31話 金の狼っ!?
「分かった。頼りにしてるよ、シエル」
もともと、魔物が現れたときには真っ先に俺達が対応できるように先頭にいるのだ。
異論があるはずもない。
「リリィ、お前は――」
「ダメージディポート」
ふと、レイグがリリィに話しかけようとした瞬間、俺はリリィに向かってスキルを使う。
リリィの体を光が繭のように包み込んでいく。
このスキルは対象となった者が受けたダメージを肩代わりする効力がある。誰から説明されたわけでもないが、俺はスキルの効力をいつのまにか理解していた。
「行こう、リリィ。これでダメージは受けないけど……気を引き締めて戦おうな」
「は……はいっ! リリィ、頑張りますっ!!」
嬉しそうに微笑み返してくるリリィ。
これで準備は整った。
レイグには申し訳ないが、存分にリリィにも戦ってもらうとしよう。
「ではっ――参りますっ!!」
最初に飛び出したのはシエルだった。
それに続いて俺達も道の先へと走る。
カーブを曲がると、登山道は一気に開け広場のような空間に繋がっていた。先には、山小屋のようなものがある。レイグの言っていた拠点のことだろう。
その光景を確認した瞬間、黄金色に染まった数匹の狼がシエルに向かって襲い掛かる。
「グランドディフェンサーッ!」
しかし、それは通用しない。
剣を地面に突き刺して一気に振り上げるシエル。
土埃のような壁が狼の牙を阻み、その体を押し返していく。
「こちら側は私が引き受けますっ! ユウ様、後ろをお願いいたしますっ!」
「あぁ! 任せてくれっ!! リリィ、まずは攻撃してみてっ!」
とりあえず、襲い掛かってきた金の狼をぶん殴る。
それだけで、その狼は遥か彼方の上空へと飛んで行ってしまった。
「うわぁっ――金の狼っ!?」
ふと、リリィが動揺した声をあげる。
俺が一撃で倒せることには変わりないが――やはり、普通の魔物とは違う。
不気味に輝く黄金色と、攻撃的なうなり声。
仲間がやられているにもかかわらず、それに目もくれずに追撃してくる他の狼達。
その獰猛さは、まるで誰かにけしかけられているかのようにも見えるほどだ。
「リリィ、ダメージは受けないから安心して! 反撃だけに集中してっ!」
「は、はいぃいっ!! クラッシュロッド!!」
両手に持った大きな杖を振り上げるリリィ。
その大振りな攻撃の隙をついて、狼がリリィの腕にかみついているが――リリィにダメージはない。
代わりに、俺の腕に何かが触れたような感触が少しはしるだけだ。
「うりゃああああっ!!」
大きく反動をつけたリリィの攻撃が、狼の胴体を撃つ。
リリィのレベルは低いというが――さすがにここまで大振りな攻撃が直撃すれば、それなりのダメージにはなるのだろう。狼は大きく吹き飛び、体勢を大きく崩した。
「いいよっ! その調子っ!!」
リリィに経験をふませるのも大事だが、俺も傭兵としての責務は果たさないといけない。
自分に襲い掛かってくる狼達を遥か彼方へとパンチで吹っ飛ばしていく。
「皆の者! 彼らに続けっ!!」
「おぉおおおおおおおおおおっ!!」
と、後ろにいた騎士団達が一斉に魔物の群れへと突進していった。
しかし――
「ぐっ――だ、だめですっ! 全然ダメージが入りませんっ! うわああっ!?」
どうもリリィの戦いはうまくいっていないらしい。
一度クラッシュロッドを決めた狼が、執拗にリリィの体に牙を突き立てようと襲い掛かっている。
「大丈夫だよ! 俺の近くにいればダメージは受けない。まずは攻撃することだけ考えてみてっ! 攻撃の動作を体にしみこませるんだっ!!」
「は、はいっ――! せーの……ヒートストライクッ!!」
やはり攻撃が大振りだが――まぁ、ちゃんとヒットしているのだから良しとしよう。
今までは下手に防御に意識がむいていたせいで攻撃をヒットさせることすらできていなかったのだから。
「ぐっ――この狼ども……ブラッドウルフかっ? だが、黄金のブラッドウルフなど見たことが――ぐむっ!?」
ふと、レイグのこもった声がきこえてくる。
「レイグさん、大丈夫ですかっ!」
「無論だっ! ソードアサルトッ!!」
さすが騎士団のリーダーというべきか。
レイグが剣を一振りすると、狼が登山道の向こう――崖の先まで吹っ飛ばされていった。
とはいえ、他の騎士団達は楽勝モードとはいえない様子だ。
さすがにシエルは余裕を見せているが、それでも一撃で相手を倒しきれるほど余裕があるわけではなさそうだ。
「む……しかし、この強さ……通常のブラッドウルフではありえぬな……ここにいる者達は、皆レベル50以上の精鋭たちなのだが、もしや、あの竜が……?」
「うああああっ! 助けてくださいっ! ユウさぁあああんっ!!」
――と、後ろの方からリリィの悲鳴が耳を貫いてきた。
狼に押し倒されて首に牙を突き付けられている。
普通だったら致命傷になりかねないのだろうが――ダメージディポートのおかげで、リリィに傷は全くついていない。
「……凄いな、君のスキルの効力は」
「はは……まぁ、とりあえず助けてきます。俺は師匠ですからね」
「すまない。だが……ありがとう」
なんとも言えなさそうな表情を浮かべるレイグ。
――さて……本当にこんな正攻法でリリィのレベルは上がるのだろうか……




