだ
「剣で俺と勝負か。笑っちゃうぜ」
誘拐された時に愛剣のラッキーセブンソードを奪われていたのでジルに剣を持ってくるように言う
「おお、戻ってきたか俺の剣」
久しぶりの再会になでなでした
「ジル、コイツはやばそうだからみんなを連れて外に出ろ」
「ですが・・・」
「俺は大丈夫だ」
「かしこまりました。ではご武運を」
最悪、俺のスキル九頭大蛇を暴走させる。その時に巻き込んでしまう可能性があるからだ。スグル組のメンバーはラクーンドックを抜け出す
「なんだ、見逃してくれるんだな。てっきりお約束通り俺の部下に攻撃でもしてくるのかと思ったよ」
「いえ、弱い者には興味がありませんので」
「その油断が命取りになるぜ」
そんな忠告を嘲笑うかのように手で顔を押さえる
「運命は確定しました」
ピエロは突然、意味不明なことを言う
「そっちから来ないなら俺から行かせてもらうぜ」
ピエロは剣を構えることもなく。ただこちらを見ている。不気味であるが隙だらけなので距離を急激に詰めて相手の首をはねた
──運命の神──
「運命は確定しました」
ピエロは突然、意味不明なことを言う
「そっちから来ないなら俺から行かせてもらうぜ」
ピエロは剣を構えることもなく。ただこちらを見ている。不気味であるが隙だらけなので距離を急激に詰めて相手の首を──
「なっ」
ピエロは剣を持っている方の手首を捻って攻撃を受けきった。顔を一切動かさず最初からそこに剣が首を切ると分かっていたかのように
「気持ち悪いな」
何度も何度も攻め続けたが攻撃を受けられてしまう。未来予知でもしているのだろうか。いや、それにしてもなんで攻撃してこないのだろう
さっきからピエロは一歩も動かない
「君は素晴らしかったよ。これは幸運だね」
ピエロはこちらに一礼する
「おいピエロ、お前はいったい何がし・・・・あ?あああああああああああああああ」
突然首が切られる。頭をつぶされる。足を切断される。心臓を一突きされる。ありもしない記憶が次々とスグルを襲った
「あ・・あああああ」
あまりの痛みにその場に倒れのたうち回る。尋常じゃないほどの痛みが襲う。常人ではショック死するレベルだ
「これくらいで十分だろう」
ピエロはスグルに近づき様子を見ている。意識を失ったスグルの髪を掴み上げ顔を覗く
「今君が見ているのは真実だよ。でも私の力で死なないだけ」
スグルが気絶していることを確認すると、シアはスグルを背負い連れ去っていく
「九頭大蛇、今度は君を選んだんだね」
ピエロは不気味な表情でラクーンドックを去る




