30. 言霊の神
あーめんどくさい。こんなところまで偵察とか辛すぎ
魔人協会の第五次席 シャル・エルデスは任務のため吸血鬼の城へ向かっていた
「早く、雑用でも雇えばいいのに」
会議に出たことを後悔している。ただ、上の命令には従わなければならない契約がある
「契約がなかったらみんな殺しちゃうけどね」
シャルは不敵な笑みを浮かべる
そこに偶然王国の遠征部隊の一部が遭遇してしまう
「止まれ、そこで何をやっている」
一人の兵士が不気味な男に気づき警戒する
「えー、見て分からないの。散歩だよ、さ、ん、ぽ」
うわー、どっかの国の兵士どもが来てるとか聞いてないよ。邪魔だなあ
シャルは兵士の警告を無視し歩みを止めない
「おい、貴様、早く止まれと言っているのが聞こえないのか」
おいおい、無視してあげようと思ったのに。切りかかってくるのかよ・・
─止まれ─
シャルの口から放たれた言葉は兵士の体を縛った
「か、からだが・・動かない」
良い反応するね
「そりゃあ僕が止まれ、って言ったんだから当然だよね」
十数人ほどしか兵士がいない。おそらく別動隊か・・本体とも接触するのは面倒だな。もう本当に面倒なやつらだな
「貴様はいったい何者なんだ」
「僕は魔人協会の第五席次 シャル・エルデス、『言霊の神』を持つものだよ」
この力は言葉通りのことを実現させる最強の能力。やろうと思えば、いつでも世界を手に入れられる。強すぎるって退屈だなあ
「あっ、もう動けるようになっちゃったか」
シャルの力は一時的なものであるようだ。動き出した兵士は果敢に武器を持ちシャルへと向かう
「もうめんどくさいからさ―」
─死んじゃえ─
バタバタと倒れている光景はなんだか気持ちがいい
「早く終わらせよ」
ヴァンパイア城までまだ遠いなあ・・・
シャルは少しずつ森をかき分けて進む。焼け焦げた木の匂いを感じながら、不自然に生えた雑草に疑問をもつ。しかし、仲間が焼き払った場所に誰かが既にいるなど想定していなかった。
「あ、あのお、すみません」
前から急に声を掛けられる
ん、今度はなんだよー、ってこんな森の中に人間の少女か?
「アリス道に迷っちゃって、お兄さんに道を教えて欲しいの」
あーめんどくさいなあ
「なんでこんな所にいるか知らないけど、僕こう見えても忙しいんだよね」
さすがの僕でも少女に手をかけるほどクズではないが時間の無駄だ
シャルは少女を無視し、任務遂行のため目的地へと向かう
「ねえ、お兄さん」
─止まってよ─
「え」
少女から発せられた言葉によってシャルは動きを止める
か、からだが動かない。なんで僕の力を使えるの・・・
「お前は何者だ」
「さっきの見てたけど、似たようなやりとりでウケるんだけど」
少女はクスクスと笑い始める
なんだこのガキ
─からだ動けえええ─
「おお、自分にも使えるんだあ。すごいすごい」
舐めやがって、ただ残念だったな
─死ね─
・・・
「────は?」
シャルの発した言葉はなぜか実現しない
「なんにも起こらないけど・・お兄さんまじめにやってる?」
どういうことだ・・僕の力が通じてない。いやそんなはずはない
「どうせ偶然だろ」
─潰れろ─
・・・
「はっ」
おい、どういうことだよ。この僕が・・・
「世界に10個しかない神に関する力、お兄さんはどこで手に入れたの」
ヤバい、コイツ化け物だ・・・それも第一席次のレト並みの
「ねえ、聞いてるの」
いやあああああああ
「あ、足があああ」
少女はスパンっとシャルの足を切り落とした
「まだ足が一本あるんだから、ケンケンで歩けるよ」
殺される、やばい、死にたくない
「順番に四肢を切断していくからチャンスはあと三回だね。ちなみに最後は首だよ」
「分かった、分かったから助けてくれ。この力はベノムって男から貰ったんだ」
はやく治療しないと・・
─足治れ─
くそ、殺される。早く逃げないと
「最後にお兄さんの力を貰おうかな」
「お前はおそらくスキル持ちだろ。魔王と勇者以外、複数は持てないぞ」
そんなことも知らないのかと最後の悪あがきに嘲笑ってみせる
「うん。だからこの道具の中に入れるの」
小さい箱?いったいどうやって。まあいい、そんな事よりこのまま本部まで逃げてやる
─瞬間移動─
「ルール違反だね」
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よし、本部まで行けた。これで報告すれば―
「───あっ」
「おいっ、シャル」
どういうことだ・・・四肢と首が切断されてる。あたりは血で染まっていた
「ベノム、これは何事だ」
この大事に、他の幹部も見に集まる
「いや、俺にも分からない。ここに瞬間移動してきたと思ったら殺された」
何者がやったんだ。そもそも、シャルに勝てる奴なんて―
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