サブタイトルなんてありません。もうどうでもいいです
今日はクリスマス当日ですね!
美味しいご飯でも食べたいのですが…レポート課題に追われまったり過ごせそうにはありません。
では、幸せ者の絶頂から大転落した主人公のたどる道を是非読んでいただけると嬉しいです!
メリー・クリスマス!
「お前さん…見ない顔だな」
ボロボロの服なのに違和感なく着こなしている老人に呼び止められ俺は足を止めた。
「…それに、若い。ここはまだ発展途上のアンタが来ていい場所じゃねえ」
「……」
俺は一体何をしているんだろうか…。
足場の悪い湿った道を足を引き摺りながら歩き、いつのまにか周りには飢えで今にも死にそうな人々がたくさんいた。
せっかく話しかけてくれたにも関わらず、老人の質問に答えたくても…俺にそれほどの余力は残っていなかった。
もう何日も食料を摂っていないせいか、意識が朦朧としている。
「おい…大丈夫か?おい!?しっかりしろ!!!」
ああ…俺の人生はもうじき終わる。
どこの誰かも分からない俺にそこまで心配してくれるなんて…優しい世界だ。
家族や友人の前で命を落とすより、断然死に心地が良さそうだ。
誰も助けのこない状況で俺は静かに幕を閉じる事が出来る。
けれど…こんなはずじゃなかったんだけどな…俺は周りよりも幸せ者で…将来は幸せな家庭を築き………皆んなに囲まれて生涯を終える。
そんな夢物語を見ることもこれで終わりそうだ。
………。
……。
…。
「……」
「こりゃ〜活きのいいニンゲンだね〜」
「どうされますか…X様」
「そうだねぇ〜ステータスは未知数って感じだけど?面白そうだし!!!採用しちゃおう!」
「ハッ!!承知しましたっ!!」
「…さぁ、後はこの私の期待を裏切る真似はしないでくれよ?」
「……」
「…!?こ、ここは!?」
辺りを見渡す。
驚きのあまり開いた口を閉ざせずにいた。
そう。見慣れた俺の部屋に居たのだ。
机上に散らかした教科書や床に脱ぎっぱなしの服。秒針の止まった時計に俺の好きなアニメポスター。何かおかしなところが全くない…完璧に再現されていた。
だがどうしてだ!?俺は確かにあの場で命を絶ったはずだ!!
並大抵じゃ辿り着けない森の奥地の様な場所に救急車でも来たと言うのか!?
もう俺の身に何が起こっているのか理解できなかった。
この身体が自分のモノに感じれないほど不気味さが漂っていた。
ん?
ちょっと待てよ??
俺は反射的に置き時計の曜日を確認した。
「…!!!???」
やっぱり!!そうだ!!
俺は死んだはずだ…にもかかわらず生きている…即ちそれは時間が戻ったという事になる!!
そして…今日の日付は11月23日!!
思い返してみるとこの日が最後だったかもしれない。すみれちゃんと手を繋ぎ下校したのは。
つまり今日の結果次第では!!
1ヶ月後のクリスマスを共に過ごす未来を創り上げる事が出来るかもしれない!!!
…やってやる!!
これは神様から与えられたチャンスなんだ。俺はやっぱり幸せ者だ…そうさ…ああ!!
俺は世界一の幸福者なんだっ!!!
そうとならば早速学校へ行く支度を−
「手を上げろ!!」
「……!」
「聞こえなかったか…手を上げろと言ったんだ」
気付かない間に何十人もの黒服スーツに黒マスクをつけた体格の良い男性が俺の部屋に入っていた。
なんだ…!?強盗!?
いや…強盗ならばこんな大人数では周りに怪しまれやすいだろうし…。
しかも拳銃!?おいおい、日本って市民が拳銃を持っていい国だったか?
ないない。これはレプリカで俺を脅す為の飾りに違いない。
「ああ、この拳銃をレプリカだと思っているかもしれないが残念」
「これは、本物だ」
バンッと銃声音が目の前で鳴り響く。
銃口からは僅かな煙が上り、その先に撃たれた一人の男性が床に倒れている。
「ええ!?ちょ…ちょっと!?」
人が死んでる…人が死んでる…!?
え?今この人は目の前で人を撃ち殺したと言うの!?
「安心してくれ…ほら」
え!?!?
焦る様子を見せる事なく一言ぼやくように言うと、撃たれて倒れていた男性が、何でもないよと言う表情をし立ち上がった。
「さぁ…私達について来てくれるね」
「何言ってんだ!誰なのかも分からないのに…大人しくお前達の言う通りになるとお、思うな!」
恐怖感に押しつぶされそうになりながらも、反抗心剥き出しで対抗した。
「そうか…私達は強制連行するつもりはない…だが、拒否するのであれば」
「お前にはここで死んでもらう」
「死んでもらうだと!?何言ってるんだ…人殺しをすればお前達は捕まるんだぞ!」
「それが…どうした?」
俺は死ぬ訳にはいかない!!せっかく時間が戻り、すみれちゃんとまた会えるだ!!
こんな脅しで!!俺が屈すると思うな!!
「お前は丸腰の俺に対して拳銃を突き刺し恥ずかしくないのか?俺を殺す気があるなら、殺される覚悟もあるって事だよな」
すみれちゃんに会う為だ!!人殺しになろうが君にもう一度会えるだけで…俺は…俺は…
世界一幸せ者になれるんだ!!
「もちろんだ…お前にもこれをやろう」
早撃ち勝負ってのはよく西部劇では見るが…まさか自分がやることになるとは…。
「……」
お互いに拳銃を腰辺りにセットする。
待っててねすみれちゃん!、
今すぐに君に会いに行く!!
破裂音の様な鋭い音が聞こえると、俺の意識は真っ暗になった……。
「……うんうん。君はやっぱ活きがいいね」