こんな異世界物語は打ち切りにします!
明日の20時ごろに最後の投稿をします!!(する予定です!)
自然豊かで様々な種族が混在し生活を共に送るこの地はタルトレット王国によって長年治められている。
その中心に位置する王都チューブラテストには多くの勇者が存在し、彼ら彼女らは日々己の力を磨き上げ世界の平和を維持するべく敵対するモンスター討伐に勤しんでいた。
しかしここ最近になり王都では突然甚大な力を有した巨大ドラゴンが出現しはじめ安寧秩序が崩壊しようとしていた。
さあ、これから異世界へ旅立つ勇者よ。
王都へのきたる決戦へ向け経験を積み上げ、仲間を作り、この国の危機を救い英雄となるのだ!
−後世にまで語り継がれる英雄譚が今始まる。
「どう?こんな感じの文章で良さそう?」
「…いいですね!ザ冒険ファンタジーの始まりって気がしてテンション上がります!」
ベタ褒めされ頬が緩みきっている。
そんな気の抜けた彼女に一人が物申した。
「それにしても…絵空事ばかり話して後で大変な事になっても知りませんよ?」
「うーん…そうだねぇ。その時は彼女がどうにかしてくれるんじゃない」
「どうにかって…」
不安がる表情を見せる彼に対して緩く微笑んだ表情が一変した。
「不満?」
「…!!いいえ女神様の言う通りでございます。先程のご無礼をお許しください」
彼女は潔く謝罪する彼に対して納得のいかない様子だった。
「違うでしょ…?女神様じゃないでしょ?」
「…絶世の美女様」
納得したのか満面の笑みを浮かべ彼を見ている。
「最近暇潰しにも飽きてきたし、彼女が選んだ勇者さまの実力でも見させてもらおうかしら」
タルトレット王国−辺境地・ダイス
白い光が消え、俺の目に映った景色は感動するほどではなかった。
生い茂った草木に囲まれ、建物どころか人の姿も見えない景色は随分の間取り残されている事を物語っていた。
ここが…異世界??
こんなにも落ち着き払っている自分に驚いている。異世界に来たのだから、これから起こり得る不安や期待に胸弾ませている自分がいると思っていたのだが…。
確かに異世界アニメとかだと最初の転生場所は辺境の奥地で王都に行く途中に笑いあり涙あり恋愛ありの最終的にはハッピーエンド…と言うのが定番な気がするけれど…こうも異世界に来たぞーって言う実感が湧かないと、やる気にもならない…。
あ。そうだ!
ドラゴンがいる異世界なら防具とか武器がある…はず…。
ちょっと待ってくれ…俺が今着ている服って…
「制服!?」
さっきまで俺は普段着だったはずなのに。転送される途中に服装が変わった?いやいや待てよハルキ。あの創造主様がこの服に変えたと言うのならば…何か理由があるはずだ
もしかすると…制服に武器やアイテムがしまえる要素とかが足されてたり!?
身体中を探ってみるが特に変わった所はなく普段通りの制服仕様であった。
ハルキはもしかすると俺はチート級のステータスなんじゃないかとか、この世界にも可愛い彼女ができるんじゃないかとか期待を抱いていたが、風に吹かれる桜の花びらの様に淡い期待は軽く散り去った。
これから…どうしよう。
食糧もない、頼れる人脈もなし、何なら今ここがどこなのかも分からない。
こりゃあ完全に詰んでるな。
いやいや、そんな客観的に見れるほど余裕はない。
最悪真夜中になればここからでも街の光が見えるかもしれない…けれど、どこかのゲームみたいに陽が沈むとモンスターが湧いてでもすれば武器のない俺は即死=ゲームオーバーになってしまう。
取り敢えず今は移動する方が最適か…?
「立地も把握していない中での移動は危険を伴うが…何かアクションを起こさないとなぁ…」
男の勘を信じ俺は僅かに他の草木に比べ背が伸びて生えている木に向かい歩みを始めた。
変わらない景色を突き進んでいると段々と陽が傾きはじめ、夜の訪れを知らせていた。
これは…まずいな。これ以上陽が沈んでしまうと歩く事さえ困難になってしまいそうだ。
どこかで野宿?いやいや、野宿も何も泊まる道具も無いし真夜中に敵が襲っきたらどうしろって言うんだよ!
ガサ…シャシャシャ。ピィキャァーーー!
「…!?え!今の鳴き声何!?」
得体のしらない鳴き声に怯えながら俺は大きな木の下で一睡する事に決めたのだった!
ガルルルルゥゥゥ……ゥゥゥヴヴヴヴ!!!
エエエエエエ…エエエ……エエ…エ…。
ワホーンッ!!ギャァッス!
チャラルルル…チャル!
ピピピピピッ!!
眠れない…あーー!もう!眠れない!!
こんなカオスな状況でスヤスヤと眠れるわけがないだろ!
何だ!異世界って!異世界転送初日に草原の中で野宿!?
そんな異世界物語があってたまるか!
そんな物語が英雄譚の始まり?な訳あるかい。
初日で野宿している勇者が英雄になったとしてもこんな事公の前で言える訳がないだろう!
こんな未来性の感じない異世界物語は早急に打ち切りにするべきだ!
すると直後に雷神の怒りがこもった稲妻が俺のそばに落ちた。瞬く間に唸り声が追い討ちをかける様に轟いた。
「ぎゃー!!」
危うく心臓が止まるかと思った…。
もう嫌だ…こんな辛い人生を歩んでいくぐらいなら異世界なんか来なければよかった…!!
所詮、異世界もののファンタジー物語なんて空想の世界に過ぎない。
実際の異世界なんて夢も希望もない現実世界と何一つ変わらない。色彩のない灰色の世界なんだよ。
このまま……もう寝てしまえば…楽になれるのかな?
………。
……。
…。
「…ぁ…はぁ…はぁ…っ!はぁ……はぁはぁ…」
「ヴァォォォォォンンンッッッ!!!」
「はぁはぁ……誰か……助けてっ………」
続く。