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47話 どうか、頼む……

 エターが作り出した穴のようなところに入る。

 さっきまでいた場所と似たような光景。

 だがそこにはエルナの姿はなく、別の空間にやってきたのはたしかなのだろう。


「……巻き込んでしまってすまないね。あの子も色々と辛いことがあったんだ。どうか許してやってくれ」


 そう言いながら、エターはゆっくりと俺の方へと振り返ってきた。

 状況はまだよく分からないが――彼もエルナと同じく神と呼ばれる存在なのだろう。

 とりあえず、エルナのことをきいてみようか。


「エルナさんは人間だったんですか」

「……知っているのか」

「詳しくは分かりません。ただ、そのような記録を見たので」

「ふむ……そうか。それを読み取れるのはさすがだと言うべきか……」


 そう言いながら、エターはふっと笑みを浮かべる。

 そのまま、どこか遠いところを見るような目つきでゆっくりと言葉を続けてきた。


「君は……『彼』とよく似ている。私の娘を救ってくれた『彼』とね」

「え……俺の他に転生者がいるんですか?」

「いや、アルカターナに転生したものは君だけだ。かつて、私の娘が一人の転生者に世話になったことがあってね。君の魂の器は『彼』とよく似ていた。だから、君の肉体が滅んだ時、私が神界に君の精神を誘ったのだ。勝手な話だが……君ならば、あの子の力になれるのではないかと思ってね」

「その『彼』って、俺と同じ……」

「あぁ。地球という星の日本という地域に住んでいたな」


 ――なるほど。

 それなら、その『彼』と会うことができれば何か良い情報が得られるのではないか。


「……その人に会うことはできますか」

「いや……『彼』の物語は、君とは違う世界のものだ。そして君の物語は『彼』とは違う世界で紡がれる。どこかでそれが交差することもあるかもしれないが……それは遠い未来の話になるだろう」

「そうですか……」


 抽象的な言い方で正直よくわからないが――まぁ、難しいということだろう。


「とにかく、君は幾多の転生者の中でも特に秀でた才能を持っている。私達のマナを受け入れ、その力を昇華させる才能が」

「才能ですか……」


 日本にいたころの俺は、正直有能とは言い難い人物だった。

 そんな自分に才能なんて言葉は似合わないと思っていた。

 異世界で俺が無双していたのも、エルナの加護あってのものだと思っていたのだが――


「転生者は神のマナを身に宿し、世界の希望となる。もっとも、その者の心のありようによっては、絶望ともなるのだが。君の場合はその心配はないだろう」

「はぁ……」


 たしかに、あれだけの力があったら何でもできそうだし、悪いことをしようと思ったらなんでもできるだろう。

 とはいえ、シエルみたいな可愛い女の子とイチャイチャできて、リリィやナギにもほのかに想われているこの状況に不満があるはずもなく――

 いや……冷静に考えると、複数の女の子を侍らせているこの状況って、結構悪いことなのか――?


「おそらく……近いうちに、エルナは神の地位から堕とされるだろう。その時には、どうか彼女に手を差し伸べてやってくれ。彼女のことを受け入れてやってくれ……」

「えっ――」


 と、そんなことを考えていると、エターが割と衝撃的なことを言いだした。

 エルナが神ではなくなる――というのは、どういうことなのだろう。


「あの……具体的にはどういう……?」

「神界から君がとばされた世界――アルカターナに、あの子が突き落とされるだろう。そうなれば、彼女も今の力を維持できない。君の世界には、まだ多くの力ある魔族がいる。あの子の心が絶望に染まる前に、手を差し伸べてやってほしい」

「でも、エルナさんと俺があの世界で会える保証なんて……」


 世界のどこにいるかもわからない一人の女の子をなんの手がかりもなしに探すことなんてできるはずがない。

 それはエターも分かっていたのだろう。彼は苦笑しながら言葉を続ける。


「ふむ……そうだな。それについてはこちらからフォローしよう。目印を用意しておく」

「目印ですか? どんな――うっ――!?」


 ふと、急に眩暈が襲ってきた。

 立つことを維持できず、思わず膝をつく。


「ふむ……そろそろ時間のようだね。君の精神は肉体に引き戻される。アルカターナに朝が訪れたのだろう」


 淡々と答えるエター。

 視界がぐらりと歪んできた。


「そんな……でも、まだ……」


 肝心な情報がききだせていない。

 一体、エルナは何者なのか。

 俺とエルナは、この後どうかかわっていくのか。

 だが、眩暈はどんどん強くなっていく。


「すまないが……どうか、頼む……ユウ君……」


 その言葉に答える前に、俺の意識は闇の中に消えていった。


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