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3:事件は隣家で起こっている……?・2

 執事は説明しようか迷っているようで少し戸惑ってます。我が家はお貴族様ではないのですが、富裕層という平民でもかなり上のランク。発言力強いし平民としては権力も割と強いので、身分的には執事の方がお貴族様だったから上なんだけど。実は没落した元準男爵位の執事よりお兄様の方が上。お父様にはきちんと仕えているから何の問題もないけれど、お兄様に対してはちょっと下に見る節がある執事にお兄様も私も気付いてました。執事自身が気付いてないようだし、お父様とお母様にはきちんと仕えているからお兄様は放置していたけど。どうやらお兄様は、今がチャンスとばかりに、どちらが上なのか執事に知ってもらおうと思っているようで。


「私は何があったのか尋ねている。私は跡取りだぞ?」


 なんてちょっと強めに執事に問いかけてます。元々はお貴族様だけど身分は一番下だった執事の家柄なので、上下には厳しい。お兄様に強めに言われてハッとしてます。自分がどんな立場なのか分かったのでしょう。

 ……私は、前世の記憶が甦ったからあまり身分がどうのこうの、というのは苦手なので、年長者に強気になるお兄様は見たくないのですが。でもこれも身分制度があるこの国では大事なことなのだろう、と呑み込みます。執事も改めて自分の立場を思い出したようで、やや硬い顔ながらお兄様に「お嬢様には聞かせられませんので、こちらに」 と促しました。


「えっ、ズルイ! 私も聞く!」


 すかさず私は自己主張です。だって隠し事されたらモヤモヤするし、あの悲鳴についてだからさすがに推理小説オタクとしてのオタク心が刺激されてますからね!

 いやだって、何かあった! と思うじゃないですか!

 事件ですか? ってヤツです。


「ユリカ。興味本位でアレコレ聞いて痛い目に遭うと困るから部屋に戻っていなさい」


 お兄様が溜め息をつきますが、嫌です、とお兄様の首に腕を引っ掛けて意地でも離れない、と示します。お兄様も無理やり抱き上げていた私を引き剥がそうとしますが、十二歳の男の子の力で七歳の馬鹿力は意外と引き剥がせなかったようで諦めたように溜め息を吐きました。多分、私が痛くない程度に力を加減してくれていたのもあるのでしょうけどね。


 そんなわけでお兄様に抱っこされながらサロンで執事の話を聞く事にしました。私付きの侍女さん達も一緒です。


「先程の悲鳴は、隣家のご夫人のものでした」


 静かな声で執事が切り出しましたが、隣家ですか。富裕層の平民達が集まる平民街の一画にある我が家。当然隣家も富裕層の方。右隣は富裕層向けのご夫人方対象の前世で言う所の洋服屋さんのオーナーとその夫人。左隣はこれまた前世で言う所の洋書取り扱い書店のオーナーと夫人でした。洋服屋さんのご夫婦にはお兄様より年上の息子さんが二人。書店さんのご夫婦は夫人が初婚でオーナーは再婚。でもオーナーさんに前妻との子は居なくて(結婚一年程で離婚したとかお母様が噂を聞いてきてた)現在の夫人と結婚したのは二年前。生まれて数ヶ月の赤ちゃん(女の子だったような)が居るんだっけ。

 で、どっちのお隣さん?


「どちらの家の?」


「右隣です」


 ということは洋服屋さんの夫人。見た目に気を遣っているから三十代になるかならないかに見えるけど、この国では貴族も平民も十八歳の誕生日を迎えないと結婚出来ない。で、上の息子さんは今年十六歳って聞いたから、夫人が十八歳で結婚して翌年子どもが生まれたとしても、夫人は三十五歳だよね。五歳程若く見えるわけか。まぁ前世、美魔女なる女性も居たからなぁ……。五歳程若くてもおかしくないのか。


「右隣か……。それで何があった?」


 お兄様の口調は、本当に十二歳の男の子のものではないですよねぇ。


「それが。何もない所なのに、食べ物が落ちて来た、と」


「「は?」」


 執事の深刻そうな物言いとは反対に、ファンタジーな話になってきました。……いや、私が転生したのもファンタジーだよね。おまけに、この国の名前って世界史で習った国名には無い所から、所謂異世界転生だと思うし。……充分ファンタジーだったわ。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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