犬と猿って本当に仲悪いの?
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!
次回は1月4日に更新します!!
「…という事で私の報告はこれで終わりになります。今回の失格者は私の想定よりも少ない数でしたので悦楽に酔いしれそうです」
胸が掬うような愉快な気持ちを露わに出す彼にミーソスが納得のいかない表情を向けていた。
「…流石…ボルカーンは寛容なお心の持ち主で。私ならばこの様な結果になってしまえば己の愚かさにひどく痛感しこの場にいる事さえ出来ませんよ」
ミーソスはレジーナと違い、自分の与えられた職分を全うするまで突き詰める性格であるが故に、ボルカーンの発言に対して怒りが湧いている。
逆にボルカーンは、ミーソスの生真面目な性格を理解した上で敢えて挑発的な言動で彼をからかおうとしている。
「…お褒めいただき恐縮です。今回の勇者様は皆必死になって王国の為に戦ってくれた豪胆さを兼ね備えた方ばかりだったのでしょう」
ミーソスの皮肉めいた発言を全く気にしていないと言わんばかりの返答にこの場の空気が凍りついた。
「ミーソス…そんな恐い目付きでは嫌われますよ?」
余裕のある笑みを浮かべ、ミーソスを見つめる。
無言の圧力に抑えられ攻めの一手を打つ事が出来ずにいる。
薄暗い中でも綺麗な銀髪が印象的に映るレジーナが痺れを切らして口を開いた。
「…もう!私はお腹が空いたわ!!残りは貴方達5人で進めてちょうだい。私はお先に失礼するわ!」
自由奔放なレジーナは相手に囚われず感情の赴くままに行動する殉情な性格の為。一丸となって物事に取り組む事が少し苦手である。
レジーナは勢いよく席から立ち、椅子が倒れようが気に留める事なく出口に向かおうとしていた。
「ちょ…ちょっと…」
突然の出来事に何と声をかけていいか戸惑っているボルカーンの代わりに彼女が威勢の良い声で話しかけた。
「レジーナ!自分勝手も良いところだわ!どうしてもこのままこの部屋を退室すると言うならば貴方を生涯出禁にするわ」
「「……!?」」
驚きの発言にその場にいる大半が信じる事が出来ずにいた。
この部屋に入る事を禁ずる事それは−彼女の生きる意味を奪う事を表す。今まさに生きるか、死ぬかを分ける生死の天秤に彼女がかけられている。
「……いいわよ!!今すぐ出て−」
「お〜!いい感じに盛り上がってるねぇ〜」
「……はぁ」
突然入り口の扉が開くと、張り詰めた部屋の空気を一気に打ち壊す程のオーラが流れ込んだ。
「「クローネ様!?」」
「「ソフィア様!?」」
フリルやレースが至る所についている可愛い洋服を見事に着こなしている二人の女性が周りを観察する様に見ている。
「クローネ様!こんな場所までお越しいただきありがとうございます!」
今までにない声量で地面に膝をつくミーソスの姿は彼女に対しての忠誠心の表れだった。
レジーナとロマンザも同様に彼女に対して敬意を表している。
「ソフィア様!お手を煩わせてしまい申し訳ありません!!」
ボルカーンも又彼女に対して忠誠心を込めて彼女を見つめている。
「いやいや〜ものすごく楽しそうなんだもん!来ないなんて選択肢はない!ってね……まぁ貴方がいるのは想定外だったけれど?」
「…相変わらずお元気そうでクローネ」
「貴方こそソフィア…」
「「……」」
無言で見つめ合う…いや、睨み合う二人の間には電流が走っていた!!
そう…犬猿の仲の二人は日頃は互いに顔を合わせる事も拒む程関係は終わっていた。しかし、彼女達の不仲さは犬と猿以上な気もするが…。
「…クローネ様。わざわざこんな場所に足を運んでいただき…何か用事でも?」
「あーそうそう!ちょっと気になる勇者がいたからさ〜。気になっちゃって」
「気になる…勇者?ですか」
クローネの言葉にミーソスは疑問を覚えたのか言葉を詰まらせながら話している。
「ハルキって言ったかなー。ほかのニンゲンとは違った特異な能力は見当たらないと思ったけれど、ソフィア直々にタルトレットに送ったもんだから気になっちゃったんだよねぇ〜」
「何と!?本当でございますかソフィア様」
ボルカーンが信じられない様子でソフィアに投げかけている。
「ええ。私は彼−ハルキの生き様にとても興味を持ちました。ただそれだけです」
「そう…ですか」
絞り出す様に声を出す姿は、ソフィアを惚れさせるハルキに対しての嫉妬の様なものを感じさせた。
「創造主様……だったかしら。ふふ…勝手な事を言わないでほしいものね」
嫌みたらしく言うクローネの表情は悪戯心にくすぐられている幼児そのものであった。
「貴方こそ…絶世の美女様だったかしら。随分と自意識が過剰なようで。良ければ私の手鏡をお貸ししましょうか?」
お互い一歩も譲らない言い合いに他の者が入る隙間は無かった。
「…まぁいいわ。それより!早くハルキの現在の状況が知りたくてもういてもたってもいられないわ!」
突然駄々をこねる子供の如く、大きな声で訴えている。彼女−クローネは突然人格が変わったのかと疑いを持つほど気分の上がり下がりが大きい。
ミーソスが急いで部屋にあるモニターを操作し、ハルキの現状らしい映像を映し出した。
「あらまぁ…」
「……!?どうして!?」
落ち着いた声で一言呟くクローネとは対極に冷や汗をかいてしまう程予想だにしていなかった事態が目に映りソフィアは呆然としていた。
続く。
去年はおみくじ大吉だったんですが…今年は小吉でした。
まぁ、大吉なのに良い事が無かったと悔やむぐらいなら小吉だから仕方ないと思う方が良いのかもしれませんが……
この作品は最後まで描き続けたいと思っていますので皆さんのブクマ登録やいいねのほどお願いいたします!