45話 なーんだ。
……色々と突っ込みどころのある後半の情報についてはスルーしておくとして。
リリィの前に展開された光の幕から読み取れる情報には、エターナル・フォースのことが書いてあった。
だが、その内容は、やはり胸がズキリとするようなものだった。
「嘘だろ……」
エターナル・フォースの恩恵で、リリィのレベルは大幅に上がっている。
それに、一部スキルも習得できたようだ。
それはいいのだが――あまりにもデメリットが大きすぎる。
俺がマナの供給を止めるというのはどういうことなのだろうか。
「ユウさん……?」
言葉を詰まらせている俺を見て、リリィが心配そうに声をかけてくる。
――とりあえず、他の二人の情報も見てみるとしよう。
「シエル、見せてくれ」
「あ、はい」
――――――――――――――――――――――――――――――
名前 シエル
性別 女 年齢 16 レベル 165
状態異常 エターナル・フォース
ユウ・アカヤの習得しているスキルのうち、適正のあるスキルを強制習得する。
ユウ・アカヤの能力に応じてステータスに上昇補正。
ユウ・アカヤがマナを供給することを止めると死亡。
ユウ・アカヤが死亡すると死亡。
適性クラス 剣士
適性スキル 剣を武器とするスキル
現在の心理状態 緊張
信頼ランク 親愛。依存の傾向あり
ストレス状況 なし
恋愛経験 ユウ・アカヤに対し強度の恋愛感情。
処女。しかし、ユウ・アカヤとの粘膜接触の経験あり。
性癖 性欲が強い。ユウ・アカヤとの性行為を妄想する傾向あり。
サドの傾向あり。
――――――――――――――――――――――――――――――
「…………」
エターナル・フォースの情報はリリィと全く同じが記載されている。
――他の情報は見ていないことにする。あぁ、これは見てはいけないやつだ。
「ユウ殿、私も頼む」
「あ、あぁ……」
――――――――――――――――――――――――――――――
名前 ナギ・フィーリア
性別 女 年齢 16 レベル 165
状態異常 エターナル・フォース
ユウ・アカヤの習得しているスキルのうち、適正のあるスキルを強制習得する。
ユウ・アカヤの能力に応じてステータスに上昇補正。
ユウ・アカヤがマナを供給することを止めると死亡。
ユウ・アカヤが死亡すると死亡。
適性クラス 剣士
適性スキル 刀を武器とするスキル
現在の心理状態 平穏
信頼ランク 友愛・畏怖
ストレス状況 なし。
恋愛経験 ユウ・アカヤに対する初恋の兆候あり。自覚あり。処女。
性癖 マゾの傾向あり。自覚なしの犯され願望
――――――――――――――――――――――――――――――
「…………」
――なんなんだよ、このアナライズはっ!!
光の幕を見た瞬間、あらゆる情報が頭の中に入ってきてしまう。
それにしても、なぜ性癖関係の情報がアナライズしたら出てくるんだ。18禁ゲームの世界なのかここは。
――いや、興味がないといったらウソになるが……くそっ……
なんともいえないぞわぞわした感覚と罪悪感で頭がおかしくなりそうだ。
「あの……大丈夫ですか? 少し顔色が悪いようですが……」
「大丈夫だよ。ごめんねシエル……」
「いえ……」
とても純粋な目で俺を心配そうに見つめてくるシエル。
こんな愛らしく、清純な表情をする女の子が――
――くそっ、だめだっ! 考えるな……!!
一度、深呼吸をして冷静さを取り戻す。
今、俺が集中しなければならないのはエターナル・フォースの情報だ。
そう……そういえば、エルドラーリアは最期に――
『セージ・ストーンの力を振るいし王は……死の理すら超え、他者に加護を与える……加護を受けし者……命を掌握されること引き換えに……王の力の一端……その写しを得る……』
命の掌握――あれはこういう意味だったのか。
しかし、これでは彼女達の命は俺に依存していることになってしまう。
あのままだと死んでしまっていたであろうナギについては仕方ないにしても、シエルとリリィにはとてつもないリスクを背負わせてしまった。
――こんなの、どうやって伝えればいいんだ……
思わず、頭を抱え込んでしまう。
俺は取り返しのつかないことをしてしまったのではないか――?
「ユウ様……本当に大丈夫なのですか? 一体、何が……」
俺の様子を見て、三人がより心配そうに表情を曇らせた。
――いけない。あまり俺が悩んでいたら、余計に彼女達を不安がらせてしまう。
ともかく、自分が知ったことについては彼女達と共有しないと……
「……大丈夫だ。それより皆に言わないといけないことがある。俺が使ったエターナル・フォースのことなんだけど……」
†
「……えっと、つまり……リリィ達、ユウさんなしでは生きられない体になっちゃってるってことですか……?」
「それは……どうなんだろう……」
どうなんだろう、とは呟いてみたものの、オールアナライズの情報によればそのようなことが書かれていた。
「多分だけど……エターナル・フォースを解除することはできると思う。でも、俺がマナを供給することを止めると死ぬってことの意味がよく分からなくて……もし、解除のことを言っていたのだとしたら……」
「私達は死ぬということですか」
「分からない……ごめん……」
オールアナライズで全ての情報を見ることができても、開示された情報の意味が分からなければ意味がない。
エターナル・フォースを解除することがかえってリスクになるのなら、このままでいた方がいいのかもしれない。
そんなことを考えていると――
「……なーんだ。そんなことだったんですね!」
リリィは、大きくため息をつきながら脱力したような感じで笑ってきた。
その表情の意味が分からずに言葉をつまらせていると、リリィがからかうように微笑んできた。
「ユウさん、凄く重苦しい顔してたから。リリィ緊張しちゃいましたよー!」
「いや、でも……」
「それより、レベル120って本当なのですか? リリィ、立派な騎士になれるのでしょうか!」
「…………」
あまりに明るい表情を見せるリリィを前に言葉が上手く出てこない。
「いや……でも、リリィ……」
「はい?」
「その……リリィは――」
「よくわからないですけど……多分、ユウさんと一緒にいれば全然問題ないってことですよね!」
リリィの言葉に、シエルとナギも笑みを浮かべながら続く。
「エルドラーリアの時もそうだったから物理的な距離はそこまで関係ないとは思うが……ユウ殿が意図的に私達へのマナを断ち切りたいと考えなければ、私達が死ぬことはないと思うぞ」
「それなら、何も心配することはないですね。よかった……」
「よかったって……それで皆はいいのか?」
「え? 何がですか?」
「自分の命を俺に握られているんだぞ? 怖くないのかよ」
「え? だってユウさん、そんなことしないですよね?」
きょとんとした顔を見せるリリィを前に何も言えなくなる。
もちろんそのつもりだが――でも、そこまで真っすぐに信頼の眼差しを向けられるのはくすぐったいというか……
「……私は既に死んでいる。ユウ殿がそうしたいのであれば、そうすればいい」
「私は……ユウ様に命を貰いましたから。もとより、私の命は貴方のものです」
「俺のものって……」
そんなことあるはずないのだが、それを言っても皆はきかないだろう。
――まぁ、皆はそういう人間なのだろう。
出会ってからの期間とか、そういうのも関係なく俺を信頼してくれている。
「まぁまぁ、そんなに重く考えなくても大丈夫ですよ! ユウさん、強いですからっ!」
「あぁ。エルドラーリア相手に、勝負にならないほど圧倒する力があるのだ。そんなユウ殿に命を預かってもらえるなら……かえって安心できる」
俺を気遣っているのかと思いもしたが――それにしてはあまりにも皆の表情が穏やかだ。
それを見ていると、俺の方までリラックスしてくるというか……
「まぁ……いいや。とりあえず今日は休もう。これからのことも考えないといけないしな……」
少し瞼が重くなってきた。
俺の様子を察したのだろうか。
皆は、穏やかな笑顔のまま、優しく頷き返してくれた。




