3:事件は隣家で起こっている……?・3
「食べ物が落ちて来た……? 何だそれは」
お兄様が首を捻りますが執事もさぁ……と首を傾げてます。
「どんな食べ物なんですか?」
私はちょっとワクワクしながら尋ねました。いやぁ……ミステリーじゃないですか! 事件来ちゃいましたよ! 滾りますよね!
「それが。……肉、だそうです」
「肉」
なんの?
「はい。何の肉なのか、隣家の料理人が確認していますが生肉がボトッと落ちて来て、驚いて悲鳴を上げたそうです」
「それは驚くね」
私の質問に答える執事に私も頷く。あると思ってない所に、しかも上から肉が落ちて来たらそりゃあ驚く。それも生肉だし。血が滴ってたかもしれない。……全身汚れてなければいいね。
「生肉が空から落ちて来る……? しかも何故隣家に?」
お兄様がマジメに考え出しました。いや、気持ちは分かるけど、そんな眉間に皺を寄せて深刻な表情になって考えこまなくても……。と思っていたら、執事も侍女さん達もみんな深刻な表情でした。……えー。深刻じゃない私が悪いみたいなんだけど?
「隣家に落ちたのはグウゼンというやつだと思うよ、お兄様」
私が口を挟めばお兄様が「なぜ?」 と問いかけてくる。
「うーん。だって、空から肉が落ちて来るって、魔法みたいだよね?」
「そうだね。でも魔法を使える人はもう居ないと思うよ。絵本やお伽話では居たと言われているが」
そう、この国には数百年くらい前まで魔法を使える人が居たそうな。あくまでもお話だけど、国民なら誰でも知ってる昔話。子ども騙しだと大人は思っているお伽話。
「うん。そうだったら、鳥さんが落としたんじゃないかな? って思ったの。鳥さんがどこかから生肉を運んでる時に落っことしたっていうか」
「成る程」
私の推理とも言えない当てずっぽうに、お兄様が目を丸くして頷く。そういう考えは無かったようだ。まぁそうだよね。空から生肉が落ちて来た、なんて話は聞かないもの。なんでそうなる? と疑問には思うけど、驚いてそれ以上は考えられなくなるよね。
ちょっとだけドヤった私に執事が、残念ながら……と首を左右に振ってきた。つまり、違う、と?
「お嬢様は七歳ながら着眼点は良いのですが。残念ながら鳥が咥えるには大きな塊でして」
どうやら見て来たらしい執事が手で大きさを表した。確かにカラス辺りが嘴で咥えるにはちょっと大きいな。鷹や鷲なら出来るかもしれないけど、それも足の爪に引っ掛ける感じの大きさだし。という事はそれよりも小さな鳥では有り得ないか。
振り出しに戻った気分でお兄様と顔を見合わせる。
そこへお父様とお母様が急いだのだろう姿で帰宅してきた。話を聞いたのか、ちょっと不思議そうな表情を浮かべている。
「ただいま、二人共」
「「お帰りなさい」」
お父様の挨拶に返したらお母様が「話は聞いたけれど」 と言いながら首を傾げました。
「空から生肉が降って来たそうねぇ。お隣さんも大変ね」
「本当だな。どういうことなのか。ウチにも降って来ないとも限らないし」
「今日は休日だから広場でお祭りもしていて騒がしかったけれど、広場でそんなことが起こったら大変な騒ぎになりそうね」
お母様がのんびりした口調で言えばお父様も我が家に肉が降らないか心配する。続けてお母様が、広場でお祭りがあるけれど、お祭りにそんな事態が起きたら……という予想まで話す。うん、確かに。生肉降って来たら大騒動だよね。
そういえば、お祭りって去年は大声コンテストやってたけど、今年は違う催しをするって言ってたっけ……?
そんなことを考えていたら、お兄様がハッとした顔になった。えっ、なんですか?
お読み頂きまして、ありがとうございました。
次話は解決編。
そんなに不思議な事じゃないので、期待はしないでください。